この激レアカブ、第27回カフェカブミーティングin青山で見かけた1台です。

カブF型(1952年)

全国約5000店の自転車店での販売という独創的な販売網戦略によって、月産1万台以上ものヒットとなったカブF型は、車両としてのモデルではなく、自転車の後輪にエンジンを装着する仕組みでした。始動するには、左側にあるレバーを操作して、自転車と同じようにペダルをこいでまずは走り出します。ある程度スピードが出てきたところで左手のレバーを放します。そうすると軽やかな排気音とともに2サイクル単気筒エンジンが始動。しばらくはペダルと併用で走り、エンジンでの走行がスタートしたところで右側のスロットルレバーを操作して加速させるという仕組みです。自動遠心クラッチで操作が簡単なのがスーパーカブの大きな特徴ですが、カブF型エンジンに関しては、エンジンをかけるのもひと苦労といった印象です。そんなカブF型を1年ほどかけてコツコツとレストアしたのがこのモデルです。当時の姿を再現すると同時に、小型ウインカーランプなどを装備して、現状に合わせて走行できるようにしている点も大きな特色です。
カブF型は自転車用の補助エンジンとして開発された。したがって、このモデルのように当時の一般的な自転車に装着するのがスタンダードなスタイルだった
カブF型エンジンは50cc空冷2サイクル単気筒。3500回転で1馬力を発生する性能だ。重量はエンジン単体で6kg。当時の価格は25000円となっていた
ハンドルは昔ながらの自転車。そこにスロットルレバー、チョークレバー(右)とクラッチ&デコンプレバー(左)が取り付けられる。ウインカーはオーナーが装着
大きな荷台に柳行李を載せた風情は、まるで昭和の行商スタイル。なんだか味わいがあってホッとさせられる

日研カブスター(1953年?)

1952年に発売されたカブF型は、車両ではなくエンジン回りのパーツを販売したものです。そのエンジンを自転車に取り付けて走るというスタイルです。しかし、独自の車体にカブF型エンジンを搭載して完成車として販売されたモデルもありました。それが日研工業が生産販売していたカブスターです。
今回のカフェカブミーティングの参加車両でもっともレアなモデルだったので、注目度は抜群。日研工業が独自に製造したフレームにカブF型エンジンを搭載し、鉄製のボディカバーで覆ったスタイルは、ペダルを装備したスクーターといった感じ。腕木式方向指示器がなんとも時代を感じさせていて、見ているだけで心が和みます。当然のことながら部品などの入手は困難で、オーナーは苦労してレストアしただろうことは想像に難くありません。いずれにしても、数あるカブの中でも激レアなモデルであるのは事実です。
ペダルは付いているが、全体のボディスタイルは当時のラビットのようなスクーター然としている。なんともクラシカルで趣がある
日研工業がカブF型のエンジンをオリジナルのボディに取り付けて販売されていたのがカブスターだ
オリジナルのスチールフレームにカブF型エンジンを装着。さらに鉄製のボディカバーをかぶせている
1950年代には、自動車もバスもこのような腕木式方向指示器が使われていた。このカブスターにもオーナー自らがアポロ製腕木式方向指示器を装着。ランプも内蔵している

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著者プロフィール

栗栖国安 近影

栗栖国安

TV局や新聞社のプレスライダー、メーカー広告のモデルライダー経験を持つバイクジャーナリスト。およそ40…