長安マツダで中国向けEZシリーズ第二弾

EZ-60 クルマの詳細については、こちらをご参照ください。

長安マツダのラインアップは、
MAZDA3、CX-30、CX-5、CX-50、そこにEZ-6、そして今回のEZ-60が加わるわけだ。EZ-6とEZ-60はマツダと長安汽車の協業によって開発されたモデルでそのほかはマツダのグローバルモデルの現地生産ということになる。

ちなみに、現地での価格は
MAZDA3:1.5Lモデル 8.99万元~(約180万円~)2.0Lモデル 9.99万元~(約200万円~)
CX-30:9.99万元~(約200万円~)
CX-5:12.6万元~(約252万円~)
CX-50:16万元~(約320万円~)
EZ-6:PHEV 14万元~(約280万円~)BEV 16万元~(約320万円~)

さて、グローバルモデルの現地化を長安マツダで担当してきた小澤裕史さんが、EZ-6に続いてEZ-60の主査を務めた。小澤さんは南京にあるCMA(長安マツダ汽車有限公司)にいて、中国駐在もすでに3年半に及んでいる。EZ-6、EZ-60の2車種プラス現在開発しているモデルも含めて全部を見る立場だ。

その小澤さんに上海モーターショーの長安マツダブースでお話しを伺った。

マツダが尖らせたいところとは?

小澤裕史氏(長安マツダ汽車有限公司/マツダ商品本部主査)

MF:今までは長安マツダの商品は、マツダの商品と同じものを長安マツダで造ることだったと思います。それはいわゆる現地化という作業ですよね?
小澤さん
(以下敬称略):今までは基本的にグローバルで作った商品の現地化が中心でした。でも、EZ-6からは、やはり中国のお客さんのニーズに合ったものをしっかりつくりましょうということで、マツダと長安汽車の強みをしっかり融合しましょうという考えで作っています。では、その”強み”ってなんですかというと、マツダはもちろんデザイン。魂動デザインですね。あとは人馬一体の走りですよね。ここは当然マツダらしくしっかりとハードもソフトも必要に応じて(ベースとなる長安汽車のモデルから)すべて変えています。これは主にマツダがやっています。それから安全の哲学やHMIも、当然マツダの技術を入れています。
では、長安汽車の強みなんですかってなると、やっぱり中国は知能化が進んでいて、その領域はやはりADASやスマートコックピットなどは、長安からうまく活用しましょうよとなっています。プラスバッテリー領域ですよね。モーター、バッテリー、ここは長安のものを使います。こういったカタチで、中国のお客様のニーズに合わせて開発をしている状況ですね。

EZ-60のデザインは、日本側が担当した。

MF:EZ-6とEZ-60で今までのグローバルモデルじゃなくて中国専用モデルを作ろう。EZ-6ヨーロッパにも出すことになりましたけど、開発のきっかけは?
小澤:
元々は中国専用でした、はい。で、思ったより出来もいい。当然工場はマツダの生産システムで品質すべて担保して造っています。我々、そのフェーズ3までワン、ツー、スリーとやるなかで(註:マツダの中期経営計画でフェーズ1は2022-2024:電動化に向けた開発強化、フェーズ2は2025-2027:電動化に向けてのトランジション、 フェーズ3は2028-2030:BEV本格導入)BEVをやっていく流れでいくと、中国とか欧州とか、当然BEVがどうしても進んでいる国々がございます。じゃ、あそこはこの長安マツダの資産をしっかり活用して海外にも出していくというのはひとつの補助位置だというところから話が出てきました。特に北欧は、もうほぼBEVじゃないですか。そういった意味では、我々(長安マツダ)の商品を海外も出すことによってグローバル展開ができる。したがって、中国国内から考えていた生産拠点、地産地消からは、グローバルな生産拠点という位置付けに変えていこうという話ですね。

