昭和56年(1981年)に登場したホンダ・シティは、昭和50年代後半の日本の自動車業界に新たな風を吹き込んだ一台でした。日本はすでに“バブル前夜”で、経済は好調に推移していましたが、同時に環境意識や経済意識が高まり、経済性に優れたエコカーやコンパクトカーへの注目も高まっていました。この時代、ホンダはその既存のイメージを一新するために、シティという大胆なコンセプトのコンパクトカーを誕生させました。

シティの特徴は、コンパクトでありながらも、広い室内空間とそれを生み出す革新的なデザインにありました。特にそのボディデザインは、当時の日本車どころか世界的にも類を見ない、“トールボーイ”と呼ばれる背の高いスタイリングが採用されていました。加えて、シティは日本の都市型自動車市場に適応したモデルであり、都市部での取り回しやすさ、燃費性能の高さなども大きな特徴でした。

また、キャンプ場やサーキットなどに移動した後、目的地で自由に行動する事を目的として、折り畳んでシティのトランクルームに積載可能なバイク(原付)、『モトコンポ』が同時開発され、同時発表同時発売されたことも大きな話題となりました。シティは日本国内外で大ヒットし、その後はターボ化やオープンモデルのカブリオレの登場など、ホンダの軽自動車やコンパクトカーの流れを作り出す原動力となったのです。

モトコンポ 収納時
モトコンポ