1800ccのラグジュアリーすぎるバイク、BMW・R18 B/トランスコンチネンタル試乗

BMW史上最大の水平対向2気筒エンジンを搭載したヘリテージクルーザー「R18」に本格派ツアラーモデルが追加された。ただの派生モデルとはひと味違う、独自の個性と走りの魅力を持ったモデルである。

REPORT●ケニー佐川(SAGAWA Kentaro)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

BMW・R 18 B……341万8500円~(消費税込)

BMW・R 18 Transcontinental……403万2000円〜(消費税込)

フラットツインの原点となった1936年製R5をオマージュして2020年に登場したR18は、史上最大の水平対向2気筒エンジンを搭載したヘリテージクルーザーとして誕生した。コンセプトは原点回帰。ブラックペイント、ティアドロップタンク、ダブルクレードルフレーム、ボクサーエンジン、オープンシャフトドライブという5つの象徴的な特徴を現代に再現したモデルだった。その派生モデルとして「バガー」と「クラシック」が続き、今回ついに本格派ツーリングモデルとしての「B」と「トランスコンチネンタル」(以下TC)がラインナップに加わったのだ。

両モデルの違いだが、軽快なバガースタイルの「B」に対し、より防風効果の高いハイスクリーンとバックレストを兼ねた大型トップケースを備えた大陸横断ツアラーの「TC」という位置づけだ。カウル内には英国の音響機器の名門、マーシャル製スピーカーシステムを装備。コーナリングライトに加え日本初導入となるDRL (デイタイム・ランニング・ライト) が標準装備となった 。また、タンデムや荷物積載による沈み込みを自動調整するオートレベリングを搭載。さらにACC(アクティブ・クルーズ・コントロール)も採用されるなど高速走行における安全性と快適性も高められている。カラーは3色で、限定仕様のファーストエディションにはブラックボディにホワイトピンストライプが入る。

ライディングポジション

BMW・R 18 B
BMW・R 18 Transcontinental

車体後方にゆったりと腰掛けるクルーザースタイルのライポジ。R18に比べるとハンドル位置が近く自然に腕を伸ばせる。シート高は720mmとR18に比べると30mm高いものの、写真のとおり足着きの良さは抜群。ステップもミッドコントロールのため真下に足を着きやすい。BとTCではライポジは変わらない。

プロペラのない飛行機のような浮遊感

一見するとR18ベースのツアラーといった感じ。だが、いろいろなパーツをテンコ盛りしただけと思ったら大間違い。実は今回の2つの新型モデルは開発コードが切り替わっている。エンジンこそスタンダードのR18と共通だが、フレームからサスペンション、車体各部のディメンションまでほぼすべてを見直しているのだ。

TCから試乗したが、フラットツインの低重心のおかげか、その巨体の割に取り回しは楽。路面に傾斜があると車重440kgはさすがに動かせないが、そんなときのために電動リバースギアが付いている。いざというときは、スイッチひとつで跨ったままでもバックできるので安心だ。ライポジも大柄ではあるがR18に比べるとハンドルはやや近め。16Lから24Lへと増量されたタンク形状によりニーグリップもしやすくなっている。

排気量1800ccを誇るビッグボクサーはまさにトルクの塊で、ほぼアイドリング回転数のまま6速トップギアで走れてしまうほど。最も気持ちいいのは3000rpm前後で、骨太な鼓動感に包まれながら溢れ出るトルクの波に乗って流しているときだ。サスペンションもストローク感があって乗り心地は上質で優雅。水平方向にシリンダーが飛び出したビッグボクサーにはヤジロベエ的な安定感があり、どこかプロペラのない飛行機に乗っているような不思議な浮遊感がある。メイン市場は北米向けとのことだが、これで彼の地のフリーウェイを流したらさぞかし最高の気分だろうと思った。ちなみにライディングモードは「レイン」、「ロール」、「ロック」の3種類あって、呼び名もユニークだが実際に最もアグレッシブなロックでは一段と高鳴る迫力のサウンドとともにダイナミックな走りが楽しめる。

巨大なのにスポーティ、Uターンもしやすい

BMW・R 18 B
BMW・R 18 Transcontinental

ハンドリングもアップデートされた。今回、BおよびTCはステアリングをあえて逆オフセット形状とし、フォーク角に対してキャスター角を立ち上げたスランテッドタイプとするなどの工夫により、R18よりも軽快で曲がりやすい特性に仕立ててある。ホイールベースが36mm短くなったことも奏功していると思うが、縦置きクランクの利点を生かして倒し込みも軽やか。バンク角も深く、試乗時のウェット路面では車体のどこも擦ることはなかった。そして低速でも扱いやすい。交差点を曲がるような場合でもクルーザーにありがちなガクッとハンドルが切れ込むようなクセもなく、Uターンでも図太いトルクとフラットツインならではの低重心によって抜群の安定感だった。車重とサイズへの慣れは必要だが、とても素直なハンドリングが印象的だった。

