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今日は何の日?■MPVに続いてコンパクト・ミニバンのプレマシー

1999年(平成11)年4月26日、マツダは1990年にデビューしたラグジュアリーなミニバン「MPV」に続いて、コンパクトなミニバン「プレマシー」をデビューさせた。ファミリアをベースにした乗用車ライクなミニバンで、独自のパッケージングによって世界最小クラスで3列シートを実現させた。

マツダのミニバンはMPVから始まった
1990年、マツダは米国向けに開発された「MPV」を日本に投入した。当時のミニバンは商用車ベースの派生車で、まだ日本でミニバンブームは起こっていなかった。

MPVは国内発売の2年前に米国で先行販売され、ラグジュアリー志向の3ナンバーミニバンとして米国で高い評価を得ていた。FRベースでV型6気筒3.0Lエンジンを搭載、7人乗員の3列シートは、全席ウォークスルーできる余裕の室内と荷室スペースを確保していた。
米国での評価を受けて、マツダは自信をもってMPVを国内に投入。しかし、米国を意識したシンプルなデザインと実用性を重視した大き目のボディは、狭い日本の道路では扱いにくく、販売は米国のようには伸びなかった。一方で、スタイリッシュなデザインを採用した同年にデビューしたトヨタ「エスティマ」や1994年の「オデッセイ」が登場して大ヒットとした。
両モデルが火付け役となり、1990年代後半から日本では車高の低い乗用車ライクなミニバンの一大ブームが起こった。MPVも、堅調な販売を続けたが、このブームにはうまく乗れなかった。
扱いやすさと広い室内空間を両立したプレマシー

1999年4月のこの日にデビューしたプレマシーは、ファミリアをベースにした5ナンバーサイズのコンパクトなミニバン。コンパクトながら、セダンのような取り回しの良さと広い室内空間の両立を狙った乗用車ライクなミニバンだった。

スタイリングは、一見乗用車のような5ドアハッチバック。コンパクトなボディに3列シートを備えるために、低いフロアを利用した独自のパッケージングを採用。3列シートは、未使用時には折り畳んで荷室を拡大でき、シートアレンジの工夫によって車中泊も可能となる。

パワートレインは、最高出力135ps/最大トルク16.5kgmを発揮する1.8L直4 DOHCエンジンと、電子制御4速ATの組み合わせ、駆動方式はFFと4WDを設定。4WDは、スリップを検出して4WD化するオンデマンド式でなく、通常前後駆動力50:50を走行状況に応じて適切に振り分ける本格的なフルタイム4WDである。

車両価格は、FF仕様の標準グレードで168.6万円(5人乗車)/174.4万円(7人乗車)に設定。当時の大卒初任給は19.7万円(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で197万円/204万円に相当する。プレマシーは、ミニバンブームの中ではやや地味な存在だったが、堅調な販売を記録した。

2018年マツダはミニバン市場から撤退


その後、プレマシーは2005年に初めてのモデルチェンジで2代目に移行。3ナンバー化してスタイリッシュに変貌した。さらに2010年に登場した3代目は、さらに流線形のスタイリングとなって進化を続けた。しかし、当時ミニバンは激戦区。堅調に売れていたプレマシーも2010年以降は伸び悩み、2017年12月で生産を終えて、3代続いたプレマシーは歴史の幕を下ろした。

一方、1990年にデビューしたラグジュアリーなMPVも2016年に生産を終了。さらに2008年にデビューしたMPVとプレマシーの中間のミドルクラス・ミニバン「ビアンテ」も2018年に生産を終了した。

このようにミニバンブームの中で、マツダはMPV、プレマシー、ビアンテという個性的な3台のミニバンを投入したが、激戦区ミニバンの中で善戦したものの、大きな存在感は示すことはできなかった。これを機に、マツダはミニバン市場から撤退し、SUVへ集中することを英断したのだ。
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現在ミニバンは一時ほどの勢いはないが、トヨタ、日産、ホンダの3強がミニバン市場を席巻しており、マツダやスバル、三菱といった中堅メーカーは、対抗できずにミニバンから撤退した。“選択と集中”のためには、中堅メーカーが日本特有のミニバンブームより、世界的なSUVブームを選択するのは必然と思わる。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。