【試乗記】加速力、恐るべし。2458cc のバイク、トライアンフ・ROCKET 3 STORM R

初代モデルのデビューは2004年。当初は2.3Lエンジンの搭載で登場したロケット3 は、「究極のマッスルロードスター」というコンセプトを掲げ、世界最大の排気量を誇るビッグトルクを発揮。度肝を抜く存在感を披露した。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●トライアンフ モーターサイクル ジャパン株式会社/日本自動車輸入組合(JAIA)

トライアンフ・ROCKET 3 STORM R…….2,989,000円(税込み)

SATIN PACIFIC BLUE / MATT SAPPHIRE BLACK

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カラーバリエーション

ROCKET 3 STORM R…….2,989,000円(税込み)

CARNIVAL RED / SAPPHIRE BLACK
SAPPHIRE BLACK / BRANITE

ROCKET 3 STORM GT…….3,059,000円(税込み)

MATT SAPPHIRE BLACK / SATIN PACIFIC BLUE
SAPPHIRE BLACK / CARNIVAL RED
GRANITE / SAPPHIRE BLACK

ROCKET 3 R…….2,825,000円(税込み)〜

MATT SILVER ICE…….2,855,000円(税込み)
SAPPHIR BLACK/CARNIVAL RED/SILVER ICE…….2,885,000円(税込み)
SAPPHIR BLACK…….2,825,000円(税込み)

ROCKET 3 GT…….2,895,000円(税込み)〜

SAPPHIR BLACK…….2,895,000円(税込み)
SAPPHIR BLACK/CARNIVAL RED/SILVER ICE…….2,955,000円(税込み)

Rocket 3 R / GT CHROME EDITION(限定モデル)

CHROME/JET BLACK…….2,955,000円(税込み)
CHROME/DIABLO RED…….3,025,000円(税込み)

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オールアルミフレームに量産車世界最大のエンジンをリジッドマウント。現モデルの排気量は2,458cc 。インラインのトリプルエンジンが醸す凄みのある存在感には定評があり、そこから発揮されるであろう加速性能には他を圧倒する揺るぎない個性と魅力に溢れている。
110.2mmものビッグボアが縦に居並ぶ水冷直列3気筒。黒くボリューム感たっぷりなエンジンブロックは、まるで4輪自動車のパワーユニットを見るような逞しさがある。
右側にはハイドロフォームで成型されたエキゾーストパイプが並ぶ。威風堂々の貫祿には誰もが見惚れてしまうことだろう。
ホイールベースはなんと1677mm。車両重量は300kgオーバーの巨漢。ロー&ロングなフォルムは、まさにコンセプト通り「究極のマッスルロードスター」なのである。

約300万円もの高価格を始め、重量級モデルである点はどこか近寄りがたい。しかしそれだけに、オーナーにとっては特別プレミアムな一台になることは間違いない。同社のフラッグシップを手にする価値と、堂々とそれに跨がる姿はさぞかし誇らしいことだろう。
バイクに巨大なハイパワーエンジンを搭載すると言う大胆なコンセプトに、改めて大きなインパクトを覚える。ライバルとして頭に浮かぶのは、ヤマハ・V-MAXやドゥカティ・ディアベルあたりだろう。その中でもロケット3Rの存在感は迫力満点である。

注目のエンジンは今回のモデルでさらに劇的なパフォーマンス向上を果たしている。前方カムチェーン方式、水冷DOHC 12バルブ3気筒の基本構造に変わりは無いが、最高出力は167ps/6,000rpmから182ps/7,000rpmへ一気に15psも向上。4,000rpmで発揮される最大トルクも221Nmから225Nmへアップされ、量産車最大値の記録を更新した。
パワーアップに伴い改善された6速トランスミッションにはヘリカルカットギア(はすば歯車)の採用で高荷重に対応。左側のアルミ鋳造式片支持スイングアームに通るシャフトドライブには弾性素材を介した減衰機構を備え駆動系にスムーズな特性をもたらす。
排気系は3into1to3。3連のエキゾーストパイプから右2本左1本出しのショートマフラーは、熱遮蔽板も含めて全てがブラックアウト。特に右サイドビューを飾るマフラーエンドまでの一体感には迫力がある。
軽量化が追及されたフルアルミフレームはエンジンブロックも強度メンバーに加えて設計され、鍛造のリアフレームがボルトオンされている。
黒いフロントフォークはφ47mm Showa製の倒立式。細い11本スポークタイプの17インチ軽量アルミキャストホイールには150/80RのAVON製COBRA CHROMEタイヤを履く。フォークのストローク量は120mm。左側のトップエンドに伸び側、右側には圧側のダンピングアジャスターが装備されている。
一方240/50R-16インチという極太タイヤを履くリアサスペンションは、少し右側にオフセットされたShowa製フルアジャスタブルのモノショックを装備。左側の油圧リモコンダイアルで、プリロード調節ができる他、ショック上部の右側にあるアジャスターで伸び側の減衰が、下側では圧側の減衰調節が可能。ちなみに作動ストロークはホイールトラベルで107mm。
そして前後トリプルディスクブレーキにはブレンボ製のモノブロック式4ピストン油圧キャリパーを装備。コーナリングABSや坂道発進時の後退を防ぐヒルホールド機能も標準装備されている。

