フィアット500に100の魅力をプラスした600

日本車メーカーによるハイブリッドの多くは、燃費向上が最重要ポイントだ。輸入車ブランドももちろんそうだが、燃費だけでなく走りの楽しさも同じくらい大切、という想いが伝わってくる車種も少なくない。フィアット初のハイブリッドである「600 Hybrid(セイチェント・ハイブリッド)」もそんな1台だ。

フィアットといえば、Aセグメントハッチバックの500(チンクエチェント)を思い浮かべる方もいるだろう。現在は、バッテリーEVの500eにスイッチし、ガソリン車の500は生産を終了し、在庫販売のみにになっている。クラス的には後継モデルではないものの、その役割も担っているのがフィアット600だ。もちろん、500Xの後継的存在でもある。EVの600eから日本に上陸し、2025年5月末に同ブランド初のハイブリッド(48Vマイルドハイブリッド)が追加された。

600は、「500に100の魅力を追加した」というコンセプトを掲げている。BセグメントSUVの中でも広い室内や荷室を備え、大人4人乗車でも十分実用になるパッケージングを実現しているのが美点だ。

WLTC モード23.2km/Lを達成する1.2Lガソリンターボに6速デュアルクラッチトランスミッションを組み合わせる48Vマイルドハイブリッドは、フィアットだけでなく、先般上陸したばかりのアルファロメオ ジュニア、プジョー3008という新型モデルにも搭載。今後のステランティスを支えるパワートレーンだ。

48Vマイルドハイブリッドだが、モーター発進が可能で、バッテリー残量やアクセルの踏み方次第ではあるものの、30km/hまでならモーター走行を維持できる。信号待ちの多い市街地走行では、1時間あたりのうち、約半分はエンジンがかからないという。

アクセルを強めに踏み込むか、速度が高まるとエンジンが始動し、エンジン主体の走りに移行する。エンジンがかかっても静粛性の高さを維持するのも美点だ。アクセルをさらに深く踏み込めば、ターボの過給とモーターアシストもあって軽々と加速していく。システム合計出力は107kW(145PS)で、車両重量は1300〜1330kgとまずまず軽いこともあり、驚くほど速くはないものの、山道でもモアパワーを抱かせることはなかった。

モーターアシストとターボの過給に加えて、ダイレクト感のあるデュアルクラッチトランスミッションの仕事ぶりも加速だけでなく、減速時の好フィーリングに寄与している。日本車メーカーの多くは、ハイブリッドにCVTを組み合わせることが多いが、スムーズさと燃費向上に大きく寄与する一方で、単調な変速フィールになりがちだ。さらに、600eにはないパドルシフトも備わり、純ガソリン車のようにマニュアル感覚のシフト操作も可能。フィアット500に搭載されていたシングルクラッチの「デュアロジック」と比べると、低速域のギクシャク感はほぼ皆無で、シングルクラッチはコツが必要だったが、600ハイブリッドはアクセルワークに気を使うことはほとんどない。

また、軽快感がありながらも安定したフットワークも走りの楽しさに寄与している。ワインディングでのタイトコーナーでは若干ロールは大きめだが、意外と粘りのある足まわりは、フィアットらしい美点。高速道路では安定感もあり、レーンチェンジをしてもふらつきや揺り戻しも少ない。

385Lの荷室容量は、スズキ・フロンクスの290L(ラゲッジボード撤去時)はもちろん、284L(4WD)~371L(2WD)のヤリスクロスを上回り、BセグメントSUVの中でも広め。ホンダWR-Vは、458Lの荷室容量を誇り、CセグメントSUV並だが、フィアット600ハイブリッドよりも全長は125mm、全幅は10mmワイドで全高は55mm高く、サイズの差も大きい。
独身の方やディンクスはもちろん、荷物が多くなりがちな子育て層も含めて、選びやすいサイズとパッケージングを実現しているフィアット600ハイブリッド。なお、上位グレードの「La Prima(ラ・プリマ)」は、600台限定のローンチプライス(キャンペーン)であれば399万円(通常価格は419万円)という価格で購入できる。