エコランを意識すれば、給油1回で500km走行が夢ではない!? ヤマハXSR125 1000kmガチ試乗3/3 

積載性に対する配慮は感じられないし、乗り心地は良好とは言い難い。人によっては、ライポジやブレーキなどに不満を感じることもあるだろう。とはいえ、XSR125で2度のツーリングに出かけた筆者は、このバイクならではの資質にかなりの好感を抱いている。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

ヤマハXSR125……506.000円

ツインスパータイプのスチールフレームと左右非対称デザインのアルミスイングアームは、兄弟車のYZF-R125・MT-125と共通。ただし、シートレールは各車専用設計だ。

ライディングポジション ★★★★☆

大らかで自由度が高いライディングポジションは、いい意味で旧車的な雰囲気。と言っても、ネイキッドスタイルが王道だった1980年代前半以前の旧車と比較すると、ハンドルは絞り角が少なく、ステップ位置はやや後方。身長182cmの筆者が好感を抱いたのは、シート~ステップの距離が十分に確保されているので、ヒザや足首にストレスがかからず、ロングランの後半で下半身に疲労を感じなかったこと。その一方でちょっと気になったのは、絞り角が少ないハンドル。海外ではこういったストリートファイター的な形状が定番になっているようだが、日本人の多くはもっと絞り角が強いほうが好みだと思う。

ここ最近の125ccスポーツネイキッドの基準で考えると、810mmのシート高は高い部類ではないものの、XSR125は昔ながらの左右幅が広いシートを採用しているので、足着き性はいまひとつ。身長が160cm以下のライダーの場合は、ツマ先ツンツン状態になるようだ。ちなみに兄弟車のMT-125もシート高は810mmだが、シート前端が絞り込まれているため、足つき性はXSR125より良好。

タンデムライディング ★★★☆☆

タンデムラインディングでもどかしさを感じたのは、エンジンの低回転域のトルクの細さ。ソロで乗っているときも、加速に物足りなさを感じてシフトダウンせざるを得ない場面には何度か遭遇したのだが、タンデムではそういった状況が顕著になる。その一方で好感触を抱いたのは、後輪荷重の増加による車体姿勢の変化が少ないこと。とはいえその事実は、リアショックの設定が硬めであることの証明と言えなくもない。以下はタンデムライダーを務めた富樫カメラマンの言葉。「運転手はギアチェンジに気を遣っている印象だったけど、座面が広くて乗り心地がいいから、タンデムライダーはなかなか快適だったよ。ただし、俺の体格(身長172cm・体重52kg)だと、ヒザが上を向いちゃって気分的に落ち着かないから、タンデムステップ位置はもう少し低いほうがいいかな」

取り回し ★★★★★

世間には125ccにしては大柄……という意見があるけれど、ハンドルが高くて車体がスリムなXSR125の取り回しは至ってイージー。最小回転半径は2.3mで、この数値はホンダCB125RやスズキGSX-125Sとまったく同じ。ちなみに軸間距離は、XSR125:1325mm、CB125R:1345mm、GSX-S125:1300mmだから、3車の中で最もハンドル切れ角が多いのはCB125R、ということになる。

ハンドル/メーターまわり ★★★★☆

シャシーの大元が低く構えたセパハンのYZF-R125だからだろうか、XSR125はかなり強引な手法でハンドルグリップ位置を上げている(トップブリッジがウイング形状で、ハンドルクランプでも高さを稼いでいる)。前述したハンドルの絞り角が少ない問題は、クランプボルトを緩めてハンドルを手前に回転させれば、多少は解消することが可能。外周にバーグラフ式の回転計を配置したメーターはXSR700に通じる構成だが、文字や燃料残量計のデザイン、警告灯の配置などは異なっている。

左右スイッチ/レバー ★★★★☆

兄弟車のYZF-R125・MT-125と共通の左右スイッチボックスは、もともとは初代MT-09/07用としてデザインされたパーツ。ただし右側下部に存在したハザード用スライドレバーは、125ccスポーツ3兄弟では省略されている。

ブレーキ/クラッチレバーに位置調整機構はナシ。バーエンドはカスタムパーツを思わせるデザインだ。なお左側スイッチボックスの最下段に備わるウインカーレバーには、賛否両論があるようだが、個人的には好感触。

