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バイク用ヘルメットは法律で決まりがある
いきなり法律の話になるが、バイクに乗る時に被るべきヘルメットについて、法規(内閣府令)では以下のように定めている。
【道路交通法施行規則第九条の五(乗車用ヘルメットの基準)】
1:左右、上下の視野が十分とれること。
2:風圧によりひさしが垂れて視野を妨げることのない構造であること。
3:著しく聴力を損ねない構造であること。
4:衝撃吸収性があり、かつ、帽体が耐貫通性を有すること。
5:衝撃により容易に脱げないように固定できるあごひもを有すること。
6:重量が二キログラム以下であること。
7:人体を傷つけるおそれがある構造でないこと。
この規定は、普通自動二輪車や大型自働二輪車はもちろん、原動機付自転車も対象となる。つまり、いわゆる原付バイクも含めた、すべてのバイクに乗る際には、上記規定を満たしたヘルメットを被る必要があるのだ。
だが、逆にいえば、視界をしっかり確保できるとか、衝撃吸収性があるなど、上の規定をクリアしていれば、どんなタイプを選んでもいいように思える。
たしかに、デザインについては、前述したフルフェイスやジェット、オフロードモデルやハーフタイプなど、ライダーが好きなモデルを選んでいいだろう。
だが、実は、バイク用ヘルメットには、ほかにも、後述するさまざまな安全基準が設けられていて、それをクリアしていないモデルを被ってバイクに乗ることは、まさかの時に危険。決しておすすめできない。
ほとんどのヘルメットに付いているPSCマークとSGマーク
バイク用ヘルメットの基準にはいくつかあるが、代表的なものを紹介しよう。まずは、「PSCマーク」と「SGマーク」。日本国内で販売されているほとんどのバイク用ヘルメットの後ろ側に、これらのステッカーが貼られている。
PSCマークは、国が定めた安全基準に適合した製品に表示されるもので、このマークがないと乗車用ヘルメットとしての販売が法律で禁止されている。
また、SGマークは、製品安全協会が定めた認定基準に適合した製品を示すもの。このマークが付いた製品には、万が一製品に欠陥があり人身事故が起こった場合に対する対人賠償責任保険が付いている。
これら2つのマークは、ほぼセットになって表示されていることが多い。そうした場合、公的に認められた安全性をPSCマーク、それに伴う製造物賠償の責任をSGマークが示しているといえる。
そして、PSCマークとSGマークが付いていないヘルメットは、装飾用や観賞用としての使用であれば問題ないが、バイクに乗るために使うことはできない。また、例えば、工事用の安全帽、いわゆるドカヘルなども、これらマークがない以上は、被ってバイクに乗ることは御法度となる。
厳しい審査で知られるJIS規格
ヘルメットに限らず、様々な製品でよく目にするのが「JIS規格」だ。JISとは、Japanese Industrial Standardsの略で、日本の産業製品に関する規格や測定法などが定められた日本の国家規格のことだ。
前述の通り、PSCマークやSGマークは取得しないとバイクの乗車用として販売できないが、JIS規格はメーカーが任意で取得することが多い。衝撃吸収性など安全に対する審査基準がかなり厳しいことで、このマークがあればライダーにより安心感を持たせることができるからだ。
現在は、2010年にPSCの安全基準が改正され、JIS規格と同等レベルの安全基準を要求されるようになったというが、それでも、PSCマークやSGマークに加え、JIS規格が付いていれば、まさに「鬼に金棒」。より高いレベルの安全性を持ったヘルメットであることの証だといえよう。
レースなどの競技でも安心なSNELL規格やMFJマーク
レースなどの競技にも使えるタイプを選びたい場合は、「SNELL規格」や「MFJマーク」がついているかどうかを参考にするといい。
まず、審査基準が最も厳しいと言われているのがSNELL規格だ。これは、有名レーサーだったピート・スネル氏が、レース中の事故で死亡したことをきっかけとして、1957年に設立された「スネル記念財団」が定める規格で、「約5年ごとに規格が見直され、その度に厳しくなる」というのが特徴だ。レースはもちろん、公道を走る一般ライダーも対象とした最高の規格を設定しているといわれており、このマークがあるヘルメットには高い安心感を持てるといえる。
