「D型」に移行したGR86と改良前の「C型」を乗り比べると

一部改良を受けたGR86

2024年7月の一部改良で、いわゆるD型に移行したGR86は、最上級の「RZ」にデイタイムランニングライトの追加しただけで、見た目の変更は最小限にとどめている。メインメニューは、走りのチューニング。なお、オプションのSACHS(ザックス/ZF)ダンパーは変わっていない。

写真はATのRZでオプションのSACHS(ZF)アブソーバーを装着

まず、AT車、MT車ともにショックアブソーバーの減衰特性に手を入れ、「スポーツカーらしいダイレクトなハンドリングレスポンスはそのままに接地感を向上させた」としている。改良前と改良後モデルを乗り比べると、その差は小さいながらも確かに感じられる。山道や高速道路などでのコーナリング時だけでなく、一般道でも乗り心地がさらに改善され、路面の凹凸からの衝撃を巧みにいなしているのが分かる。ある程度の距離を乗り比べると、改良後モデルの方が疲れが少なく、ボディの剛性感まで高まったように抱かせる。上質さが増したのは、間違いなく朗報といえるだろう。なお、先述のように、オプションのザックス(ZF)ダンパーは変わっていないが、乗り心地とハンドリングのバランスでは最も優れているのも不変。さらにオプションのブレンボ製ベンチレーテッドディスクブレーキ(フロント:17インチ4ポッド対向キャリパー、リヤ:17インチ2ポッド対向キャリパー)を装着すれば、ブレーキタッチが自然なだけでなく、急制動時のストッピングパワーも頼もしい。

オプションのブレンボ製ブレーキを装着

また、電動パワステの特性も変更され、「俊敏なレスポンスと操舵安定性を両立させ、限界域におけるステアリングフィールを向上させた」としている。手応えとしては、少し操舵感の軽さを抱かせるもので、公道では限界域まで試すことはないが、ワインディングや高速道路なども扱いやすくなっている。

マイナーチェンジでインパネのデザインなどに変更はない
「RZ」はウルトラスエードと本革の組み合わせ

MT車は鋭さを増しスポーティさが向上した

さらに、MTは、エンジントルク制御の変更により、発進時から加速時までダイレクト感がかなり増している。同時にブリッピングのしやすさにも配慮されていて、こちらは限界域でなくても試せるが、サウンドとともに鋭さが増していて、MT車の鋭さはスポーティさの向上に直結しているのを実感。一方のAT車は、「ダウンシフト操作時におけるエンジン回転数の許容領域を拡大し、より広いトルクバンドを活用したスポーツ走行」に対応したとしているが、公道では多用することはなさそうだが、スポーツ走行時のダウンシフトからの再加速時に違いを実感できるかもしれない。そのほか、ウインカーレバーが自己復帰タイプのモーメンタリ式からロック式になり、ウインカーレバーを戻したのに、反対側が点滅してしまうということもなくなった。操作性が向上したのは朗報だ。

235PS/250Nmの2.4L NAの水平対向エンジンも不変

一部改良により洗練された乗り心地を手に入れつつ、エンジンレスポンスやシフトフィール(主にダウンシフト時)や電動パワステの見直しやダンパーのセッティングによるハンドリングの向上など、走りの快適性とスポーティ感を高めたG886。同モデルに限らず、燃費や騒音規制などスポーツカーを取り巻く環境は、厳しさを増していて、とくに純ガソリン車は、本当に最後の乗り時が近づいているのは間違いないだろう。

一部改良後のMTモデル