ド迫力な魅力に、ますます磨きが掛けられた。

試乗車を目前にするとドッシリとボリューム感タップリなフォルムには改めて圧倒させられる。ステアリングのフォークブラケット(三叉)サイズがワイドで立派。
黒いパイプバーハンドルには左右対称に油圧マスターシリンダーとバーエンドミラーを装備。美しく表面仕上げされたフィラーキャップや中央部を縦に通るステンレスベルトで燃料タンクを固定するデザインにネオレトロなセンスが感じられる。
また特筆すべきは、左右ハンドルスイッチにつながる電気配線をハンドルパイプ内に通す拘りようで、これまた古き時代の手法を彷彿とさせるフレッシュなチャームポイント。ハンドル周辺の見た目がとてもスッキリと上品に仕上げられているわけだ。ハンドル中央の手前にマウントされたメーターも左側の調節レバー操作で固定角度が変えられる。

分厚いワイドシートに跨がると、両足はべったりと地面を捉えることができ、意外にも手強い印象は感じられない。バイクの直立を保てば、どっしりと重たい車重が功を奏して落ち着きが感じられ、ライダーが足で支える必要がないかのような錯覚に陥るほどである。
ただワイドなシートのせいで、両足の地面への踏ん張り(接地圧)は強くない。
重量級の安定感に油断しやすいし、路面に浮き砂があると、ついつい足を滑らせてしまいやすいので注意が必要だ。体格的に非力な筆者でも、綺麗に舗装された平地で扱う限り、バイクの引き起しや跨がったまま車体を前後に動かすのもそれほど難しくなかったのでひと安心。
ただ、傾斜のある場所や狭い車庫から出し入れする場面を想像すると、リバースギア(または電動後退装置)が欲しい思えたのも正直な感想である。

エンジンを始動するとクランク縦置き独特の癖として、車体が左へグラリと揺れる。そんな左右への挙動はスロットルの開閉に伴うものの、気にするほどのレベルでは無い。
扱いの軽い油圧クラッチを握り、ローギヤへシフトしスタートすると、重量級モデルを扱う緊張感がスッと消滅。何とも軽快かつスムーズ、しかも素直に制御できてしまう。大船に乗る安心感を享受しながらも、小回りUターンや市街地での右左折、峠のワインディング、そして高速道路での車線変更もライダーに要求される操作力は至って軽い。
下肢をリラックスさせ、両腕を前に投げ出すようなライディングポジションはクルーザー的な感覚で、ライダー自身の身体も楽に腰を落ち着ける感じ。旋回中のR変化への対応やブレーキ調節をするのも楽々と思いのままに制御できてしまう。気持ちに優しい乗り味がうれしい。
専用のアクセサリーパーツは多彩に揃えられており、パニアケースなどツアラー的モデルへのカスタムに対応されているが、それも納得できる穏やかな雰囲気なのである。

ただひとたび、右手のスロットルをワイドオープンすると、怒濤の加速力は、おそらく誰にとっても未体験ゾーンに違いない。そんなポテンシャルがいとも簡単に引き出せてしまうところにロケット3 Storm R の強烈にして価値ある個性が備わっている。
しかもそんな世界最強最速レベルの加速性能には、間違いなく磨きが掛かっていた。
筆者の記憶が正しければ、総減速比が若干低められたようで、エンジンのパワーアップと相まって、加速力にはさらに凄みが増している。しかし決して乱暴者ではない所も見逃せない。駆動系や電子制御系の調教も素晴らしく、後輪のハイグリップを最大限に活かしたダッシュ力が賢く発揮される。
決してオーバーな表現ではなく、体内の血液が逆流する(圧迫される)かのような凄さだ。そのポテンシャルの高さには改めて驚かされてしまった。国内の高速道路でも公道で試せるのは、おそらく3秒足らずの出来事に過ぎないだろう。
ちなみに走行モードコントロールはレイン、ロード、スポーツ、ライダー(任意設定)の4種から選択できるので、滑りやすい路面でも安心感があり、ホイールスピンをセーブする制御が介入した時も以前よりスムーズに賢くコントロールされている感じが好印象だった。加速タイム的に同レベルの高性能バイクは他にもあるかもしれない。しかし、いとも簡単にそれを発揮できる点では他の追従を許さない。その点に真骨頂が見出せるのである。
実際には、このポテンシャルを内に秘めながら、心穏やかに快適なクルージングを楽しむに相応しい重量級のプレミアムモデルと言えるのだ。
筆者は初代のロケット3で1,000kmツーリングをした経験があるが、絶対的な重量からもたらされる落ちつきのある快適な乗り味が、疲れの少ないロングクルージングに貢献したと記憶している。最新モデルではパフォーマンス向上だけでなく、素直な操縦性と軽快な乗り味にも磨きがかかり、誰にでも楽に乗れる親しみやすさも向上。洗練された快適性を披露してくれたのが印象的だったのである。
ちなみにローギヤでエンジンを5,000rpm回した時のスピードは74km/h。6速トップギヤで100km/h クルージング時のエンジン回転数は2,400rpmだった。

足つき性チェック(ライダー身長168cm、体重52kg)

シート高は773mm。ご覧の通り両足は踵までベッタリと地面を捉えることができる。317kgもの車体を支えるにも、不安感は少ない。

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…