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今日は何の日?■ハイブリッド専用車ジェイドに直噴ターボ車を追加
2015(平成27)年5月28日、ホンダは乗用車ライクな背の低いスタイリッシュなミニバン「ジェイド」に、1.5L VTEC直噴ターボエンジンを搭載した「ジェイドRS」を追加した。ジェイドは同年2月に発売されたハイブリッド専用車だが、RSはダインサイジング直噴ターボによって燃費と走りの両立を目指したのだ。

ストリームの後を継いだハイブリッドミニバンのジェイド

ジェイドは、2000年にデビューしたコンパクトミニバンとして人気を獲得した「ストリーム」の後継として、2015年2月にデビューした。ストリームは、1994年に登場して大ヒットした「オデッセイ」よりも背の低い扱いやすい5ナンバーのコンパクトミニバンとして、新たな市場を開拓して大ヒット。しかし、その後トヨタ「ウィッシュ」などライバルの登場によって勢いは減速して、2014年に2代目をもって生産を終了した。

ストリームの後を継いだジェイドは、ステーションワゴンのように全高が低いながらも、十分な居住性を確保したワゴン風ミニバンで、ちょうどストリームとオデッセイを融合させたようなモデルだった。

3列シート6人乗車で、スタイリッシュさを強調するため後席ドアは、スライド式でなくヒンジ式を採用。パワートレインは、1.5L直4ミラーサイクルエンジン+7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)にモーターを組み合わせたスポーツハイブリッド「i-DCD」のみで、ハイブリッド専用車だった。

燃費は、25.0km/L(JC08モード)を達成し、最新の安全運転支援システム“ホンダ・センシング”も搭載された。
ダウンサイジング直噴ターボのジェイドRS追加
ハイブリッドのジェイドの発売からわずか3ヶ月後の2015年5月のこの日、ガソリン車「ジェイドRS」が追加された。


エンジンは、ホンダが「ステップワゴン」から導入を進めているダウンサイジング直噴ターボというコンセプト。もともとは、2005年頃から欧州メーカーが積極的に進めた燃費と走りの両立を目指すためのコンセプで、燃費を向上させるために排気量を小さくして、出力低下分についてはターボを装着することによって増強する手法である。この考え方は、日本メーカーはそれほど積極的に採用せず、ハイブリッド化を積極的に進めた。


RSのパワートレインは、最高出力150ps/最大トルク20.7kgmを発揮する1.5L直4 VTEC直噴ターボエンジンとCVTの組み合わせ。駆動方式はFFで、燃費18.0km/L(JC08モード)が達成された。

その他にも、サスペンションの剛性がハイブリッド車に対して15%(フロント)/20%(リア)強化され、スプリングやダンパーなどもセッティングを見直すことで、乗り心地を損なうことなく優れた走行安定性と軽やかな操安性を実現された。
直噴ターボ車(RS)とハイブリッド車の比較

直噴ターボ車とハイブリッド車の性能とランニングコスト(ガソリン代)を比較してみよう。
・パワートレイン出力
直噴ターボ車:最高出力150ps/最大トルク20.7kgm
ハイブリッド車:総合最高出力152ps(エンジン131ps、モーター29.5ps)/最大トルク(15.8ps、モーター16.3kgm)
・燃費(JC08モード)
直噴ターボ車:18.0km/L
ハイブリッド車:25.0km/L
・車両価格
直噴ターボ車;253万円
ハイブリッド車:272万円
参考に、モード燃費ベースでランニングコスト(ガソリン代のみ)を、年間1万km走行、ガソリン代170円/Lを前提にして試算すると、直噴ターボ:9.4万円/年(=170×10000/18)、ハイブリッド車:6.8万円(=170×10000/25)となる。

この結果から、ハイブリッドの車両価格差19万円高をガソリン代の差2.6万円/年によって解消するためには、7.3年を要することが分かる。すなわち、7年ぐらいまではRSの方が費用面(価格+ガソリン代)で有利であり、以降はハイブリッド車が逆転する。あくまでもモード燃費での試算であり、実際には走行パターン等で異なる。
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一時期欧州で流行ったダウンサイジングターボというコンセプトも、最近は否定的な意見が散見される。確かに比較的低速低負荷では燃費は良いが、ターボが働く中速・高速域では燃費向上効果が消失し、むしろ悪化するからだ。ターボが利くということは、言い換えれば排気量が大きくなることとほぼ同じだから、ダウンサイジングの効果もなくなるという、ごく当たり前の結果なのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。