エンジン名はシェルパ450、同社初の水冷。ロイヤルエンフィールドの話題作、ゲリラ450 海外試乗記

話題の450ccミドルバイク、ロイヤルエンフィールド・ゲリラ450。一足早く、海外で乗ってきました。

REPORT●鈴木大五郎(SUZUKI Daigoro)
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イギリス発祥のブランド。ロイヤルエンフィールドは120年もの歴史を持つ伝統的ブランドである。現在では、インドの企業がブランドを有し、同国内で生産を行っているのであるが、ここ10年ほどでブランドの規模は大きく成長。年間90万台ものマシンを販売している巨大モーターサイクルカンパニーとなっている。いっぽうで、長らく生産してきた過去の遺産的マシンの印象が強かったせいか、技術的にも実際のマシン的にも一昔も二昔も前のモデルを売っているブランド……と認識されがちな側面もあった。

しかし時代は変わったということを認識しなければならない。

これまで、同社のいくつかのモデルをテストしているが、そういった先入観を大きく覆されるポテンシャルを有していることに驚かされた。販売されるモデルが350cc〜650ccというミドルクラスに集約されているといったことや、クラシカルなスタイリング。シンプルな装備類が余計、その印象を強めていたのであると思われるが、現在のロイヤルエンフィールドは、過去の栄光にしがみついたブランドではまったくないことがわかるのである。

そんなロイヤルエンフィールドに新たに加わったのがゲリラ450である。

世界戦略を狙う同モデルの発表会はスペイン・バルセロナで盛大に行われた。

これまでのクラシックなイメージを色濃く残したモデルとは異なり、スクランブラーを思わせるモダンなデザインとされたゲリラ450は、同社にとって非常に意欲的なマシンであるといえるだろう。シンプルながらオリジナリティ溢れるスタイリング。強い個性はないものの、様々な趣向のライダー、そしてシーンに溶け込むマシンとなっている。

450ccのシングルマシンということをイメージすればボリューム感があるが、小さ過ぎない使い勝手の良さそうなサイズといえるだろう。

ライディングポジションは非常にオーソドックスなネイキッドマシンのもの。特段足つき性が良いわけではないものの、走行時のコントロール性をより重視した設定となっている。

シェルパ450と呼ばれるシングルエンジンは、同社として初の水冷エンジンであるという。先にデビューしたヒマラヤ450に搭載されたものと中身は同じであるとのことだが、セットアップは異なり、ゲリラ専用の味付けが施されているという。

エンジンを始動し、バルセロナの街に繰り出す。

シングルエンジンらしいトルクフルさとともに、シャープに吹け上がっていくパワフルさにちょっと意表を突かれる。

ロイヤルエンフィールドのマシンはいわゆるハイパフォーマンスを売りにはしていない。どんなシチュエーションにも相性の良いエンジン特性が身上であるが、良い意味でモサっとした吹け上がりもそのキャラクター作りに一役買っている。

しかしゲリラ450はなかなかにスポーティではじめは自分のイメージとのギャップを感じるものであった。しかししばらく走らせると、そのリニアさとパワフルさがファンな部分を多く提供してくれていることがわかる。意のままにといった表現がピッタリのコントロール性。スポーティさがライディングの楽しさを引き立てる。コンパクトな車体がさらに手の内に入ったかのようなフィーリングとなっており、走ることに積極的になれる。

この設定も含めて、既存のロイヤルエンフィールドのイメージから脱却した新しい世界観をもったマシンと考えることができる。

もちろん、多くのライダーがロイヤルエンフィールドにイメージする、より牧歌的な乗り味を求めるのであれば、採用されたライディングモードでエコモードを選択すれば、のほほんとした世界観を味わうことも可能となる。

40馬力の出力を持つDOHC単気筒エンジンは余裕をもって設計されているようで、むりやりパワーを絞り出したといったガツガツしたフィーリングは皆無である。トルクやパワー、重量等、様々なバランスを考慮した結果、450ccという排気量に行き着いたのであろう。

単気筒エンジンと一口にいっても、実はさまざまなキャラクターのものが存在する。多くのライダーが想像する鼓動感やトルク、味わいを重視したものもある一方で、スポーティさを売りとした高回転重視の特性のものも。排気量の大きいシングルエンジンはとくに、ややクセがあるというのが魅力の一因にもなっているのだが、シェルパ450エンジンは嫌な振動やクセがないにもかかわらず、味気ないといった個性のなさも感じさせない。トルクフルなうえで、しっかり上も使えるし、アクセル操作に対してのギクシャク感も少ない。長らく単気筒エンジンに携わってきた経験値をベースに、さらなる研究を重ねて作られたものだと感じられた。

