(左)
住友ゴム工業株式会社
タイヤ事業本部
技術本部
中野好祐 氏

(右)
住友ゴム工業株式会社
タイヤ事業本部
材料開発本部
大野秀一朗 氏
DUNLOP『SYNCHRO WEATHER』
水と温度という2つの要因により、ゴム質が変化して路面状況に最適なタイヤ特性に切り替わる新機構を採用。雪上はもちろん氷上までカバーする稀有なオールシーズンタイヤだ。

壮大な構想が驚きの結果を生む社内シナジーの結実

画期的な製品は、すぐには生まれない。その発端は、数年前にあった。
「2017年の東京モーターショーで、一つの概念としてアクティブトレッドをご紹介させていただきました。そこから実際に、製品に沿うような材料配合とは何だろうと考えを進め、2023年のモビリティショーで“翌年に市販します”と発表し、そこから2024年の発売に至る流れです」(大野氏)

次世代のオールシーズンタイヤ開発も、材料開発と並行して数年前から進んでいた。
「タイヤの性能検討は並行して始まっていました。ただ、氷上性能を担保しながらも、ウェット性能を代表とする他性能も両立させることが非常に難しかったです。そのため、様々なゴムを試し、可能性を探りながら開発を進めていきました」(中野氏)

タイヤ設計と材料開発、その技術開発はとあるタイミングで交わる。
「そんななか、アクティブトレッドというコンセプトが来て、性能のバランス、両立ができるようになりました。シナジーというか、一つになって合流していくような過程がそこにはありましたね」(中野氏)

効果はすぐに表れた。
「スタッドレスタイヤにラベリングは適用されませんが、強いて言うならスタッドレスタイヤのウェット性能は国内ラベリング一番下の等級〝d程度〞。これが何等級も飛び越えて〝b〞まで引き上がるようなイメージです。もともと実現できるのか戦々恐々な部分もありましたが、実際実現できたというところです」(大野氏)

ウェットと氷上性能を驚きの次元で両立した。
「試走会にいらっしゃったジャーナリストの方々もスタッドレス並みの氷上性能と他性能の両立度の高さにびっくりされていました。業界の方は、そのハードルの高さをご存じなので、アクティブトレッドとパターンが掛け合わせた完成度を評価いただきました」(中野氏)

手応えを得られた結果、市販化に向けた動きは一気に加速した。
「想定以上の性能両立度の高さから、それに見合うようなデザインに仕上げるために、ナノブラック技術というデザイン性を向上させる金型技術が追加採用されています。またその他にも品質管理の基準を厳格化するなど、お客さまに満足いただけるように後に追加されたこだわりも多数あります。社内での期待度も開発が進む中でどんどん大きくなっていった商品です」(中野氏)

材料開発のプロセスにおいても、感じる所は多かったようだ。
「私もまさに同感ですね。今までできなかったことが実現できたのは、技術の進化という観点でも非常に大きな収穫だったなと思っています。それが実際、市販用タイヤに投入でき、当初の想定を超えて着地させることができました」(大野氏)

「オールシーズンタイヤに
一本化したいけどやっぱり氷上性能がという
そんなお客様の不安を解消できるような
商品ができたんじゃないかと思っています」
「普通の開発以上に
すごく力が入っていたというのは
私としても強く感じています」