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今日は何の日?■USオデッセイがNHTSAでミニバン初の5スター獲得
2000(平成12)年4月2日、ホンダの人気ミニバン「オデッセイ」の北米生産US「オデッセイ」が、ミニバンとしては初のNHTSAの側面衝突と前面衝突評価試験で最高ランクの5スターを獲得した。

自動車で行なわれている衝突安全性試験と評価法
新しいクルマが発売されると、安全性を評価する実車を使った衝突試験が行なわれる。市場で起こる衝突事故の代表的な形態や条件で人体各部の傷害値が基準を満足しているかを評価するためであり、さらに衝突時に燃料漏れによる火災の恐れがないかなども評価される。

この自動車の安全に関する評価(アセスメント)を1978年に始めて実施したのが、米国運輸省の道路交通局(National Highway Traffic Safety Administration:NHTSAニッツァと呼称)である。安全性を1~5ランク分けした評価結果などを公表する一連のプログラムは、NCAP(New Car Assessment Program)と呼ばれ、法規ではないが、国ごとに独自の方法によって世界中で実施されている。
日本ではJ(Japan)NCAPと呼ばれ、国土交通省と自動車事故対策機構(NASVA)によって実施され、結果が毎年2回公表されている。最近はクルマの安全性が大きな商品力要素になっており、NCAPの結果が販売に大きく影響すると言われている。
具体的な評価方法は、傷害値が計測できるダミー(人体模擬マネキン)を乗員の代わりに搭載して、衝突時にシートベルトやエアバッグが正常に作動するか、車体変形によって乗員がどの程度傷害を受けるか、燃料漏れはないかなどを調査する。評価試験は、代表的な衝突パターンを模擬して、フルラップ前面衝突試験やオフセット前面衝突試験、側面衝突試験など、さまざまな衝突パターンで評価される。
現地生産のUSオッデセイがNHTSA衝突試験で5スター獲得
1994年にデビューしたオッデセイは、それまでの商用車ベースのミニバンとは異なり、乗用車をベースとして車高は低いが、3列シートの広い室内空間を確保した新世代ミニバンとして大ヒット。1995年には販売台数12万を超え、日本市場にミニバンブームを巻き起こした。


初代オデッセイは北米に輸出されたが、北米向けとしては小さくパワーが足りないと指摘されたため、1999年発売の2代目オデッセイからは現地生産(カナダ工場)し、ボディとエンジン排気量が拡大された。この大きくなったUSオデッセイが、NHTSAが行なった側面衝突試験および前面衝突試験において5スターを獲得したのだ。オデッセイは、サイドエアバッグ装着無しで前列・後列ともに5スターの安全性を獲得した初めてのミニバンとなった。

側面衝突テスト(38.5mph:約62km/h)での5スター評価は、万一の事故の場合、重傷を受ける可能性が5%以下、また前面衝突テスト(35mph: 約56km/h)では、前面衝突の際の重傷を受ける可能性が10%以下であることを示している。

北米版オデッセイがラグレイトとして日本上陸
USオデッセイは、1998年より北米市場で販売を始めて人気を獲得。そして、日本でも1999年6月から輸入され「ラグレイト」として販売された。

ラグレイトは、上級セダンの走りと質感を持つプレミアムライフ・ビークルとして、オデッセイのワンランク上に位置するミニバンとしてデビュー。大きなゆとりの室内空間と、用途に合わせてアレンジできる快適な3列目シート、上級車に相応しい優れた静粛性、リモコン式の両側電動スライドドアなどが採用された。


パワートレインは、新開発の最高出力205ps/最大トルク30.2kgmを発揮する3.5L V6 VTECエンジンと4速ATの組み合わせ。足回りについては、新設計のマクファーソンストラット(前)/インホイール型ダブルウィッシュボーン(後)のサスペンションを採用して、トルクフルな走りと快適な乗り心地が実現された。

車両価格は、標準グレードで366万円に設定。ちなみに1999年に登場した2代目オデッセイは、3.0L V6 VTECエンジン搭載車の標準グレードは、267.5万だった。北米では人気を得られたラグレイトだったが、日本では大きすぎたのか、売れ行きは限定的だった。

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かつては、“安全性は、カネにならない”と言われていた。最近は、運転支援技術を駆使した“ぶつからないクルマ”やNCAPで評価される“ぶつかっても安全なクルマ”が、人気や販売台数に大きな影響を与えるようになった。カタログの最高出力や燃費値よりも、安全性を重視するユーザーが多いのかもしれない。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。