自動運転のメリットとレベル分け

自動運転が実現されると、交通事故の減少や渋滞の解消、運転に対する精神的負荷の解消と時間の有効活用、迷惑運転の減少など多くのメリットが生まれる。さらに、ドライバーの運転技術によらないので高速走行化による時間短縮、ハンドルや変速レバーがなくなることによる広い車室空間の確保、カーシェアリングが普及すれば自車購入の金銭負担の軽減なども考えられる。

そんな自動運転だが、完全自動運転に向けて以下のように段階的に進化している。

・レベル0:自動運転技術を採用せず、すべての操作をドライバーが行う。
・レベル1:運転支援 縦または横に一方向のみの運転支援
「自動ブレーキ」、「自動追従ACC」、「車線維持LKA」など
・レベル2:部分運転自動化 縦・横方向の運転支援(自動追従+車線維持など)
「日産自動車“プロパイロット”」、「トヨタ“アドバンスドドライブ”」、「スバル“アイサイトX“」など
・レベル3:条件付運転自動化(限定領域) 特定条件下での自動運転、条件外ではドライバーが安全確保
「ホンダ“ホンダセンシングエリート”」、「メルセデス・ベンツ“DRIVE PILOT”」、「BMW“Personal Pilot L3”」
・レベル4:高度運転自動化(限定領域) 特定条件下での自動運転
・レベル5:完全自動運転 特定条件による限定なし、いかなる状況でもシステムが操作
ここ10年の自動運転の進化と法改正

自動運転を進展させたトピックスとしてまずあげられるのは、2016年の日産自動車5代目「セレナ」に搭載された自動運転レベル2の“プロパイロット”だ。これは、条件を満たせばアクセルとブレーキ、ステアリングを自動制御(ステアリングに軽く触れていることが前提)してくれる。この場合、当初は5秒程度ステリングから手を離すと警告が鳴り、10秒後には自動運転が解除される設定となっていた。しかし、その後2019年のスカイラインの“プロパイロット2.0”では、制御の信頼性が高まって安全性が向上したことから、条件を満たせばハンズオフ(手放し運転)を続けることが可能となった。

ハンズオフに関しては、もともと法的な縛りがなく、運転中にステアリングから手を離してはいけないということは明記されているわけではないが、一般的にはハンズオフは危険なので世の中ではすべきでないと認識されていた。しかし、プロパイロット2.0のように安全が保障されれば、法的な規制がないことから問題ないと判断した。プロパイロットが、ある意味ハンズオフの風穴を開けたのだ。

そして次に登場したのが、2021年にデビューした世界で初めてレベル3走行が可能な「レジェンド」の“ホンダセンシングエリート(Honda SENSING Elite)”だ。特定条件下だが、自動運転レベル3を可能にした。この背景には、2020年4月の道路交通法の改正でレベル3が解禁されたことがある。さらに、2023年4月には同じく道路交通法が改正されて、レベル4(移動サービスを想定)も解禁された。
ちなみにレベル4の解禁を受けて、2023年5月に福井県永平寺町において、レベル4の自動運転移動サービスが始まった。
世界初の自動運転レベル3運転ができるレジェンド
注目の“ホンダセンシングエリート”を搭載した新型「レジェンド」は、2021年3月5日に発売された。

レベル3運転については、3次元の高精度地図や全球測位衛星システム(GNSS)の情報を用いて、自車の位置や道路状況を把握し、多数の環境認識用センサーで周囲360度を検知しながら、車内のモニタリングカメラでドライバーの状態も見守る。このようにさまざまな情報をもとに、ECUが認知・予測・判断を適切に行ない、アクセル、ブレーキ、ステアリングを高精度に制御して、安全かつスムーズな運転操作を支援するのだ。

ホンダセンシングエリートの主要な機能は以下である。
・ハンズオフ機能
高速道路や自動車専用道で、ACC(渋滞追従機能付アダプティブクルーズ)とLKAS(車線維持支援)が作動中に一定の条件を満たすと、車線内運転支援と車線変更支援、高度車線変更支援作動中に、ドライバーはハンズオフ運転ができる。
・トラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能)
ハンズオフ機能付車線内運転支援が作動中、渋滞に遭遇すると一定の条件下(高速または自動車専用道路で作動開始前は約30km/h以下、作動開始後は約50km/h以下であることなど)でドライバーに代わってシステムが周辺を監視しながら、アクセル、ブレーキ、ステアリングを自動制御するレベル3運転を行なう。ドライバーは、ナビ画面でのTVやDVDの視聴、検索などのナビ操作できる(スマートフォン操作は不可)。ハンズオフ(手を離す)に加えて、アイズオフ(目を離す)が可能なのだ。
ホンダセンシングエリート搭載レジェンドは、3.5L V6 DOHC直噴VTECエンジンと7速DCTを組み合わせた“SPORT HYBRID SH-AWD”ハイブリッドであり、車両価格は1100万円で100台のリース限定販売である。

ホンダのレベル3「レジェンド」が誕生した2021年は、どんな年
2021年には新型「レジェンド」の他にも、トヨタの2代目「アクア」、300系「ランドクルーザー」、2代目「GR86」、SUBARUの2代目BRZ」、日産自動車の3代目「ノートオーラ」、ホンダの2代目「ヴェゼル」、11代目「シビック」、マツダの「MAZDA MX-30 EV MODEL」、三菱自動車の3代目「アウトランダーPHEV」、スズキの9代目「アルト」などが登場した。

自動車以外では、東京五輪が開催されて日本最多のメダル58個を獲得、大谷翔平選手がメジャーMVP受賞、コロナウイルスが猛威を振るいワクチン接種が始まった。
また、ガソリン154円/L、缶ビール187円、コーヒー一杯474円、ラーメン540円、カレー730円、アンパン202円の時代だった。

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世界初となる自動運転レベル3を実現した“ホンダセンシングエリート”搭載の新型「レジェンド」。自動運転レベル2からレベル3へと第一歩を踏み出した、日本の歴史(いや、世界の歴史!)に残るクルマであることに間違いない。






