「ベトナムオートエキスポ2025」に行ってみた!注目の展示車両は?ベトナムの自動車事情は?

ベトナムの首都ハノイで、2025年6月12日~14日の期間、モーターショー「ベトナムオートエキスポ2025」が開催された。モータリゼーションの真っ只中にあるアジア諸国の中で、ベトナムの自動車所有率は、2024年の時点で9%と低いものの、新車販売台数は上昇傾向にあり、現地の自動車メーカー「ビンファスト」もある。そこで現地取材予定のジャーナリストにお誘いを受けたこともあり、この機会での取材を決断した。 REPORT&PHOTO:大音安弘(OHTO Yasuhiro)

https://motor-fan.jp/mf/article/344953
「ベトナムオートエキスポ2025」レポートはこちら。

中国の自動車メーカー・GACモーターとは?

首都ハノイで開催された「ベトナムオートエキスポ2025」では、三菱自動車以外の唯一の乗用車メーカーとして、中国のGACモーターが出展していた。GACモーターは、広州汽車集団(GACグループ)が2008年に設立した自動車メーカーであり、EVブランド「AION」も同社が手掛けている。

ベトナムオートエキスポのGACブース。展示されているのは左からGS8、M8、M6プロと並ぶ。

ベトナムには2024年8月より参入を始めたばかりで、最上級ミニバン「M8」と最上位SUV「GS8」を同時に投入。高級車ブランドとして展開しており、走行距離15万キロを上限としながらも、7年間保証、7年間24時間365日の無料ロードアシスタンス、7年間の定期メンテナンスパッケージを付帯することで、手厚いサービスを売りとする。さらに2024年10月には、ミドルサイズミニバン「M6プロ」も追加し、全3車種を展開中だ。

GACモーター「GS8」
GACモーター「M6プロ」

アルファード/ヴェルファイアより大きい高級ミニバン「M8」

ベトナムオートエキスポのブースでは、3車種のフルラインアップを展示した。今回は、そのビジュアルにもインパクトがある高級ミニバン「M8」を紹介しよう。

GACモーターのM8。展示車は最上級グレードの「2.0T GXマスター」だ。

そのエクステリアの押し出し感は、アルファード/フェルファイアやレクサスLMにも負けない勢いを感じさせるギラついた高級感に溢れるもの。

高級車の風格を感じさせる大型のグリル。
LED式ウィンカーも、立体感のある凝ったライティングに。

ボディサイズは日本の高級ミニバンよりひと回り大きいもので、全長5212mm×全幅1940mm×全高1823mm。さらにホイールベースが3070mmもあるのだ。

全長5212mm×全幅1940mm×全高1823mm、ホイールベース3070mmはアルファードの全長4995mm×全幅1850mm×全高1935mm、ホイールベース3000mmよりひと回り大きく、レクサスLMの全長5125mm×全幅1890mm×全高1955mm、ホイールベース3000mmをも上回る。ただし、全高は逆にひと回り低い。
立体的なデザインのテールランプも特徴的。
LEDのテールランプも存在感を強調する。
もちろん、両側電動スライドアを装備。
ドアミラーは、ウィンカーとカメラを内蔵している。

運転席まわりは最新車らしくデジタライズされたもので、14.6インチのインフォテイメントディスプレイを中心に構成される。メーターパネルも12.3インチのカラー液晶パネルがおごられている。

M8のコックピットは豪華な作り。内装の質感も高い。
センタコンソールには、ドライブセレクターと電動パーキングブレーキ等を配置。
12.3インチカラー液晶のメーターパネル。

インテリはゴージャスな寛ぎ空間

内装には肉厚なトリムが使われており、豪華さを感じさせる。センターディスプレイでは、車載機能の様々な設定もできるようで、ビジュアルも綺麗で分かりやすそうだ。
運転席の座り心地も良く、コクピットからの視界も良好だ。

フロントエリアはゆったりとした作りで、センターディスプレイを強調。水平基調のダッシュボードで視界も良好だ。
タッチスクリーンとなる14.6インチのセンターディスプレイ。

シートレイアウトは2+2+3の7人乗りとなっており、2列目には豪華なキャプテンシートを装備する。キャプテンシートはフル電動式となっており、操作パネルには静電式スイッチが並ぶ。

高級感のあるフロントシートの頭上には、ムーンルーフを装備する。
2列目はフル電動式のキャプテンシート。ベンチレーションやマッサージ機能も内蔵している。

シート機能は図で分かるようになっており、シートに着座してフルリクライニングボタンを押してみると、瞬く間に寛ぎモードに。

シート機能の静電タッチ式操作パネル。
前席背面にはテーブルが格納されている。

頭上に広がる大型のムーンルーフには、なんとアンビエントライトによる装飾も施されているなど芸も細かい。2列目シートには、ベンチレーション、ヒーター、マッサージ機能も備わるなど、おもてなし上手だ。
3人乗りとなる3列目だが、シートはしっかりしたものなので、快適な移動が楽しめそうだ。

アンビエントライトが投影できるムーンルーフも、ちょっと贅沢な演出だ。
3列目シート。フロントシート、2列目シートはツートーンだが、3列目のみモノトーン。3列目中央席は折り畳みのアームレストになっている。
ラゲッジルーム。3列目シートの背もたれは6対4分割になっている。

パワートレインはシンプルでオーソドックス

パワートレインは、ガソリンエンジンの前輪駆動車のみ。2.0L直列4気筒直噴ターボエンジンを搭載しており、最高出力248HP、最大トルク400Nmを発揮する。トランスミッションは8速ATで、なんとアイシン製だそう。
先進安全運転支援機能はレベル2相当で、オートパーキングアシスト機能まで備えている。

最高出力248HP、最大トルク400Nmを発揮する2.0L直列4気筒直噴ターボエンジンを横置きに搭載するFF車。エンジンカバーには「MEGA WAVE POWER」の簡体字とブランドロゴが入る。
18インチホイールに225/55R18サイズのタイヤを装着。高級車ではあるが、意外と常識的なサイズに留まる。展示車両はミシュランのプライマシー4を装着していた。

日本円でも1000万円クラスだがベトナムオートエキスポでの注目度は高い

展示車は最上級グレードの「2.0T GXマスター」。注目の価格は、21億9900万ドン。日本円では約1229万円という超高級車。ちなみに装備が少しシンプルになるエントリーグレード「2.0T GLマスター」でも16億9900万ドン(約950万円)という1000万円級の価格設定なのだ。

ベトナムオートエキスポの展示車両はクリスタルホワイト。

ただ、ボディカラーはクリスタルホワイトとエレガントブラックの2色のみ。非常に高価なことから、まずは公用車やビジネスカーなどのニーズを狙っているのかもしれない。

会場の外に用意された試乗車(左)はエレガントブラック。

来場者の少ないベトナムオートエキスポであったが、高級ミニバンの関心度は高いようで、3車種の中で最も人が集まっていたのがM8だった。現在、ベトナム国内には10拠点のディーラーが展開されており、2026年までには30拠点までの拡大を目指しているという。

M8の2列目シートを体験する来場者。装備や機能を試す人も多く、高級ミニバンへの関心の高さをうかがわせた。

まだ少数派であるが、ベトナム市場にも中国車ブランド参入の動きがあるため、同地での中国車の可能性を知る上でも重要なブランドのひとつと言える。ただ参入1年目の新参かつ高級車中心の展開であるため、具体的な成果はあまり見えていないのが現状のようだ。