MF:開発は、長安汽車のベースモデルがもう出来上がっていて、そこから、手を加えるっていう状況なのですか。それとも、もうちょっと前の段階から一緒にやるのでしょうか?
小澤:
この2モデル(EZ-6とEZ-60)はある程度出来上がっているものだったんですけど、ただ、ベースモデルは、当然、売る前からある程度こういう感じで進んでいるのは見ていました。装備類とかについては、ベース車に全然こだわっていなくて、長安汽車で使えるものがあるなら、使わしてくださいよ、と。だから、電子制御サスはベース車には入っていませんし、電子ドアミラーもアウターミラーもないです。大きなモニターももちろんないです。そういった意味で、あるものをうまく使わせてくださいと。バッテリーもそうですね。まったく同じでは、ないですから。まさにこれは商品だけじゃなくて、部品単位でもそうです。これがライトアセットと思います。

MF:中国だと長安マツダのバッチが付きますが、他市場ではMAZDAブランドです。やっぱりマツダブランドをつけるからにはっていうのは当然開発で意識されたのですか?
小澤:
はい、もちろん。正直言って、中国と欧州は仕様を変えているんですね。例えば、走りの領域で言うと、ドイツを中心に欧州市場は高速なので、当然、操安性は違います。ユーロNCAPなど安全性の基準も微妙に違うわけです。当然MAZDA6e(長安マツダのEZ-60の欧州版)はユーロNCAP 5スターのポテンシャルを持っています。ボディの補強も入れています。で、それに伴って車体の剛性も高くなるので一部にさらに補強を入れています。走りに対するところも、EPAS(電動パワーステアリング)とかね、ステアリング、ハンドリングとか全部変えているんです。
MF:それはセッティングだけでなく、ハードから違う?
小澤:
ハードも変えています。一部そういう補強をかけるとか、車体剛性、捻り剛性をさらに良くして、かつ、EPAS(電動パワーステアリング)、ブレーキ、アクセルも変えています。中国のお客さんは、わりと柔らかめの脚周り、乗り心地が好きなんですよ。ハンドルは軽めが好きなんです。だから、MAZDA6eとEZ-6はそういった作り分けを徹底的にやっています。

長安汽車の強みと技術力

MF:EZ-60のベースとなった長安汽車のモデルは、DEEPAL S7だと思います。中国市場におけるポジションは、やはりEZ-60の方が上級モデルということになりますか?

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新型電動クロスオーバーSUV「MAZDA EZ-60(マツダ・イージーシックスティ)」が上海モーターショーで発表された。マツダと長安汽車の協業で生まれた新エネルギー車の第二弾だ。第一弾のEZ-6が欧州(MAZDA 6e)、タイなどへ輸出されていることを考えるとEZ-60も中国専用というわけでないかもしれない。期待のEZ-60をじっくり見ていこう。

https://motor-fan.jp/mf/article/324302

小澤:もちろんです。思いとしてはあえてそうしています。あえて若干プレミアム感出す。マツダらしさをしっかり出すための手段として、より奢った装備や質感にこだわりました。長安汽車ブランドとマツダブランドで食い合わないようにしましょうということです。それぞれのやっぱブランドの良さをしっかりと立てた上での価格戦略は当然あります。

プラットフォームは長安汽車のものを使う


MF:開発は中国。元々、長安汽車のプラットフォームがあってボディ骨格ある。それに対してマツダ流の味付けをしていく。デザインは魂動デザイン。でも、中国のエンジニアと一緒にやんなきゃいけないわけですね。
小澤:そうですね、CMA、我々長安マツダのローカルエンジニアは昔からやっている人が多いのでマツダ流を割とわかっていてくれる。でも、長安汽車となると、「マツダの良さってなんですか?」は正直、根本的にはわかってないかもしれません。そこは我々マツダが入り込んで、こういう味付けにしてくださいと、こうやってくださいとお願いをしてやってもらいました。逆に言うと、商品もマツダらしくって、何を尖らせるんですかっていうのを、真剣に考えないといけません。今までマツダが全部やっていることを100%長安マツダのモデルに織り込むと、多分商品として成立しない。中国だったらOKだよねっていうところがあれば、中国のそのまま使ってもいいでしょうし。尖らせるところはなんですかということは、走りであったり、安全の思想であったり、デザインであったり、こういうとこは徹底的にマツダらしくやっていきましょうというやり方をしました。