そして、速度が上がるにつれ大型フロントカウルが威力を発揮。当日の冷たい雨の中でもほとんど濡れないし、標準装備のグリップ&シートヒーターはとても有難かった。コックピットも斬新だ。ワイドサイズのTFTディスプレイの上に並んだアナログ4連メーターはBMWのスポーティセダンのようでクール。カウル内側に埋め込まれたマーシャル製のスピーカーが奏でる高品質なサウンドがラグジュアリーな旅へと誘ってくれる。

一方のBはというと、ショートスクリーンのおかげで視界が良く、車重もトップケースがない分30kgほど軽いため乗り味も明らかに軽快。相対的にフロント荷重が高めなのでハンドリングも応答性が高く、よりスポーティな走りが楽しめるなど、僅かではあるが個性の違いが垣間見られた。

BMWの神髄でもある究極のフラットツインの魅力を存分に堪能できるのが、このシリーズの最大の魅力ではないだろうか。加えてBMWならではのスポーティな走りの世界観が光る超豪華クルーザーである。

ディテール解説

通称ビッグボクサーと呼ばれるBMW史上最大排気量1801ccを誇るフラットツインは空冷OHVの伝統的なレイアウトを採用。3000rpmで最大トルク158Nmを発生する極太低速トルクが持ち味だ。(写真はBMW・R 18 B)
R18とは異なるデザインの前後19/16インチキャストホイールを採用。ブレーキは前後φ300mmトリプルディスクに前後連動のフルインテグラルABSを採用するなど万全の制動力を実現。(写真はBMW・R 18 B)
空気を押しのける盾のようなデザイン。LEDヘッドライトの光の輪がDRLで、この部分が回転してコーナーの先を照らす仕組み。その上部にある黒い箱のようなパーツがACCのレーダーセンサー。TCにはLEDサブランプが標準装備。(写真はBMW・R 18 Transcontinental)
スクリーンが低くカットされフォグランプも省略されるなどシンプルな作りになっている。(写真はBMW・R 18 B)
TFTワイドディスプレイの上にアナログ4連メーターを装備。一番右のパワーリザーブメーターはグループ企業のロールスロイス製で予備の駆動力を表示。上り坂でのパワーの余裕や加速力を予測するのに役立つ。(写真はBMW・R 18 B)
各種デバイスは左グリップ手元で操作。走行モードやメニュー画面、ACC、補助ライトの他、BMWではお馴染みのジョグダイヤル式コントローラーで素早く設定変更が可能だ。(写真はBMW・R 18 Transcontinental)
タンク上にはフラップ付きのスマホケースを装備。USB電源から充電可能で、換気機能により夏場でもオーバーヒートを心配することなく使える。(写真はBMW・R 18 B)
座り心地の良さ抜群のシート。日本向けは720mmが標準仕様となる。Bには740mmのコンフォートシート、TCには740mmのスタンダードシートと760mmのコンフォートハイシートを用意。(写真はBMW・R 18 B)
Bには防水性の上部開閉式27Lサイドケースを標準装備。(写真はBMW・R 18 B)
TCはサイドケースに加えて48Lトップケースが装備される。(写真はBMW・R 18 Transcontinental)
フロントカウル内の両サイド部にマーシャル製スピーカー2個を標準装備。工場オプションにてBにはパニア上部に2個、TCにはトップケースとパニアに計4個増設できる。(写真はBMW・R 18 Transcontinental)

BMW・R 18 B

●エンジン
型式:空油冷2気筒4ストロークボクサーエンジン/2本のカムシャフトはドライブシャフト上のチェーンにより駆動
ボア x ストローク:107.1 mm x 100 mm
出力:1801 cc
最高出力:67 kW (91 PS) at 4,750 rpm
最大トルク:158 Nm at 3,000 rpm
圧縮比:9.6:1
点火 / 噴射制御:電子制御インジェクション
エミッションコントロール:三元触媒コンバータ

●マイレージ
最高速度:180 km/h
WMTCに基づく1L当たり燃料消費:17.24km/L
燃料タイプ:無鉛プレミアムガソリン(ハイオク) (エタノール15 %以下、E15) 95 ROZ/RON・90 AKI

