新エンジン、新フレーム、10年ぶりに全てを刷新! インディアン・スカウトの魅力に迫る。

アメリカン・モーターサイクルのパイオニアブランドとして知られている「インディアン」。自転車製造会社として設立されたのは1897年、社名としてインディアンの名を掲げたのは1923年からで、その歴史は裕に1世紀を超えている。今回は10年ぶりのフルモデルチェンジを受けた新型SCOUT発表会の模様をレポート。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●ポラリスジャパン株式会社
筆頭モデルの「101 SCOUT」(左)と同ブランドを象徴する往年の名機、1920年製初代「SCOUT」。

全てが新設計された「スカウト」。今回デビューしたのは全5機種。左から順にSCOUT BOBBER、SCOUT CLASSIC、101 SCOUT、SPORT SCOUT、SUPER SCOUT。

7月11日に開催された発表会

発表会の会場となったのは、川崎キングスカイフロント東急REIホテル内の「TREX KAWASAKI RIVER CAFE」。
「いつものバーンアウト(後輪スピンで煙モクモク)は控えたと」言いながらも元気いっぱいに語るOla Stenegard。

羽田空港近くのおしゃれなカフェを会場にし、まずはメディア関係者を対象に開催された発表会。撮影会やトークショーとパーティ。そして翌日の先行試乗会を組み合わせた2日間の大イベントとなった。発表会ではポラリスジャパン株式会社の藤原裕史代表の挨拶に始まり、ミネソタ州ミネアポリスにあるUS本社から来日したGRANT BESTER副社長、チーフデザイナーのOLA STENEGARD、そして商品開発チームのKYLE GOEDEの3名が登壇し、熱のこもった開発話を披露した。

藤原裕史 代表
Grant Bester
Kyle Goede
今回の発表会にUS本社から来日し新型スカウトのプレゼンテーションを担ったお三方。

まずGRANT BESTER氏は、2011年にポラリスインダストリーズがインディアンブランドを買収し、オリジナルモデルをリリースしてから10年、右肩上がりのシェア拡大を続ける同ブランドの業績を披露。ユーザーはグローバル市場で今や20万人を超え、85カ国に600店を超えるディーラー網を構築。生産工場はアメリカ本国だけではなく、アジア(ベトナム)とヨーロッパ(ポーランド)にも設けられアメリカ以外での販売が40%に及ぶそう。オーナーイベントも積極的に開催され、カスタムを楽しむ人気にも支えられ、過去5年間で事業規模は倍に膨らんだ。こうした成長の牽引力となったのは、スカウトの人気が大きかった。特にアメリカ以外での人気は同ブランドの50%に及ぶと言う。

2014年登場以来、グローバル市場で着実なシャア拡大を果たしている。販売実績は10万台を突破したそう。
各国で開催されるオーナーイベントの盛況ぶりが侮れない人気を物語っている。

開発時のエピソード

新型スカウトに乗って登場したOLA STENEGARD氏はデザインについて解説。開発で大切にしているのは、なるべくシンプルなデザインをキープする。実はそれが難しい。例えばタンクやフェンダーデザインなどがそれで、そこにはカスタムのしやすさにも配慮しているからだと言う。今回の開発には、ユーザーの声を徹底的に調査してスタート、革新ではなく、進化をもたらすことに注力。全てを一新したがスカウトらしさは大切にした。
まずエンジンは完全に新設計。クレイモデルを削って細部まで美しさを追求しクリーンに仕上げた。これをベースに車体のデザインへ移行。離れたところから見た第一印象を大切にし、一目でスカウトであることがわかる「それらしい」デザインにこだわった。タンクからのなだらかなラインは往年のスカウトをモチーフにし、それは他のモデルにも生かされている。またクレイを使って手作業で仕上げていく古典的手法を大切にした。CAD頼りよりプロトタイプを前に肌で実物を感じながら丁寧に仕上げていくことを大切にしたそう。
気持ちとしては50年代前後のアメリカ(の雰囲気)を感にさせるデザインを採用し、徐々に洗練化し今回の5バリエーションに昇華した。仕上げ精度の高さにインディアンのクラフトマンシップを感じられると思う。と、熱く語ってくれた。

