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見た目にやさしく、飽きの来ないスタイリング
スチールモノコックボディや片持ちリンクアームフロントサスペンションなど独自のシステムを構築したベスパですが、スクーターの王道ともいえるスタイリングデザインを継承しているところにも老舗メーカーとしてのプライドを感じます。とはいえ、昔のモデルとまったく同じスタイルというわけじゃありません。現代風にモダンなデザインを取り入れた、いわばレトロモダンなスタイリングとしているのが特徴です。
車高はあるが全体にコンパクトなボディは取り回し性がいい
小型二輪スクーターながらボディはコンパクトで威圧感はまったく受けません。フロアもステップスルースタイルなので乗り降りしやすいのも好印象です。座面の大きいシートに腰を下ろすと、クッションは割と硬めですが安定感のある座り心地なのでけっこう快適です。シート高は790㎜ですが、数値から想像するより足は着けにくいと感じました。内腿にボディが当たるため足が開き気味になってしまうからだと思います。しかしながら車重が163㎏に抑えられているので、不安を覚えることはありません。ちなみにこの車重は、250㏄クラスの日本製スクーターより20㎏ほど軽い数値です。ハンドルの切れ角も大きいので、取り回し性はいいと思いました。
足つき性チェック(ライダー身長179cm)
中高回転域で伸びの良いエンジンはスポーティな市街地走行性を発揮
スタートしてまずは低速で走らせてみました。排気量278㏄のHPE4ストローク水冷単気筒エンジンの性能は、日本製250㏄スクーターのエンジンよりわずかにハイスペック。なのでトルクフルなエンジン特性でグイグイ加速するのかなと思っていました。しかし実際には、極低速では強いトルク感は伝わってきませんでした。エンジン回転の上がり方も緩やかで、スムーズさだけが強調されたようなエンジン特性だと感じました。ところが回転が上昇するに従いパワーが盛り上がり、このエンジン本来の性能が頭角を現します。アクセルにリニアに反応し要求どおりの加速をしてくれるので扱いやすく、しかもスピーディに走ることができます。今回は高速道路を走行しませんでしたが、100㎞/hクルージングは余裕でできると思います。5250回転で最大トルクを発生する特性なので、できることなら極低速からトルク感のある走りをしてほしいと思いましたが、全体的には市街地での走行にも頼れるエンジン性能を実現していると感じました。
低速でも安定感のある走行性が親しみやすさを与えてくれる
小径タイヤを履くスクーターでは安定性に不安を感じることもありました。しかし小型二輪クラスのこのモデルでは、低速でフラツクこともなく高い直進安定性を実現しています。Uターンなど低速での方向転換も無理なくできますし、ある程度スピードが出てくればハンドリングはさらに素直でニュートラルになります。サスペンションのストローク量は決して大きくありませんが、細かなギャップに対してもしっかり吸収してくれていたので、安定した走行ができました。
」たとえばワインディングをよりハードに走ろうとした場合には、サスペンションの吸収性は追いつかないでしょうし、狙いどおりのコーナリングラインに乗せることができなくなるかもしれません。GTSはあくまでもコミューターとして高い能力を発揮してくれ、快適なツーリングも約束してくれるスクーターです。スポーツライディングを強要したいのなら、そうした用途に合ったバイクやスクーターを選択すればいいのです。スムーズな操作で安全に走る、そんなジェントルな扱いがレトロモダンなベスパGTS Super Sport300には合っていると感じました。
伝統的なスタイルでベスパらしさをアピールしながらも、最新のテクノロジーを導入して現代感覚にマッチさせているのも魅力のひとつです。スマートキーシステムはそのひとつですし、さらにBluetoothによってスマートフォンをGTSに接続するVespa MIAアプリがオプション装備されています。これによりツーリング時の走行データにアクセスできまた、ハンドルバーから手を離すことなく通話の発着信、メッセージの受信、プレイリストの管理が可能になるということです。こうした最新技術を活用すれば、さらに利便性が高まります。
小型二輪なので車検が必要など面倒なところもありますが、裏を返せば、車検時にしっかりと整備することで安心して乗り続けることができるのも事実です。世界的なブランドであるベスパの上級モデルをさっそうと乗りこなす。そんな大人のライダーを目指してみるのもいいんじゃないでしょうか。
主要諸元
エンジン形式:HPE 4ストローク水冷単気筒SOHC 4バルブ |
総排気量: 278 cc |
最高出力: 23.8 HP(17.5 kW) / 8,250 rpm |
最大トルク:26 Nm / 5,250 rpm |
燃料システム:電子制御式燃料噴射システム |
トランスミッション:オートマチック(CVT) |
クラッチ:自動無段階変速自動遠心クラッチ |
フレーム:スチール製モノコックボディ |
フロントサスペンション:片持ちリンクアーム油圧式サスペンション |
リアサスペンション:油圧式ツインショックアブソーバー |
4段階スプリングプリロード調整機構付き |
フロントブレーキ:油圧式 220mm ディスクブレーキ ABS |
リアブレーキ:油圧式 220mm ディスクブレーキ ABS |
フロントタイヤ:120 / 70-12” |
リアタイヤ:130 / 70-12″ |
全長 / 全幅:1,980 mm / 765 mm |
ホイールベース :1,380 mm |
シート高:790 mm |
燃料タンク容量:8.5 ℓ |
車両重量:※ 163 kg |
※走行可能状態(燃料は90%搭載時) |
生産国:ベトナム |