連載

GENROQ フェラーリ名鑑

Ferrari SF90 Stradale

システム最高出力はちょうど1000PS

シンプルなリヤのスタイリングだが、ウイング下にはシャットオフガーニーと呼ばれる可変デバイスが装備される。

フェラーリが「SF90ストラダーレ」と呼ばれるニューモデルを発表したのは、2019年5月のこと。同年3月には同じくV型8気筒エンジンをミッドシップする「F8トリブート」が発表されていたが、この両モデルのスタイルを見ると、フェラーリはここで大きくそのデザインコンセプトを変更してきたことが理解できる。つまりフェラーリの新時代は、ここから始まったともいえるのだ。

流麗なラインの組み合わせでシンプルかつ自然な面構成を実現し、キャビンの位置も過去のモデルよりも20mm低く設定することが可能になったSF90のスタイルは、確かに見る者に未来的な印象を抱かせる効果がある。ボディの上面には過激なエアロデバイスは存在しないようにも思えるが、実際にはリヤウイング下にはシャットオフガーニーと呼ばれる可変デバイスが装備され、それによって250km/h走行時に最大390kgのダウンフォースが、後で紹介するアセット・フィオラノ仕様では得られる仕組みだ。

SF90ストラダーレの最大のトピックスは、やはりそのパワートレインにある。それはフェラーリ初のPHEVシステムを搭載したモデルであるからだ。ミッドに搭載されるエンジンは、4.0リッターの排気量が設定されたV型8気筒ツインターボで、それ自身の最高出力は780PS。これに組み合わされる8速DCTとの間に1基のエレクトリック・モーターを、そしてフロントアクスルの左右各々に1基ずつ、すなわちトータルで3基のエレクトリック・モーターを搭載するのが、そのパワーユニットの概要。ちなみにそれぞれのエレクトリック・モーターは、フロントとリヤで合計220PS。システム全体の最高出力はちょうど1000PSとなる計算だ。

「eマネッティーノ」を搭載

もちろんこの1000PSという最高出力は、さまざまな条件が揃った場合にのみ出力される数字だ。SF90ストラダーレの走行モードは、通常のマネッティーノのほか、PHEV化に伴って新たに追加された「eマネッティーノ」をステアリングホイール上の切り替えスイッチで「eドライブ」「ハイブリッド」「パフォーマンス」「クオリファイ」の4つから選ぶことができる。なお1000PSが走りのためにすべて使用されるのはクオリファイのみとなる。

速度が200km/hを大きく超えればエレクトリック・モーターの保護のために、それは機械的にアクスルから切り離される機構も導入されている。一方eドライブモードによるゼロエミッション走行は最大25kmの距離を135km/hの最高速まで楽しむことができる。

1030PS仕様「SF90XXストラダーレ」も

SF90ストラダーレには、スタンダードな仕様と、アセット・フィオラノと呼ばれる、よりスポーツ志向の強いモデルが設定されている。これにはカーボン製のドアパネルやアンダーボディ、チタン製のスプリングや排気システムによって、さらに30kgの軽量化が施されるほか、リヤウイングもハイダウンフォース仕様に、サスペンションにはGT3マシン由来のマルチマチックダンパーなども標準装備される。タイヤにミシュラン製のパイロットスポーツカップ2を選択しているのも、アセット・フィオラノの特徴である。

SF=スクーデリア・フェラーリの創立90周年を意味するネーミングが与えられた、フェラーリ初のPHEVモデル、SF90ストラダーレ。そのバリエーションにはオープントップが楽しめる「SF90スパイダー」の他にも、サーキットからオンロードへと飛び出した、1030PS仕様の「SF90XXストラダーレ」「SF90XXスパイダー」も加わっている。

2019年11月、フェラーリのシリーズモデル・ラインナップに新設定された優美なクーペモデル「ローマ」。

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