また、MFJマークは、国内レースを管轄する「MFJ(日本モーターサイクルスポーツ協会)」の規定をクリアすることで付与されるもの。このマークが付いていれば、MFJが管轄するレースの公認ヘルメットであるということがわかる。
ただし、国際格式のレースについては、MFJマークだけでは出場できないことになっている。MotoGPなど、国際的レースを管轄する「FIM(国際モーターサイクリズム連盟)」が認証する規格をクリアした「FIMマーク」が必要となる。
125cc超のバイクには被れないヘルメットもある
このように、ヘルメットには、さまざまな規格がある。さらに、前述したSG規格とJIS規格には、「排気量125cc以下用」の限定規格も設定されいる。つまり、国内で販売されているヘルメットには「125cc以下用」と「排気量無制限」の2種類が存在するのだ。
この排気量限定のヘルメットは、ハーフタイプやビジネス用などに多く、それらには「125cc以下用」といったシールが貼られているのですぐ分かる。
そして、こうしたヘルメットを被って125ccを超えるバイクに乗ることはできないので、注意したい。
最適なサイズの選び方
規格のほかにも、自分に最適なサイズを選ぶことも重要だ。大きすぎると「ゆるくてヘルメットが大きくぶれる」などの症状がでるし、小さすぎても「ツーリング中に頭が痛くなった」などの問題が起こる。いずれも、そのまま被って走ると、安全な走行に支障が出てしまう。
ヘルメットのサイズは、一般的に、頭の外周サイズにあわせて設定されている。自分の頭がどのサイズに合うのかは、巻尺メジャーを使い、まゆの上、額のいちばん張り出した位置から水平に回した長さを測ることで分かる。
ただし、頭の形状は、人によってさまざまなので、サイズ表記はあくまで目安だと考えたい。バイク用品量販店など、ヘルメットを販売しているショップに行けば、試着ができるだけでなく、自分のサイズを測ってくれ、最適なサイズを探してくれることも多い。
また、例えば、「Mだと少し大きいが、Sだと小さすぎる」といった場合、メーカーやモデルによっては、内装によって微調整することも可能なので、ショップの担当者などに相談してみるといい。
ヘルメットの寿命は?
最後は、新品で購入したヘルメットがいつまで使えるのか。使用方法や保管方法などによっても変わってくるが、長年使えば、素材の経年変化などから時間の経過とともに寿命も低下することは確かだ。
その目安として、大手ヘルメットメーカーでは、ほぼ「使用開始から3年間」で交換することを推奨している。これは、前述したSGマークが、対人賠償責任保険の有効期限を「ヘルメット購入後3年」と設定されていることも関係していようだが、いずれにしろ、あまり古いものは買い替えるなどで、新品に交換する方が安全のためにはいい。
なお、自分のヘルメットをいつ購入したのか忘れた場合は、帽体の裏などに「製造年月日」が記載されているので、チェックしてみるといい。
また、新品であっても転倒による強い衝撃を1度でも受けた場合は、ヘルメットの使用を中止した方がいいだろう。ヘルメットの構造には、大きく分けて「外装」「衝撃吸収ライナー」「内装」があるが、強い衝撃を受けると、見た目に変化がなくても、衝撃吸収ライナー」がつぶれている場合も多い。そうした場合は、安全性能が低下していて危険だ。
ただし、あまり高くない位置から、うっかり落とした程度なら大丈夫なこともある。例えば、アライヘルメットのWEBサイトによれば、
「オートバイのシートから、または手に持っていた程度の高さから不注意で落としたくらいでしたら、たとえ地面がコンクリートであっても大丈夫です。外観の塗装がはがれる程度なら、安全性能に問題はありません」
としている。そうしたケースでは、メーカーによっては修理に対応しているモデルもあるので、心配であれば相談してみることをおすすめする。
【関連リンク】
アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html
SHOEI https://www.shoei.com/