『欧州カー・オブ・ザ・イヤー 2022』を征した起亜 EV6。韓国ブランド史上初の受賞だ。

2022年2月28日(現地時間)、スイスのジュネーブ、パレクスポ展示場で恒例の『欧州カー・オブ・ザ・イヤー 2022』のオンライン授賞式が開催され、韓国、起亜(キア)自動車の電気自動車、起亜 EV6が見事に栄冠に輝いた。韓国ブランドが受賞するのは史上初となる。また、BEV(バッテリーEV/純電気自動車)としては、2011年の日産リーフ、2019年のジャガーIペイスに続く3台目の受賞となる(2018年受賞車のボルボXC40もEV仕様が選択可)。

『欧州カー・オブ・ザ・イヤー』は欧州22カ国の自動車ジャーナリスト59名から成る審査委員団の審査と投票によって決定されるが、起亜 EV6は590点満点中の合計279点を獲得して1位となった。

最終選考に残った車両の前に並べられた起亜 EV6。

『欧州カー・オブ・ザ・イヤー』は過去12カ月間に欧州の5カ国以上で発売され、年間5000台以上の販売が見込める自動車が対象で、まず単純投票によりその年次の候補車種のうちから最終候補として7車種を選定する。審査員は最終候補7車種のうち5車種以上に最高10点までを配点し、合計得点が最も多い車種が選ばれるシステムだ。

昨年はトヨタ ヤリスが栄冠に輝いた日本車だが、今回はホンダHR-V、レクサスNX、日産キャシュカイ(日本名:デュアリス)、スバル アウトバック、トヨタ ヤリスクロス、トヨタ ハイランダー(日本名:クルーガー)がリストアップされたものの、残念ながらいずれも最終候補には残れず、最終候補はクプラ ボーン(スペイン。セアトのEVブランド)、フォード マスタング マッハE(アメリカ)、ヒョンデ IONIQ5(韓国)、起亜EV6(韓国)、プジョー308(フランス)、ルノー メガーヌEテック エレクトリック(フランス)、シュコダ エンヤックi Ⅴ(チェコ)の7車種となった。最終候補の7台のうち実に6台がEV。欧州の確実な“EVシフト”が見て取れるようだ。

2位の座に輝いたルノー メガーヌEテック エレクトリック。

まれに見る接戦となったという今回、起亜EV6に続く2位に輝いたのはルノー メガーヌEテック エレクトリックで、合計得点265点を獲得、3位はヒョンデ アイオニック5で合計得点261点を獲得、グループ傘下の起亜と並んでコリアンパワーを存分に見せつける形となった。

3位はヒョンデ アイオニック5。コリアンパワーを存分に見せつけた。日本にも上陸するはずだ。

以下、プジョー308(合計191点)、シュコダ エンヤックi V(合計185点)、フォード マスタング マッハ-E(合計150点)、クプラ ボーン(合計144点)と続いた。

プジョー308の4位は、欧州の急速なEVシフトのなか、善戦健闘の感がある。
5位はシュコダ エンヤックi V。同じVWグループのVW ID.4の兄弟車となる。
「あのマスタングまでがEVに!」と世界中から驚かれたフォード マスタング マッハ-Eが6位。
7位はこれも日本では馴染みの薄いスペインのクプラ ボーン。クプラはセアトのEVブランド。VWグループゆえ、ボーンはVW ID.3の兄弟車。

日本では馴染みが薄いが、起亜 EV6は、同じヒョンデ・グループの共通EV用プラットフォームである『E-GMP(Electric-Global Modular Platform)』を使用して作られた、2021年3月30日に発表された起亜自動車初のEV専用モデルだ。

ヒョンデの『E-GMP』のコンセプト。走行性能に関する部分をすべてパッケージング化した『E-GMP』の上にボディを組み付けるイメージだ。

この『E-GMP』は①シャシー状態で衝突安全性まで考慮、②モーター/インバーター/バッテリー/充電器などの共通化と内装化、③駆動方式は基本的にはRR(電気式AWDもあり)、④V2L(vehicle to Load/外部給電)に対応という特徴を備えており、極端に言えばラダーフレーム・シャシー的な発想のモジュラー・プラットフォームである。走行に関する部分はほぼ完全にモジュール化されているため、この上にグループ各社の個性を反映させた独自のボディ=上屋を載せるという作り方になる。そのためモーター出力の制御などに違いはあるものの、走行に関する部分は各社でほとんど差異はない。現状、ヒョンデ アイオニック5、起亜EV6、ジェネシス(ヒョンデの高級車ブランド)GV60が水平展開された兄弟車となっている。

また、最終候補となったクプラ ボーンは同じフォルクスワーゲン・グループのVW ID.3の、シュコダ エンヤックi Vも同じくVW ID.4の兄弟車だ。パワーユニットまで含めたシャシーの共通化・共用化の進展は、現在はグループ企業内の範囲内にとどまっているものの、将来的には企業グループの垣根を越えての進展が十分に予想される。これは今後の自動車作りにおいて、デザインや使い勝手の工夫などがますます重要になることを意味しているかもしれない。

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