シーライオン7とはどんなモデルか?

アシカを意味する車名のシーライオンが示すとおり、新たに導入されたクロスオーバーSUVはドルフィン(イルカ)、シール(アザラシ)と同じ海洋シリーズの流れを組む。フロントからリヤにかけてサイドを流れる波打ったラインや、「オーシャンX」と呼ぶフロントマスクが特徴だ。デザインを手がけたのは、アルファロメオ、セアト、ランチア、アウディなどを経てBYD入りしたウォルフガング・エッガーである。
有り体にいえば、シーライオン7はセダンのシールをベースにしたクロスオーバーSUVだ。全長×全幅×全高は4830×1925×1620mm、ホイールベースは2930mmだ。BEV専用に開発したe-Platform 3.0をベースに、リン酸鉄(LFP)リチウムイオンバッテリーを板状に成形したブレードバッテリーを採用し、このブレードバッテリーを車体構造の一部として使用するセル・トゥ・ボディ(CTB)を適用している。


LFPはニッケル、マンガン、コバルトを使用する三元系(NMC)リチウムイオンバッテリーに対してエネルギー密度で劣るが、発火リスクが低く、サイクル寿命が長い(BAJは急速充電を4500回行なってもSOCの80%を維持すると説明)などの特徴がある。バッテリー総電力量は82.56kWh。WLTCモードによる一充電走行距離は、RWDが590km、AWDは540kmだ。
普通充電は6kW、急速充電は105kWまでに対応。シーライオン7は低温時に急速充電時間を短縮できるバッテリーの余熱機能を備える。また、バッテリーに蓄えた電力を家庭で利用するV2H、外部給電器を介して家電製品に電力を供給するV2Lに対応する。

リヤに搭載する永久磁石同期モーターは230kWの最高出力と380Nmの最大トルクを発生。シールに比べて最大トルクが20Nm向上している。フロントにもモーターを搭載するAWDは前後合わせて最高出力390kW、最大トルクは680Nmに達する。0-100km/h加速はRWDが6.7秒、AWDは4.5秒だ。
アダプティブクルーズコントロールをはじめ最新のADAS(先進運転支援システム)は標準装備。アラウンドビューモニターを備えており、Uターン時は真上からの映像を15.6インチのタッチスクリーンに表示。左折時は斜め後方の映像を表示する。ヘッドアップディスプレイはシールより提供情報を増やしている。
走りも静粛性も上質



車格も違うが、ドルフィン/アット3とシールの間には、視覚的な質感にも、走りの質感にも歴然とした差がありシールは圧倒的に上質だ。シーライオン7はシールをベースにしたクロスオーバー7と聞くと、「雰囲気は似たようなものだろう」と決めつけがちだが、輪をかけて上質に仕上がっており、差分の大きさに驚くばかり。静粛性は圧倒的に高く、操作入力に対する動きのつながりはいい。

乗り心地面では動きのしなやかさが印象に残ったが、これは減衰力可変ダンパーの効果が大きいようだ。筆者の好みはRWDよりもAWDである。アクセルペダルを深く踏み込んだときの気を失わんばかりの(失っては困る)強烈な加速力も魅力だが、RWDとの120kgの重量の違いが効いているのか、高周波系の振動減衰の面で心地良さが上だ。

ドアの解錠/施錠は付属のリモコンキーで行なうこともできるが、NFC(近距離無線通信)にも対応しており、iPhoneならスマホのウォレットにキーを使いすることで解施錠が可能になる(サイドミラーにiPhoneをタッチすると解錠)。物理的なスタート/ストップボタンは付いているが、乗車してブレーキを踏めばシステムはオンになるし、降車して離れれば自動的にシステムはオフになる。
回生ブレーキの強弱(「スタンダード」と「高」の2段階)はタッチディスプレイでも切り換え可能だが、シフトセレクターの近くにあるスイッチでも切り替えが可能。「高」に切り換えても強くならず不思議に思って確認したところ、SOCが93%以上のときは回生ブレーキが働かないようになっているとのことだ。

シーライオン7の特徴は、高い処理能力を生かしたインフォテインメント系の機能であると感じた。それが本当に必要か、便利かは別にして、驚かされることしきりだ。まず、タッチディスプレイに表示されるグラフィックが高精彩できれい。クルマの外観をメニューから呼び出し、タッチして向きを変え、ルーフをワイプすると指を動かしたぶんだけパノラミックルーフの電動サンシェードが開いたり、閉じたりする。サイドウインドウも同様だ。
前席はシートベンチレーションが付いているし、シートヒーターは前後4席に付いており、足元が広く、左右を隔てる段差がなくてフラットなフロアを持つ後席は20度のリクライニングが可能。センターコンソールには50Wの出力を持つワイヤレス充電機能が付いており、ご丁寧に冷却ファンが装備されている。
至れり尽くせりな機能と装備がついて、この価格。競合に対して価格競争力が高いだけでなく、見た目の質も走りの質も高い。BYDシーライオン7は注目のBEVである。

BYDシーライオン7 RWD

90W急速充電で30分40kWh以上の充電が可能

BYD SEALION AWD
全長×全幅×全高:4830mm×1925mm×1620mm
ホイールベース:2920mm
車両重量:2340kg
サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式/Rマルチリンク式
フロントモーター
YS210XYA型かご形三相誘導モーター
最高出力:160kW(217ps)
最大トルク:310Nm
リヤモーター
TZ200XYC型交流同期モーター
最高出力:230kW(312ps)
最大トルク:380Nm
バッテリー
リン酸鉄リチウムイオン電池(BYDブレードバッテリー)
総電圧:550V
総電力量:82.56kWh
WLTC交流電力量消費率:177Wh/km
一充電走行距離:540km
車両価格:572万円