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今日は何の日?■新型キックスをブラジルで世界に先駆け発表
2016年(平成28)年5月2日、日産自動車は世界に先駆けてブラジルで投入するコンパクトなクロスオーバーSUV「キックス(Kicks)」を発表(発売は同年8月)した。このキックスは、現在日本で発売中のe-POWER搭載の「キックス(KICKS)」とは異なり、ガソリンエンジン搭載車で日本には投入されていない。


コンセプトモデルや軽SUVでも使われたキックスという車名

キックスという車名が初めて使われたのは、1995年東京モーターショーで登場したコンセプトモデルで、後部に広いトランクを持つピックアップ風マルチパーパスセダンの「キックス(XIX)」だった。続いて、1998年のパリモーターショーでは、同じくコンセプトモデルとしてM-fire燃焼を採用したコモンディーゼルエンジンを搭載した低燃費ハッチバック「キックス(KYXX)」が披露された。
![軽SUV「キックス(KIX)]](https://motor-fan.jp/wp-content/uploads/sites/4/2025/04/20250502_nissan_kicks_03-1024x683.jpg)
市販車として初めてキックスを名乗ったのは、2008年に登場した軽SUVの「キックス(KIX)」だ。当時、日産は軽自動車の自社開発を行なっていなかったことから、「パジェロミニ」を三菱からOEM供給を受けてキックスと名乗って発売したのだ。日産ミニ四駆というキャッチコピーで、人気の「エクストレイル」を彷彿させるフロントグリルに変更して、エクストレイルの弟分的な軽SUVだった。
いずれもキックスを名乗ったが、上記3モデルのコンセプトに共通性はまったくなく、またそのスペルがXIX、KYXX、KIXと異なる点も興味深い。
都会的な雰囲気を持つコンパクトSUVに仕立てられたブラジル産キックス

軽SUVのキックスは2012年に販売を終えたが、地球の反対側のブラジルでキックスの名前が復活した。2016年5月のこの日、日産はブラジルのリオデジャネイロで新型のクロスオーバーSUV「キックス(Kicks)」を発表した。発売は、同年8月にブラジルを皮切りに南米諸国や北米にも展開された。
キックスは、マーチをベースにしたコンパクトな街乗りを重視したSUVで、最高出力114psを発揮する1.5L直4 DOHC、もしくは124psの1.6L直4 DOHCエンジンが搭載された。

スタイリングは、日産車の象徴であるVモーショングリル、ブーメラン型のヘッドランプとテールランプ、ウインドウがフロントからサイドにかけて巻き込んだバイザーのように見えるフローティングルーフなどを採用。インテリアについても、最新の機能を搭載し、未来的なデザインとなっている。

またキックスには4つのカメラでクルマの周辺状況を認識し、死角にある障害物をドライバーに知らせるアラウンドビューモニター(移動物検知機能付き)が搭載。この機能は、南米ではセグメント初の導入だった。

キックスは南米で好評を得て、北米では2018年に「ジューク」の後継モデルとして登場。その後、中国やインドなどへも展開されて人気モデルとなったが、日本への投入はなかった。
日本では2020年に新型キックス(KICKS)が登場
そして2020年6月に、ジュークの後継として日本へ「キックス(KICS)」が投入された。ブラジル生まれとほぼ同じサイズのコンパクトなクロスオーバーSUVだが、パワートレインがガソリンエンジンから日産独自のハイブリッドe-POWERに変更され、キックスのスペルはKicksでなくKICKSに変わった。

スタイリングは、Vモーショングリルやブーメラン型ヘッドランプなどで全体的な雰囲気はブラジル生まれのキックスと類似しているが、新型の方が大きなフロントグリルで、よりダイナミックで洗練されたデザインとなった。e-POWERは、エンジンは発電のためだけに使われ、その電力を使ってモーター走行するシリーズハイブリッドである。2016年に初めて「ノート」で採用され、その後「セレナ」、そしてキックスで採用され、その後日産の看板技術として「エクストレイル」などに採用が進んでいる。
また、運転支援技術“プロパイロット”を搭載するなど、日産の最先端技術が採用された。
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キックスと同クラスのジュークは、個性的なスタイリングで当初は人気を獲得したが、徐々に販売が落ち込んでしまった。そんな時に、海外ではキックスがヒットしていたので、あっさりと日本市場にe-POWERを搭載して投入したという背景があったようだ。それにしても、スペルが違うだけのキックスというモデルが幾つもあるのは…紛らわしい。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