●電装関係
オルタネーター:660 W
バッテリー:12 V / 26 Ah、メンテナンスフリー

●パワートランスミッション
クラッチ:乾式単板クラッチ
ギアボックス:常時嚙合式 6段リターン
セカンドドライブ:ドライブシャフト

●車体・サスペンション
フレーム:ダブルクレードルスチールフレーム、ボルト固定されたダウンチューブ付き
フロントサスペンション:テレスコピックフォーク
リアサスペンション:スチール製ダブルアームスイングアーム、コイルスプリング付きセンタースプリングストラット、電子油圧制御式スプリングプリロード(自動走行状態補正付き)
サスペンションストローク、フロント/リア:120 mm / 120 mm
軸距:1,700 mm
キャスター:183.5 mm
ステアリングヘッド角度:62.7°
ホイール:アルミキャストホイール
リム、フロント:3.5" x 19"
リム、リア:5.0" x 16"
タイヤ、フロント:120/70 R19
タイヤ、リア:180/65 B16
ブレーキ、フロント:ダブルディスクブレーキ、直径300 mm、4 ピストンブレーキキャリパー
ブレーキ、リア:シングルディスクブレーキ、直径300 mm、4 ピストンブレーキキャリパー
ABS:BMW Motorrad フルインテグラルABS(フルインテグラル機能は前後一方へのブレーキ操作時に前後連動致します)

●寸法・重量
シート高:720 mm
インナーレッグ曲線:1,700 mm
燃料タンク容量:約24 L
リザーブ容量:約4 L
全長:2,560 mm
全高(ミラーを除く):1,400 mm
全幅(ミラーを含む):970 mm
車両重量
 398 kg(DIN 空車時、走行可能状態、燃料満載時の90 %、オプション非装備)
 410 kg(日本国内国土交通省届け出値、燃料100%時)
許容車両総重量:630 kg
最大積載荷重(標準装備時):232 kg

BMW・R 18 Transcontinental主要諸元

●エンジン
型式:空油冷2気筒4ストロークボクサーエンジン/2本のカムシャフトはドライブシャフト上のチェーンにより駆動
ボア x ストローク:107.1 mm x 100 mm
出力:1801 cc
最高出力:67 kW (91PS) at 4,750 rpm
最大トルク:158 Nm at 3,000 rpm
圧縮比:9.6:1
混合比調整:電子制御インジェクション
エミッションコントロール:三元触媒コンバータ

●マイレージ
最高速度:180 km/h
WMTCに基づく1L当たり燃料消費:17.24km/L
燃料タイプ:無鉛プレミアムガソリン(ハイオク) (エタノール15 %以下、E15) 95 ROZ/RON・90 AKI

●電装関係
オルタネーター:660 W
バッテリー:12 V / 26 Ah、メンテナンスフリー

●パワートランスミッション
クラッチ:乾式単板クラッチ
ギアボックス:常時嚙合式 6段リターン
セカンドドライブ:ドライブシャフト

●車体・サスペンション
フレーム:ダブルクレードルスチールフレーム、ボルト固定されたダウンチューブ付き
フロントサスペンション:テレスコピックフォーク
リアサスペンション:
 スチール製ダブルアームスイングアーム
 コイルスプリング付きセンタースプリングストラット
 電子油圧制御式スプリングプリロード(自動走行状態補正付き)
サスペンションストローク、フロント/リア:120 mm / 120 mm
軸距:1,720 mm
キャスター:183.5 mm
ステアリングヘッド角度:62.7°
ホイール:アルミキャストホイール
リム、フロント:3.5" x 19"
リム、リア:5.0" x 16"
タイヤ、フロント:120/70 R19
タイヤ、リア:180/65 B16
ブレーキ、フロント:ダブルディスクブレーキ、直径300 mm、4 ピストンブレーキキャリパー
ブレーキ、リア:シングルディスクブレーキ、直径300 mm、4 ピストンブレーキキャリパー
ABS:BMW Motorrad フルインテグラルABS(フルインテグラル機能は前後一方へのブレーキ操作時に前後連動致します)

●寸法・重量
シート高:720 mm
インナーレッグ曲線:1,700 mm
燃料タンク容量:約24 L
リザーブ容量:約4L
全長:2,650 mm
全高(ミラーを除く):1,500 mm
全幅(ミラーを含む):970 mm
車両重量:
 427 kg(DIN 空車時、走行可能状態、燃料満載時の90 %、オプション非装備)
 440 kg(日本国内国土交通省届け出値、燃料100%時)
許容車両総重量:630 kg
最大積載荷重(標準装備時):203 kg

キーワードで検索する

著者プロフィール

ケニー佐川 近影

ケニー佐川