燃料タンク/シート/ステップまわり ★★★★☆

ガソリンタンクはスチール製インナー+3分割式樹脂製アウターという構成で、フィット感はなかなか良好。この構成なら、転倒時の補修費用は安く抑えられるだろう。昔ながらのデザインを採用したシートは、肉厚が十分ではないものの、座面がフラットで幅広くて前後に動きやすいので、長距離を走っても尻に露骨な痛みは感じなかった。

ステップはレトロテイストではなく、現代のスポーツバイク然としたデザイン。なおシフトタッチが悪いわけではないのだが、丸棒の両端を曲げたシフトロッド(固定は割りピン)にはコストダウンの気配を感じる……。

積載性 ★★☆☆☆

タンデムステップ基部にフックポイントが存在するけれど、テール周辺に荷かけフック類は皆無なので、ツーリング指向のライダーは、アフターマーケット市場で販売されている荷かけフック付きグラブバーやサイドケースなどの購入を考えたほうがいいかもしれない。とはいえ、タンデムシート座面が広くてフラットなため、筆者の私物であるタナックスのダブルデッキシートバッグ使用時の安定感はなかなか良好だった。125ccには関係ないが、シート下にはETCユニットが収まりそうな空間が存在。

ブレーキ ★★★☆☆

ブレーキは、フロントφ267mmディスク+片押し式2ピストンキャリパー、リヤφ230mmディスク+片押し式1ピストンキャリパーで、ABSは2チャンネル式。フロントディスクをYZF-R125・MT-125より15mm小径としたのは、兄弟車より1サイズ太くて重量が増加した(と思われる)フロントタイヤとのバランスを取るためだろうか? ちなみにフロントディスクが小さくても、個人的には現状の制動力とコントール性に不満は感じなかったのだが、利き方に物足りなさを感じる人もいる模様。

サスペンション ★★★☆☆

フロントフォークはφ37mm倒立式、リアサスペンションはボトムリンク式モノショックで、前後とも調整機構はナシ。スポーツ性を重視した設定は、普通の試乗では好感触だったものの、ロングランではリアの動きに硬さを感じた。なお現在のアフターマーケット市場では、バナナ型リンクプレート×2の軸間距離を独自の寸法に変更した、ローダウンキットが数多く販売されている。

車載工具 ★☆☆☆☆

車載工具はシート裏に備わるプラスドライバーのみ。その前方に意味ありげなゴムバンドが設置されていたので、試乗車はこちら側の車載工具を紛失したのかも?……と思いきや、ゴムバンドは書類の固定用らしい。

燃費 ★★★★★

コンスタントに50km/ℓ台中盤をマークするホンダのクラシックウイングマークシリーズには及ばないけれど、エンジンが高回転指向という事実を考えると、47.6km/ℓの平均燃費は立派。おそらく、2種類のカムを使い分ける可変バルブ機構のVVAがいい仕事をしているのだろう。ガソリンタンク容量は10ℓで(残量2ℓで警告灯が点滅)、平均燃費から算出できる航続可能距離は476kmだが、エコランに徹すれば1回の給油で500km走行が夢ではない? ちなみに、過去にガチ1000kmで取り上げたスズキGSX-R125の平均燃費は41.5km/ℓだった。

基本設計を共有するXSR125・YZF-R125・MT-125には、兄貴分の155/15が存在。ヨーロッパでは125、東南アジアでは15/155が主力になっている。日本のようにYZF-R125とYZF-R15を併売する市場は、世界的に見ると珍しいようだ。

主要諸元

車名:XSR125
型式:8BJ-RE461/E34LE
全長×全幅×全高:2030mm×805mm×1075mm
軸間距離:1325mm
最低地上高:170mm
シート高:810mm
キャスター/トレール:25°30′/88mm
エンジン形式:水冷4ストローク単気筒
弁形式:OHC4バルブ
総排気量:124cc
内径×行程:52.0mm×58.7mm
圧縮比:11.2
最高出力:11kW(15ps)/10000rpm
最大トルク:12N・m(1.2kgf・m)/8000rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
ギヤ・レシオ
 1速:2.833
 2速:1.875
 3速:1.363
 4速:1.142
 5速:0.956
 6速:0.840
1・2次減速比:3.041・3.714
フレーム形式:ダイヤモンド
懸架方式前:テレスコピック倒立式φ37mm
懸架方式後:リンク式モノショック
タイヤサイズ前:110/70-17
タイヤサイズ後:140/70-17
ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:137kg
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:10L
乗車定員:2名
燃料消費率国交省届出値:60.3km/L(2名乗車時)
燃料消費率WMTCモード値・クラス2:49.4km/L(1名乗車時)

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著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…