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今日は何の日?■V37型スカイラインにダイムラー・ベンツの2.0Lターボを搭載
2014(平成26)年5月26日、日産自動車は前年に発売した13代目「V37型スカイライン」にダイムラーAG製の2.0Lターボエンジンを搭載した「スカイライン200GT-t」を追加した。ダイムラーAG製のエンジンを搭載したのは、2010年に日産とダイムラー間で相互出資する提携を結んでいたという背景がある。

V37型スカイラインは、先に米国で発売されたインフィニティQ50
スカイラインが始めて北米のインフィニティブランドで販売されたのは、2002年のV35型「インフィニティG35」で、V36型は「インフィニティG37」を名乗った。そして、次期車「インフィニティQ50(V37型スカイライン)」は2013年1月のデトロイトショーで発表され、同年8月に日本より先にデビューした。

インフィニティQ50は、高級車らしく重厚ながら、ワイド&ローの躍動感のある引き締まったスタイリングで広い室内スペースを確保。インテリアは、ドライバーを中心に考えたコクピットとなっており、大型のデュアルタッチスクリーンを備え、ハンズフリー電話やナビゲーション、エンターテインメントシステムとスマートフォンアプリのすべてを統合し、運転中でも簡単な操作で車外とのコミュニケーションを行なうことができた。
パワートレインは、最高出力328ps/最大トルク35.3kgmを発揮する3.7L V6 DOHCエンジンと、296psの3.5L V6 DOHCエンジン+50kWモーターの“インテリジェントデュアルクラッチコントロール”ハイブリッドシステムを搭載。ハイブリッドモデルのシステム最高出力は364psに達し、7速ATを組み合わせたFRと4WDが用意された。

さらに、世界初となる2つの新技術“インフィニティ・ダイレクト・アダプティブ・ステアリング”と“ アクティブ・レーン・コントロール”を搭載。ダイレクト・アダプティブ・ステアリングは、タイヤの角度とステアリングの操舵をより高度に制御するシステムで、ドライバーの好みで4種類のセッティングが選択可能。アクティブ・レーン・コントロールは、車載カメラによる車線検出システムを使ってクルマを車線中央で安定して走行させる運転支援システムである。

そして、日本ではV37型スカイラインとして翌2014年2月にデビューした。ただし、パワートレインはハイブリッドのみで、スカイラインとしては初めてのハイブリッドモデルだった。
V37型スカイラインに2.0Lターボモデルを追加
V37型スカイライン発売の2ヶ月後の2014年5月のこの日、新たに高出力・低燃費・軽量なターボチャージャーエンジンを搭載した「スカイライン 200GT-t」が追加された。


スカイライン2000GT-tは、デザインや世界最高レベルの全方位の安全性能はそのままに、ダイムラー・ベンツのEクラスと同じ、最高出力211ps/最大トルク35.7kgmを発揮する2.0L直4 DOHCインタークーラー直噴ターボエンジンを搭載。これは、エンジン排気量を下げて燃費を向上させ、出力はターボで増強するという、いわゆるダウンサイジング直噴ターボというコンセプトである。また、トランスミッションもダイムラー製でクロスレシオ7速ATが組み合わされた。


レスポンスに優れたターボによって2.5L NAエンジンに匹敵する力強さと加速性能を発揮しながら、ダウンサイジング効果に加えてアイドリングストップ、直噴化、可変バルブタイミング、電動油圧パワーステアリング、充電制御などの採用により、13.6km/L(JC08モード)の低燃費が実現された。

車両価格は、標準グレードで383.4万円、ちなみに前年の登場した3.5Lハイブリッドモデルは449.61万円である。
スカイライン200GT-tにダイムラーAG製エンジンが搭載された背景
日産は、1999年にルノーと資本提携を結び、経営立て直しのためにカルロス・ゴーン氏が日産のCEOとなった。ゴーン氏のCEO就任後、日産は徹底した合理主義のもと、経営の立て直しに取り組んだ。その一環として、2010年にダイムラーAG社と3.1%を相互出資する提携を結んだのだ。

その具体的な活動のひとつが、ダイムラーからインフィニティ向けにガソリンエンジンとディーゼルエンジンを供給することだった。それに基づいて、V37型スカイラインのコスト低減ためにダイムラーAG製エンジンが搭載されたのだ。ダイムラーAGにとっても、エンジン生産数量が増えるメリットがあるのだ。

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クルマとしての完成度は高かったスカイライン200GT-tだが、“エンジンが他社製なんて”とか、“名車スカGターボらしさがない”といった意見も多かったようだ。スカイラインに愛着や憧れを持つファンにとっては違和感があったのは確かだろうが、今後もメーカー間の提携や共同開発などが進むと、このようなことが起こることは致し方ないと思われる。
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