10年ぶりのフルモデルチェンジは、外観デザインはもちろん、フレーム等の車体関係から60度Vツインエンジンまで全てを一新、大きな進化を果たしている。

クラフトマンシップに則った手作業を大切にし、じっくりと手間暇かけて開発された。

メインフレームとダウンチューブの流麗なライン、そしてVツインエンジンとの構成は往年の101スカウトに漂う雰囲気をモチーフとしている。
アメリカンモデルらしいデザインを採択。曲面とエッジを効かせたライン構成で組み立てられている。
最終コンセプトのイメージスケッチ、このデザインは、BOBBERやSPORTに反映されていることがわかる。
新開発された水冷横置きのVツインエンジン。Vバンクが60度、動弁系がDOHCの気筒当たり4バルブ、前シリンダーは前方排気、後シリンダーは後方排気である基本構造は従来通りながら、全てが新設計されている。カムシャフトの存在を強調していた軸受部分を隠したヘッドカバーデザインが新鮮。シリンダーボアが5mm拡大されてボア・ストロークは104×73.6mm。よりショートストロークタイプとなっている。燃焼室スペースの拡大に伴い、バルブサイズも大きくなっていることは間違いなく、圧縮比は10,7対1から12.5対1へと高圧縮比化。レブリミットも8,300rpmから8,500rpmまで高められている。
潤滑方式はドライサンプに改められ、Vバンクに挟まれた電子制御式燃料噴射の吸気系スロットルボディはφ60mmからφ63mmに拡大。排気系はスピリットデュアルマフラー方式から2into1タイプに変更されている。総排気量は1133ccから1250ccへと役1割ボリュームアップ。結果として最高出力は79kW/7,250rpmへと17%もパワーアップ。最大トルクも12%向上の108Nm/6,300rpmを発揮する。なおクラッチにはバックトルクを制御するスリッパータイプを採用。6速ミッションのギアレシオは共通ながら、ベルトドライブの2次変速はドライブ側が29歯から28歯へ、少し低められ、パワーアップされたエンジンと共により俊敏なスロットルレスポンスが狙われており、スポーティなハイパフォーマンスの発揮も期待できるのである。
オールニューエンジンの右サイド。
Vバンクに挟まれた中央上部にメインスイッチがある。

クレイモデル制作を経て外観の造形も全てが一新されている。水冷の横置きVツイン。バンク角の60度と気筒当たり4バルブDOHCの基本構造は踏襲されている。

ボアサイズが5mm拡大され総排気量は約1割upの1250cc、パワートルク共にパフォーマンスは大幅に増強。レブリミットも8,500rpmに高められた。

最後にプロダクトマネージャーのKYLE GOEDE氏が語る。開発にはスタイルの作り込みとライダーと一体化することに注力。スカウトを進化させることでさらに人気を高めることを狙った。象徴的なアメリカンスタイルにこだわり、美しいフレームの中にラジエターをコンパクトに納めた。どこを見ても手を抜かない仕上げを果たしたと強調する。今回5機種をリリースしたが、近い将来6機種目の新型も準備しているそう。低めのシートが基本。しかしそのライディングポジションはハンドルやステップの組み合わせで30種を超えるカスタム、つまり自分好みに変えられる。また優れたメンテナンス性も追求。そしてフラットな出力特性は、ライダーが予測のできる扱いやすいレスポンスを誇る。その一方でスポーツモードを楽しむことも可能としている。また5機種それぞれ、キャラクターに合わせた機能的な作り込みを果たす。カラーリングも豊富に揃えられていると言う。

ボバーはスタンダードの196万円〜、最上級の101スカウトは268万円也。

代表的プレミアムモデルの101 SCOUT。
前後16インチホイールのSCOUT BOBBER。
スポークホイールを履くSCOUT CLASSICは201万円〜。

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同ブランドを象徴する往年の101 SCOUT

戦前まで栄えたアメリカン・バイクブランドの象徴的モデルとして知られている。

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…