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スーパーカブのメンテナンス2回目はタイヤだ。そもそもバイクは2本のタイヤで走る・曲がる・止まるを支えている。タイヤが2本しかないということは、路面と接地している面積は名刺1枚分あるかどうか。もしここが摩耗していたり年数を経て硬化していたら、どうなるかは簡単にご想像いただけよう。そこで今回はタイヤのメンテナンスを紹介したい。
タイヤの状態を確認するには路面と接するトレッドにあるスリップサインを見ることから始める。例えば縦になっている溝の中で一段低い位置に横へ繋がる部分があるはず。これがスリップサインで、周囲のトレッドがこの位置まで摩耗していたら交換時期ということ。また、スリップサインまで摩耗していなくてもタイヤが古くて硬化している場合もある。手で潰すようにした感触で判断できるはずだ。さらに今回のように硬化を放置していたバイクだとサイドウォールにひび割れが発生する。こうなっていたら問答無用でタイヤを交換すべし!なのだ。
タイヤ交換と聞いて敷居が高いと感じるかもしれない。けれどスーパーカブのタイヤは細いので自転車のタイヤ交換をしたことがある人なら問題なく作業できる。センタースタンドをかけた状態にして、フロントフォークから出ているボトムリンクで固定されているナットを外す。するとホイールを支えるアクスルシャフトを引き抜くことができる。するとタイヤはホイールごと車体から外れてくれる。ホイールからタイヤを外すにはタイヤレバーと呼ばれる写真左に写っている2本のレバーを使う。まずタイヤからエアを抜き、ホイールとの間にレバーをこじ入れる。もう1本のレバーを10センチくらい間隔を空けた場所へこじ入れ、ホイールからタイヤのビード(ホイール内に入っているタイヤの端)をめくり出す。これを順繰りに行うことでタイヤが外れるのだ。
スポークタイプなら露出したホイールリムにリムバンドと呼ばれるゴムの輪が入っている。これを取るとリムに固定されているスポークのボルトが見えるはずだ。この部分は水が侵入することでサビが発生していることが多い。今回も数カ所でサビが確認できた。
リムにできたサビは潤滑剤などをスプレーしてワイヤーブラシで落としていく。すると黒い部分が出てくるので、そこへサビ止めのスプレーを吹くなどして再発を予防する。タイヤを組み込む前にリムバンドをホイールへはめておこう。リムバンドはタイヤの内部でふくらむチューブとスポーク用ボルトが当たってパンクしないための部品。タイヤを交換するなら同時に新品へ交換しておこう。
フロントタイヤを新品にする
ホイール側が準備できたら新品のタイヤとチューブを用意する。軽くチューブにエアを入れてから作業するとやりやすいだろう。タイヤをホイールへ組み込む前にエアバルブをホイールの穴に差し入れ、位置決めをしてからタイヤをはめよう。
カブのタイヤは細いから、力技でホイールへ組んでしまうこともできる。けれど、誰だって新品タイヤに傷を付けたくはないはずだ。そこでタイヤを組む前にビード部分へワックスを塗る。ビードワックスは数百円で売っており、一個あるとずいぶん長持ちするので、買っておいて損はない。ビード全体に塗布すると、ホイールとの当たり面を潤滑してくれるのでスムーズにタイヤを組んでいける。タイヤを組むコツはタイヤレバーでビードをリムへ落とし込むようにすること。すると後は手でも組み込めるようになる。
ホイールへタイヤを組み込めたら、ボトムリンク周辺やアクスルシャフトを清掃してから車体へ戻す。シャフトを留めるナットに凹凸があるのは、シャフト先端に空いている穴へ割りピンを入れるため。ナットが緩んでシャフトが抜けないようにする部品なので、割りピンも必ず新品に交換しよう。ところでこの写真、決定的な間違いがある。何かといえばタイヤのサイドにある黄色い丸印。ここがエアバルブの位置にないとタイヤのバランスが取れないのだ。ということでこの後、タイヤをもう一度外してエアを抜き、タイヤをズラすことになってしまった……。
リヤタイヤも交換すべし!
今回用いたスーパーカブのリヤには、なぜかスタッドレスタイヤが装着されていた。こちらもサイドウォールがひび割れ、相当に使い古されたものだとわかるので、問答無用で新品へ交換だ。作業方法はフロントと同じで、チェーンの張り調整用アジャスターごと固定してあるナットを外してアクスルシャフトを引き抜く。さらにリヤブレーキパネルに固定されているトルクロッドを外して、リヤブレーキ調整用のロッドも外す。これでホイールが車体から外れてくれるので、タイヤを新品に交換するのだ。
ちなみにスーパーカブのリヤホイールにはハブダンパーと呼ばれる黒い部品が収まっている。これは遠心クラッチによる変速ショックを和らげるための部品で、摩耗したり硬化していることがある。できればタイヤ交換と同じタイミングで新品に交換するといいだろう。
チェーンのメンテも忘れずに!
リヤタイヤを車体に戻したら、必ずチェーンの張り具合を調整しよう。これを怠るとタイヤを新品にしても意味がないといっていいくらい走りに影響する。カブの場合、チェーンがケースに収まっているので目視できない。そこでチェーンケース中央下にある黒いグロメットをめくろう。
グロメットを外すと内部のチェーンが見えるようになるはずだ。ところが今回、チェーンがとんでもなく汚れてサビまで出ていることが発覚した。新品に交換するのがベストだが、ひとまず清掃して使用可能か判断してみたい。
チェーンケースは4本のボルトで固定されている。ボルトを外してケースの下だけ取り去るとチェーンの清掃ができるようになる。チェーンクリーナーを吹きかけながらリヤタイヤを回すとウエスを同じ位置にしたままでチェーン全体が清掃できる。すると意外にもチェーンはまだまだ使用可能な状態であると判明。根気良くサビと汚れを落としたらチェーンルブをまんべんなく吹きかけて余分な油分を拭き取り終了だ。
フロント側でも紹介したようにアクスルシャフトを固定するナットには、必ず割りピンを入れること。それも一度外したものは再使用せず新品に交換するのが鉄則だ。割りピンはサイズの異なるセットが安価に販売しているので、購入しておくと後のメンテナンス時にも活躍してくれるはずだ。