リアルなEV生活で電気代と航続性能は不満ありか?

バッテリーを満充電にした状態での航続性能を示すカタログスペックが「一充電走行距離」において700kmを超えるEVはひとつやふたつではなく、Dセグメント以上のEVであれば600km以上の一充電走行距離を誇る車種も珍しくない。EVはロングツーリングに向かないという評価は過去のものとなりつつある。
とはいえ、筆者がコンパクトなEV「フィアット500e」に乗っていることを話し、さらに「自宅などでの普通充電だけで運用している」と伝えると、「それで問題なく乗れているの?」だとか「家の電気代が爆上げでしょう?」といった反応になることが多い。おそらく日常的にEVに乗っていない人からすると、このあたりは気になるトピックスなのだろう。
なにしろ、FIAT 500eのバッテリー総電力量は42kWhで、カタログスペックの一充電走行距離は335kmとなっている。冒頭で紹介したような航続性能を持つ大きなEVと比べると心もとなく感じて、疑問に思うのは理解できる。
そこで、今回の【自腹レポート】では、納車から2か月・1300kmを走った時点での感想と印象を、電気代の変化をと中心にお伝えしようと思う。
先に結論を記すと、「電気代の上昇分は気にならない」。
1km走行するの3.46円の電気を使う

電気代の変化については、前月比でのデータを知りたいという声もあるだろうが、FIAT 500eをお迎えしたのは3月後半。我が家はすべての空調をエアコンでまかなっているため暖房の使用頻度が下がる3月や4月の電気代は安くなる傾向にある。実際、2月と4月を比べるとEVの普通充電を利用した4月のほうが1000円以上も電気料金が安くなっている。
月間トータルの電気代で差額を比べただけではEVの自宅充電(普通充電)によって、どれだけ電気代が上昇するのかを判断するのには不適切だ。また、目的地で無料の普通充電を利用することもあるのでEVの消費電力のすべてを自己負担しているわけでもない。
そこで、まる一日出かけていて、基本的な家電しか電力消費していない状態の日の消費電力と、同じく不在している日にEVの普通充電を行ったときの消費電力量を比べてみることにした。
なお、筆者は東京電力の従量電灯で契約している。以下、この契約においての話となることをご理解いただきたい。
東京電力のオンラインサービス「くらしTEPCO」を利用すると毎日の消費電力量を0.1kWh単位で見ることができる。

ちょうど一週間前に満充電にしたFIAT 500e、充電スタートする前の画面を見るとバッテリー残量は77%となっていた。この一週間で約100kmほど走ったが、これしかバッテリーが減っていないのだから、実際の航続性能はカタログスペックから想定する以上であるという感想になるのもご理解いただけるのではないだろうか。
それはさておき、バッテリー残量77%から100%まで充電した日の消費電力は13.5kWhで、その日の電気料金は387円だった。同月における不在日(複数日)の消費電力は平均1.1kWh、電気料金は41円相当となる。
この数字をベースに計算すると、FIAT 500eのバッテリーを77%から100%に充電するのに消費した電力量は12.4kWhで、電気料金は346円相当といえる。ここに前述した走行距離を加味すると、346円/100km、つまり1kmを走行するのに使う電気代は3.46円ということになる。
あくまで一例であり、この数字が平均値というわけではないが、現状で月に650kmほど走っており、その際の消費電力が同等だと考えた場合、EVの自宅充電によって増える電気代は約2250円となる。これが気になるレベルかどうかは個人の印象によるだろうが、少なくとも筆者は思ったよりも安く済んでいるなと感じているし、電気料金の請求書をみて驚いたこともない。
ガソリン燃費にすると50km/L以上の経済性

現在、ガソリンの価格を下げるべく日本政府から補助金が出ているが、それでもリッターあたり170円を超える小売価格となっているようだ。
レギュラーガソリンの175円/Lとして、1kmあたり3.46円分を消費するとした場合の燃費は50.5km/Lと計算できる。現実的に、これほどの好燃費で走行しているクルマはほとんど存在しないだろう。おそらく同条件で走ったとしてガソリンへの支出と比べると、普通充電による電気代の上昇は半分程度となるはずで、EVにしただけでマイカーのランニングコストについては爆下がりするというのが現実である。
ちなみに、ガソリンにはいわゆる「ガソリン税」がリッターあたり53.8円もかかっている。この税金を除いて上記の計算をすると、346円/100kmで走るFIAT 500eのランニングコストは35.0km/Lのガソリン消費と同等といえる。アクアやヤリスといったHEVのトップランナーを、ほぼカタログスペックで走らせたときと同じくらいの経済性といえそうだ。
余談だが、ガソリン税についての不満があるならば、それが課税されないEVに乗ればいいのにと思ったりもする。
ただし、冒頭で記したような一充電走行距離が600~700kmの大型EVではこれほどの経済性を実現することは難しいだろう。EVのエネルギー消費において、車両重量という物理的な影響は大きいと考えられるからだ。だからこそ、車両重量1360kgとEVとしては軽量な部類のFIAT 500eを選んだのであり、現段階でのランニングコストは、そうした期待に応えてくれている。
ただし気になるのは夏場にエアコンをガンガンに使ったときの電費の変化。例年より暑くなるといった長期予報も出ている2025年の夏、この小さなEVはどんな経済性を見せてくれるのだろうか。折を見てレポートする予定だ。