MF:さっき長安汽車のブースを見に行てきました。ブースにはエンジンがたくさん展示してあって、熱効率43%、圧縮比16.0、ボアスト比1.45、とんでもないスペックのエンジンが置いてありました。本当だったらすごいなと思いながら見てきたんですけど、今回のEZ-60のPHEVに載っているエンジンは?
小澤:エンジンのベースは長安汽車製です。なぜかと言うと、やはり僕らREEV(レンジエクステンダーEV)って言うんですけど、PHEVなんですよね、シリーズハイブリッドで。そのマッチングでマツダのエンジン使ったら、ものすごい工数とコストがかかる。そこは、まず基本をいただきましょう、と。チューニングはうまくやりました。ただ、エンジンそのものは、今回、EZ-60はPHEV専用のエンジンに変えたんです。EZ-6とエンジンとは違うんですよ。実はモーターも変えています。より電費効率のものに変えているんです。だから今回、走行性能や燃費でも非常に良くなっています。

長安汽車のブースにはHEV、発電専用エンジンが展示されていた。

MF:長安汽車の技術力そのものはかなり高いのでしょうか?
小澤:高いと思います。我々がコロナ前に考えていたイメージとはまったく違って、コロナ禍の3年間でものすごい技術の進化がありました。僕も驚きました。それを今回この開発を通じてよく見てみたら、本当にグローバルに通用するレベルの品質とか考え方とかいうのができていると思いました。あとは中国政府が、かなり色々後押しをしている領域もありますよね。そういったある特定分野において、ものすごく強いですし、既存のものの方ですね、こう数年で飛躍的に品質が上がってきていますね。

MF:今回のEZ-6とEZ-60っていうのがあって、このシリーズがまだ先もあるのでしょうか?
小澤:はい。セダンがあってSUVがあって第3弾、第4弾も当然視野には入っています。タイミングとかね、そのあたりはまだはっきりはしていませんし、言えることではないんですが、そういったものを当然考えていくというのは当然スコープに入れています。

マツダ6の後継モデル「EZ-6」噂されるワゴンバージョンは2026年登場か!? 

マツダは1月、フラッグシップモデル「マツダ6」の国内向けモデルを4月中旬に販売終了することを発表、4月の北京モーターショーでは、後継モデルとなる「EZ-6」がワールドプレミアされ話題となったが、早くも派生モデルが噂されている。予想されるワゴンバージョンでは、Cピラー以降のルーフをストレッチ、大型化されたリアクォーターウィンドウを備え、ボディシルエットがより長く、高級ワゴンへと進化している。

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MF:中国でEZ-60が大ヒットして、やっぱりEZ-60のヨーロッパが欲しいねって話になった時に、長安汽車の生産キャパシティ的には余裕があるのですか?
小澤:そうですね。まずEZ-60も海外を視野に入れて当然つくっているのは事実ですね。生産キャパシティとしてはまだあります。
MF:EZ-60、意外とサイズが大きいですね(全長×全幅×全高:4850mm×1935mm×1620mm、ホイールベース:2902mm)。
小澤:そうですね。一応セグメントS-SUVなんですよ。ただ、そこでは一番大きい方なので、M-SUVとほぼかかってしまうくらいですね。ポルシェ・マカン(全長×全幅×全高:4784mm×1938mm×1623mm、ホイールベース:2893mm)くらい? 確かにそうですね。ちょっと日本では、大きいかもしれないですね。ただ、取り回しは非常にいいですから、運転はしやすいですよ。

後編へ続く

マツダEZ-60開発ストーリー 中国市場はどうなる? マツダはどうする?

上海モーターショーで発表されたマツダEZ-60。中国でのマツダのターンアラウンドを成否の鍵を握る重要モデルだ。中国市場とどうなるか、開発責任者の小澤裕史さんへのインタビューの後編をお届けする。 PHOTO:長野達郎(NAGANO Tatsuo)

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