スペック的に目を見張るようなものがないとはいえ、動力的に必要十分なのはもちろん、想像以上にライディングを楽しめるパッケージングとなっている。

 車体周りは重量はそこそこあるものの、走り出すと単気筒マシンならではの軽さが印象的である。しかし、贅肉をすべてそぎ落としたライトウェイトスポーツといった趣きではなく、しっかりとした剛性感に頼もしさもおぼえる。

スポーツライディングに的を絞れば、軽さは確かに正義である。

しかし、のんびり走らせたりタンデムしたりといった状況では、ある程度の重さやしっかり感は歓迎すべき点でもあり、ツーリングシーンでも光るべき性能であるといえるだろう。そのうえで十分過ぎるほど軽快であるし、軽すぎないパッケージによる手応えや安心感を提供してくれる。

前後の足回りにはSHOWA製を採用。最低限の機能だけを持たせていた同社の過去のモデルとは異なり、プラスαの性能を備えていて走りに妥協がないことがわかる。

スイスイと軽やかなハンドリングで日常的走行からワインディングでのちょっと攻めた走りまで、過不足なくカバーするポテンシャル。オーソドックスなバイクらしさのなかに、しっかりとスポーツマインドが宿っていると感じられた。

我が国においては、排気量にこだわることのない玄人好みといったマシンといった評価がされる可能性があるが、その実ビギナーにもおすすめできるパッケージングとなっているのは、同社の掲げる「ピュア・モーターサイクル」という理想を突き詰めた結果であるだろう。ピンポイントの楽しさではなく、様々な状況を想定したなかで最適なマシンを作るという難題をクリアできたのは、1モデルでの生産台数の多さを実感している同社ならではなのかもしれない。

侮れないどころか、多くのメーカーにとって脅威にもなるであろうマシンに仕上がっていたのである。

足つき性

シート高は780mm。幅広いライダーに向けたマシンということを考えると、やみくもに低められているわけではないと感じられるが、これが高い走破性にもつながっている。シングルマシンとしては華奢過ぎず、しっかりとした手応えの車格。11リットルの容量を持つ燃料タンクもスリム過ぎず、走行中のホールド性も良好。そのうえで、十分軽量で取っ付きやすいマシンとなっている。アップライトでオーソドックスなライポジは汎用性が高く、シングルマシンに求められる気軽さや使い勝手だけでなく、ディープにも操れる素性を持つ。

ディテール解説

シェルパ450と命名された水冷DOHC4バルブエンジンは排気量452ccで40馬力を8000rpmで発揮。先に発売されたヒマラヤ450とエンジン本体は共通だが、出力特性は専用にセットアップ。侮れないシャープさとパワフルさを味わえるいっぽうで、ライディングモードを備え、トコトコとのんびりしたキャラクターを楽しむことも可能。

エンジン前部にはエンジンガードを備える。悪路も多いインドの道路事情に対応したものと思われる。

エキゾースト周りはヒマラヤ450と共通。スポーティなアルミサイレンサーが特徴的。鼓動感を残しつつ、しっかり消音されているだけでなく、エンジンノイズの少ない静粛性も印象的である。

足まわりには前後SHOWA製を採用。リヤショックはリンク式でプリロード調整が可能。乗り心地やスポーツ走行時の踏ん張り感など、価格は抑えながらも妥協しないマシン作りの方針がうかがえる。

ヘッドライトを含むライト類はすべてLED製。ヘッドライトカバーはオプション品となり、様々なオプションパーツがラインナップされる。カスタムが楽しめるのはシンプルなシングルマシンならではで、メーカーもそれを後押しする。

シンプルで一見クラシックなデザインの丸型メーターであるが、スマートフォンと連携した多彩な機能を備える。この分野で先進国といえるインドならではといえる装備。グーグルマップのナビ機能も液晶に表示することが可能。

主要諸元

全長×全幅×全高:2090×833×1125mm
ホイールベース:1440mm
最低地上高:169mm
シート高:780mm
車両重量:185kg
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ単気筒
総排気量:452cc
ボア×ストローク:84×81.5mm
圧縮比:11.5
最高出力:29.44kW(40.02PS)/8000rpm
最大トルク:40N・m/5500rpm
燃料タンク容量:11L
変速機形式:6速
キャスター角:NA
トレール量:NA
ブレーキ形式(前・後):Φ310mmディスク・Φ270mmディスク
タイヤサイズ(前・後):120/70 R17・160/60 R17
燃料消費率 WMTCモード値:NA
生産国:インド

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