連載

今日は何の日?

■片側大開口スライドドアを装備したトールワゴン「ポルテ」

2004(平成16)年7月26日、トヨタはユニークで革新的なパッケージングが特徴のコンパクトなトールワゴン「ポルテ」を発売した。助手席側に大開口電動スライドドアを装備し、フロア地上高を300mmと低くして優れた乗降性を実現するとともに、高い室内高で生まれる広い室内空間が特徴である。

トヨタ「ポルテ」
2004年にデビューした「ポルテ」

ユニークな非対称コンセプトのポンテ

2004年7月のこの日にデビューしたトヨタ「ポルテ」は、革新的なパッケージングが特徴のコンパクトなトールワゴン。初代「ヴィッツ」のプラットフォームをベースに、ホイールベースを2600mm(ヴィッツ比+230mm)に延長し、車高1700mmの5人乗りワゴンである。

トヨタ「ポルテ」
2004年にデビューした「ポルテ」

最大の特徴は、助手席側中央部に設けた大開口(1020mm)電動スライドドアと、地面から300mmと低いフロア高さである。低床と大きいスライドドアによって、乗員の乗降だけでなく、荷物の積み下ろしも容易に行なえ、また高い車高から生み出される広い室内空間も大きな魅力だ。

トヨタ「ポルテ」
「ポルテ」の広い室内スペース

さらに、スライド幅を750mmとした助手席や、前側を引き起こしてフロアスペースを広げる後席のシートクッション、分割可倒式の後席シートバックなどの多彩なシートアレンジにより、マルチな用途に対応できる。

ポルテに搭載された2種エンジン
ポルテに搭載された2種エンジン

パワートレインは、最高出力88ps/最大トルク12.5kgmを発揮する1.3L直4 DOHCおよび110ps/14.6kgmの1.5L直4 DOHCの2機種とスーパーECT(4速AT)の組み合わせ。駆動方式は、当初はFFのみだったが、4WDも追加された。
車両価格は、標準グレードで138.6万円(1.3L)/157.5万円(1.5L)に設定され、その使い勝手の良さから、特に子育て世代のファミリーを中心に広い層からの支持を受けて人気モデルとなった。

ポルテのパッケージング
ポルテのパッケージング
トヨタ「ポルテ」
ポルテのコクピット

他にもある非対称なクルマ

一般的なクルマは、左右対称(シンメトリー)だが、遡ってみると左右非対称のクルマは、それほど珍しくない。古いところでは、助手席側の後席のみドアを装備した三菱の2代目「ミニカトッポ」、日産の初代「セレナ」は助手席側の後席のみ片側スライドドアだった。また、トヨタ「ランクル70」のリアゲートは左右のサイズが異なる観音開きの非対称ゲートだ。

三菱「ミニカトッポ」の非対称ドア
1990年にデビューした三菱「ミニカトッポ」の非対称ドア
2代目「タント」
2007年にデビューした2代目「タント」ピラーレスのスライドドア

最近では、ダイハツ「タント」とホンダ「N-VAN」は外見上は対称だが、助手席側中央のBピラー(支柱)を取り除いたピラーレス構造を採用している。この画期的な構造によって助手席側の開口部を拡大して、乗降性や積載性の大幅な改善を実現したのだ。

非対称なクルマのデメリットは何か

利便性を追求した非対称のクルマだが、車体左右の重量や剛性、強度のアンバランスが悪影響を与えることはないのだろうか。

ポルテのボディ構造
ポルテのボディ構造

例えば、片側スライドドアは、部品が多く構造上重くなるため、左右の重量と剛性のアンバランスが発生する。さらにピラーレスのスライドドアとなると、Bピラーに相当する補強材をドア側に内蔵するため、さらに重量が増大してアンバランスになる。

しかし、そもそもクルマは乗員の数や乗る場所によって重量バランスは崩れ、またエンジンやトランスミッションは左右対称で搭載されていないので、見た目が対称なクルマであっても、厳密に言えば重量バランスは取れていない。実際のクルマでは、そういう点に配慮してアンバランスをドライバーが感じないように、主として足回りのチューニングでロバスト性を高めている。

トヨタ「ポルテ」
2004年にデビューした「ポルテ」

また衝突安全性については、一般にスライドドアは開口部が大きく、そのままでは側突(側面衝突)については不利だが、周辺構造やドアを補強して安全性を確保している。タントやN-VANのようなピラーレスのスライドドアについてもタントを例に上げると、ドアにハイテン材(超高張力鋼板)を使ったピラーを内蔵し、さらにドアロック数を増やすなどして車体剛性と衝突安全性を高めている。

トヨタ「ポルテ」
「ポルテ」のサイドビュー

以上のように、利便性を追求して非対称になっているクルマは、安全性については対策できるが、コストが高くなり、車重が重くなる(走りと燃費が悪化)というデメリットは避けられない。最終的には、利便性を優先するか、コストや走り燃費を優先するかがユーザーの選択の基準となる。

2012年にデビューした2代目「ポルテ」
2012年にデビューした2代目「ポルテ」

・・・・・・・・
ポルテは2012年のモデルチェンジ以降も堅実な人気を獲得していたが、2020年に生産を終えた。当時のトヨタは、販売系列によって車種が分けられており、コンパクトトールワゴンとしてはポルテと「スペイド」、「ラクティス」、そして「シエンタ」、「ルーミー」もデビューした。その後、車種統合と全販売店全車種併売化が進み、ポルテはその役目を終えて、トヨタのコンパクトなトールワゴンは、人気のシエンタとルーミーに集約された。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

連載 今日は何の日?

歴史 2時間前

トヨタ「SAI」はHV専用第2弾! プリウスより約100万円高の338万円~09年誕生【今日は何の日?12月7日】

歴史 2025.12.06

程好い超スポーツ仕様!? スバル「インプレッサWRX NB-R」を245.3万円~2代目に設定【今日は何の日?12月6日】

歴史 2025.12.05

キティちゃんとコラボ♪ ダイハツ「ミラジーノ・ハローキティ」は108.8万円~01年登場【今日は何の日?12月5日】

歴史 2025.12.04

ワゴンRよりちょい背の低いスズキ「MRワゴン」が97.8万円~01年誕生! タウンカー→ママ→若者とターゲットがコロコロ変化【今日は何の日?12月4日】

歴史 2025.12.03

走りもイケるトヨタ商用車「プロボックス/サクシード」にハイブリッド仕様を182万円~18年に追加【今日は何の日?12月3日】

歴史 2025.12.02

バブルの救世主、日産「ラフェスタ」が開放感ある室内をアピール、186万円~04年発売【今日は何の日?12月2日】