目次
静岡名物 バイパス・トラップ!
宿を走り出して数分後、いきなりトラップにかかった。県道の交差点を左折したとたん、目の前に125cc以下進入禁止の標識があらわれた。あわてて路肩に停めたものの、その先にエスケープルートはない。エンジンをとめ、バイクを押して歩行者と化し、さっき曲がったばかりの交差点までよちよち戻ることになった。
現代の125ccがまともにバイパスを走れないと思って通行規制したがる人物がまだ役所のどこかに生き残っていること自体、だいぶどうかしているんだが、せめて交差点の手前に予告標識くらい立てといてくれないもんだろうか。
日本晴れの掛川へ
東海道は島田市内で大井川を渡り、金谷宿をこえて小夜の中山(さよのなかやま)へ。そこから先は掛川市だ。抜けるような青空のもと、掛川城にたどりついた。
たいていの城というものは、戦争用の建造物だ。だからこの掛川城にも血なまぐさい殺戮(さつりく)の歴史がまとわりついている。だが太平洋戦争終結から80年を経た令和の世では、城もすっかり平和ボケしたのか、ひたすら美しく、ひたすらのほほんと青空に映えていた。
浜松で家康くんにめぐり逢う
掛川からさらに西へ。天竜川を渡り、浜松市街に入ったところでフューエルメーターが動いた。ガス欠までの長旅も、ようやく残り半分を切ったようだ。
浜松に来たなら、やはり浜松城を見物しなくてはならない。ギラギラと熱い野望をたぎらせ、天下を望んでいた若かりし日の家康の根城だから、浜松市としても「やらまいか!」(←浜松方言。標準語でいうと「やったろやんけワレ!」の意味)とばかりに家康を担ぎ上げ、「出世大名 家康くん」キャラを全面展開して広報に余念がない。
浜松城を発ち、さらに西へ、浜名湖をめざす。浜名湖東岸の舞坂宿をちらっと眺めて弁天島海浜公園に入り、荷物を下ろしてようやく一息ついた。
数か月前に比べると、浜名湖にも外国人観光客の姿が増え、そこかしこで耳慣れない外国語を聞くようになった。さんざん引っ張りまくった謎の新型コロナ騒動も終わりを告げたのだろう。夕陽がすっかり湖面に落ちきる前にと、ザックを担ぎなおして浜名湖を後にした。
渥美半島の付け根を突っ切る形で国道1号を西に進み、豊橋市内に入る。宿をみつけてバイクを停め、荷を解いた頃にはとっぷりと日が暮れていた。フューエルメーターは残2目盛り、トリップは343.8kmを指している。本日の走行距離は114.1kmだった。