停車時の立ちゴケ不安を解消! 車高が自動で下がるアドベンチャーバイク5選

車高が自動で下がるアドベンチャーバイク5選
アクティブ プリロード リダクション機能を採用したタイガー1200シリーズ(写真は2023年モデル)
オンロードはもちろん、オフロードでも高い走破性を持つことで、世界的に人気の高いアドベンチャーモデル。特に、長距離ツーリング時には、道を選ばず高い安定性や快適性を味わえるが、一方で、身長が低いライダーなどにとって悩みのタネが足着き性だ。
悪路での高い走行性能を追求するため、多くのモデルが長いストロークのサスペンションを採用しているが、おのずとシート高は高くなる。ライダーによっては、停車時に片足でもつま先がツンツンとなり、例えば、信号待ちなどで停まる際、「立ちゴケするのでは?」といった不安を持つ人も多いだろう。
メーカーによっては、ローダウン・サスやローシートなどもオプションで用意されているが、せっかくの高性能を存分に味わうには、やはり本来の仕様のままで乗りたい。そんなライダーに最適なのが、電子制御サスペンションを搭載し、停車時に自動で車高が下がってくれるモデルだ。ここでは、トライアンフやBMW、ドゥカティやハーレーダビッドソンなど、海外メーカーが採用する自動ローダウン機構付きアドベンチャーモデルを紹介する。

REPORT●平塚直樹
PHOTO●トライアンフモーターサイクルズジャパン、ビー・エム・ダブリュー、ドゥカティ、ハーレーダビッドソン

トライアンフ・タイガー1200

まずは、トライアンフの「タイガー1200」シリーズ。独自のTプレーン・クランクを採用した1160cc・3気筒エンジンを搭載し、低回転から高回転まで、扱いやすいパワー特性を持つことが魅力のモデルだ。

ラインアップには、オンロード指向とオフロード指向といった2つのライン、全4タイプを設定する。

フロント19インチ、リヤ18インチのアルミ製キャストホイールを装備したオンロード系には、20Lの燃料タンクを装備する「タイガー1200GTプロ」と、30L燃料タンク仕様の「タイガー1200GTエクスプローラー」を用意。

一方、フロント21インチ、リヤ18インチのチューブレス・スポークホイールを装備したオフロード系には、20Lの燃料タンクを持つ「タイガー1200ラリープロ」、30L燃料タンクを備える「タイガー1200ラリーエクスプローラー」を設定している。

車高が自動で下がるアドベンチャーバイク5選
トライアンフの「タイガー1200」シリーズ

このシリーズは、2021年のモデルチェンジ時にショーワ製セミアクティブサスペンションを採用しているが、2023年8月には、それをアップデートして新機能の「アクティブ プリロード リダクション機能」を追加している。

これは、従来からの自動電子プリロードアジャストメント機構に加え、速度が65km/h以下になるとリヤサスペンションのプリロードを自動で低減。リヤサスの硬さがさほど必要ない速度域での乗り心地などを向上する効果を生み出す。

また、停車時には、ライダーとパッセンジャーの体重、およびラゲッジの重さに合わせて、シート高を自動で最大20mm下げる機能も搭載。足着き性が改善することで、ライダーにより大きな安心感と自信を提供してくれる。

さらに、この機能は、速度65km/h以下でスイッチキューブにある「Home」ボタンを1秒間押すだけで、システムのオン/オフ切り替えも可能。好みや状況に応じた使い分けができるようになっている。

加えて、付属のシートはシート高を2段階に調整可能だ。GTファミリー(GTプロとGTエクスプローラー)は850mmと870mm、ラリー・ファミリー(ラリープロ、ラリーエクスプローラー)は875mmと895mmといった2種類のシート高が設定されている。

また、オプションのローシートをセットすれば、シート位置はさらに20mm低減。これらにより、最低シート高はGTファミリーで830mm、ラリー・ファミリーでは855mmとなっており、幅広い体格のライダーに対応している。

車高が自動で下がるアドベンチャーバイク5選
タイガー1200GTファミリー

価格(税込)は、以下の通りだ。

タイガー1200GTプロ:243万5000円〜
タイガー1200GTエクスプローラー:263万5000円〜
タイガー1200ラリープロ:259万5000円〜
タイガー1200ラリーエクスプローラー:278万5000円〜

なお、このアクティブ プリロード リダクション機能は、既存のタイガー1200オーナーにも、次回の整備時に正規販売店を通して提供されるという。

車高が自動で下がるアドベンチャーバイク5選
タイガー1200ラリー・ファミリー

BMW・R1300GS

BMWのバイクブランド「BMWモトラッド」が、2023年に国内導入した「R1300GS」シリーズ。1980年に登場した初代モデル「R80G/S」以来、40年以上もの歴史を誇るGSシリーズの最高峰モデルだ。

パワートレインには、BMW伝統の水平対向2気筒、通称ボクサーエンジンを採用。排気量は従来モデル「R1250GS」の1254ccに対し1300ccへアップさせるなどで、最高出力を136PSから145PSへ大幅に増大。エンジンを負荷分担に利用する板金シェル構造の新型フレームや、新型の電子制御式ダイナミックサスペンション「DSA」などの採用により、様々なシーンで高い安定性や快適性を実現している。

ラインアップには、スタンダードの「R1300GS」、スポーツ仕様の「R1300GS・GSスポーツ」、ロングツーリングに快適な装備を持つ「R1300GSツーリング」といった3タイプを用意している。

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BMW・R1300GS

そんなR1300GSシリーズのなかで、R1300GSツーリングには、車高調整機能の「アダプティブ・ヴィークル・ハイト・コントロール」も搭載する。これは、ライダーの操作条件などに応じて、車高を完全に自動調整する機能だ。

たとえば、停止時および低速走行時はシート高が約30mm下がって820mmとなることで、足着き性などが向上。一方、走行速度が上がるとシート高は標準の850mmへ戻ることで、走行安定性や快適性を高次元で実現する。

ちなみに、R1300GS・GSスポーツには、スポーツサスペンションを採用。他のタイプと比べ、+20mmの豊かなサスペンションストロークを持たせることで、よりスポーティな走りを楽しむことができる。

なお、価格(税込)は以下の通りだ。

R1300GS:284万3000円〜
R1300GS・GSスポーツ:297万1000円
R1300GS・ツーリング:323万9000円〜

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アダプティブ・ヴィークル・ハイト・コントロールを採用するR1300GS

ドゥカティ・ムルティストラーダV4ラリー/V4S

20年以上の歴史を誇るドゥカティのアドベンチャーモデルが「ムルティストラーダ」シリーズ。937cc・L型2気筒の「V2」シリーズと、1158cc・90度V型4気筒を搭載する「V4」シリーズを擁するが、V4シリーズのラリー・バージョンとして2023年に登場したのが「ムルティストラーダV4ラリー」だ。

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ドゥカティ・ムルティストラーダV4ラリー(写真は海外モデル)

大容量30Lの燃料タンクや新型のフロント・スクリーンなど、より長距離ツーリングに最適な装備を持つのがこのモデルだ。200mmのストローク量を持つセミアクティブ電子制御サスペンション「DSS EVOシステム」や、オフロード走行専用のパワーモードを備えた「エンデューロ・ライディングモード」なども採用。悪路での高いコントロール性などを追求していることがポイントだ。

このムルティストラーダV4ラリーのサスペンションには、「イージーリフト」という機能が搭載されている。これは、イグニッションをオンにしたときに、セミアクティブ・ユニットのバルブを約3分間完全に開くことで、サスペンションの減衰力を制御するというもの。これにより、フロントおよびリヤのサスペンションが柔らかくなり、乗車時に車高を下げる効果を生むのだ。

なお、この機能についてドゥカティは、2023年にムルティストラーダV4Sの最新モデルにも搭載することを発表している。しかも、このアップデートは、新車への標準装備だけでなく、既存ユーザーへも無料で提供するという。

なお、価格(税込)は以下の通りだ。

ムルティストラーダV4ラリー:359万4000円〜
ムルティストラーダV4:337万5000円〜

車高が自動で下がるアドベンチャーバイク5選
ドゥカティ・ムルティストラーダV4S(写真は海外モデル)

ハーレーダビッドソン・パンアメリカ1250スペシャル

ハーレーダビッドソン初のアドベンチャーモデルが「パンアメリカ1250スペシャル」だ。エンジンには、排気量1252ccの「エボリューションマックス(Revolution Max)」を搭載し、150馬力もの出力と柔軟なパワーバンドとのマッチングで、オンロードからオフロードまで、幅広いシーンでライディングを楽しめる特性を実現している。

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ハーレーダビッドソン・パンアメリカ1250スペシャル(写真は海外モデル)

また、ショーワ製のセミアクティブ電子制御サスペンションや、好みや状況に応じ選べる5つのライドモード(スポーツ、ロード、レイン、オフロード、オフロードプラス)など、最新の電子制御システムも採用。TFTカラータッチスクリーンを採用したメーターなど、利便性の高い装備も魅力だ。

そんなパンアメリカ1250スペシャルに搭載されているのが、「アダプティブライドハイト」という機能だ。これも、いわゆる車高の自動調整機能で、停車時にはシート高を低げて、足着き性を向上させるもの。また、走り出して速度が上がってくると、サスペンションへのウエイト入力を連続感知しながら前負荷を調整。サスペンションサグ(サスペンションの沈み込み量)を一定に保つことで、安定した走行を実現するというものだ。

この機構により、シート高は低い時で850mm、走行時などには最大で875mmへ変化させることで、状況などに応じた設定を自動で行う。

なお、パンアメリカ1250スペシャルの価格(税込)は

258万6800円〜

となっている。

車高が自動で下がるアドベンチャーバイク5選
パンアメリカ1250スペシャルにはアダプティブライドハイト機構を採用(写真は海外モデル)

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著者プロフィール

平塚直樹 近影

平塚直樹

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなど…