CBR400Rってどんなバイク? 普段使いで楽しめるスタイリッシュ系ミドルスポーツです!

CBRシリーズ最強のCBR1000RR-R FIREBLADE SP(左)と親しみやすいCBR400R。
2024年3月21日に新発売されたCBR400Rは、新形状カウルや前後灯デザインで外観を一新。さらに装備面もかなり充実したものに進化している。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田 俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●株式会社ホンダモーターサイクルジャパン
フルフェアリングを纏った、精悍なミドルサイズスポーツ。

ホンダ・CBR400R…….863,500円(消費税込み)

グランプリレッド

カラーバリエーション

マットバリスティックブラックメタリック

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ブラックアウトされた水冷DOHC直(並)列2気筒エンジンは、右サイドカムチェーン方式。
φ35mmのスチール鋼管製ダイヤモンドフレーム。エンジンブロックも剛性メンバーに加えられている。

かつての4気筒からがらりと変身。新開発された2気筒エンジンを搭載するCBR400Rのデビューは2013年4月のことだった。車体や足回りとエンジンの基本コンポーネンツをCB400Fと400Xの3車種共通で一気に新開発されての登場が注目された。
その後カラーリング変更やABSの標準装備化を経て2019年1月に次世代モデルへ大きな熟成進化を果たす。さらに毎年の様にカラー変更や細部の改善を重ね、今回のビッグマイナーチェンジに至っている。ちなみにこのツインエンジンは、今やNX400、Rebel 500、CL500にも搭載されている。
   
このエンジンについてお復習いしておこう。冷却方法は腰上(シリンダーと同ヘッド)がウォータージャケットに包まれる水冷式。直(並)2気筒でボア・ストロークは67×56.6mmというショートストロークタイプの399cc。排気量からわかる通り日本国内市場向けに新開発されたものだが、グローバルな視点で、多彩なミドルサイズ・マーケットへの対応も見据えられていた。
ちなみにボアサイズは4気筒のCBR600RRと同じ。遠心鋳造されたシリンダースリーブが採用され、気筒間寸法が7mmまで詰められているのもCBR600RRと共通。また500はボアが同寸でストロークは66.8mm。ほぼスクエアの471ccである。
軽量高強度ピストンを使用。ピストンピンやコンロッドにも特殊な表面処理が施され、摺動部のフリクションロスを徹底的に低減。
動弁系は右サイドカムチェーン方式のDOHC 8バルブで、軽量コンパクトにデザインされた他、クランクケース内はミッションケースとの隔壁を無くした設計でピストンの上下動で発生するポンピングロスも小さくなるよう配慮されている。
同時開発の3機種だけではなく、他にも多くのモデルへ対応すべくゼロから新開発されたエンジンだけに、次代の環境性能を見据えて当時の最新技術が徹底的に投入されたそう。
高回転高出力を欲張ることはなく、実用上使用頻度の高い中・低速域の出力特性を重視し当初は、ピークパワー時の回転数を9,500rpmとしたことも明言されていた。
横置き配置のクランクは180°位相タイプを採用。シリンダー背面にはセラシギア(隙間/遊びを減らす構造の歯車)駆動のバランサーを備えることで振動低減と低騒音化を図りダイヤモンドフレームへのリジッドマウントを可能に。エンジン自体も車体の剛性メンバーに活用する合理的な設計が成された。
全8バルブの動弁系は、パナジウム表面処理されたSVサイレントカムチェーンで吸排両カムシャフトを駆動。ひとつのカムプロフィールがローラーロッカーアームを介して二つのバルブを駆動する。ちなみにロッカーアームの支点と作用点の間に力点を置く関係で、カムのリフト量よりバルブ開閉のストローク量は拡大される。
採用された大径バルブはバルブステムの細軸化を徹底。吸気ポートをストレート化するなど、吸排気の流れをスムーズ化。ちなみに燃料噴射装置はシリンダーヘッドに組み込まれていた。
タペット調節はロッカーアームにアジャスターは持たずバルブシムタイプとすることで、稼動部分の軽量化に貢献。バルブスプリング荷重も低めな設定を可能としてる。
このNC47Eエンジンは2019年のモデルチェンジでNC56Eに進化。吸排気系が大幅に刷新され3,000~7,000rpm、つまり実用域のトルクが3~4%も向上。全回転域にわたり燃焼効率の向上が徹底され、その後も熟成を重ねつつ現在に至っているのだ。

また今回試乗した最新モデルは、装備面での進化が著しい。フルカウルの外観デザインが一新されたのを始め、走りの機能面で有効なHSTC(Honda・セレクタブル・トルク・コントロール)を新搭載。そしてリフレッシュされた5インチフルカラーTFT液晶メーターを採用。スマホとの連携が可能なHonda RoadSyncも標準装備されたのである。

高速への伸び感が爽快。中速域の出力特性は逞しい。

CBRというネーミングを始め、グランプリレッドのフルフェアリングを纏うそのフォルムは、見るからにスーパースポーツモデルらしい精悍な雰囲気を漂わせている。
古い言葉を使えば、まぎれもなくレーサーレプリカのそれである。フロントフォークにマウントされたセパレートハンドル。ステアリングの切れ角は小さめ。シートも前後で段差のあるセパレートタイプ。
250から1000まで揃えられたCBRシリーズの中でミドルクラスを担う一員として相応しいスタイリングだ。兄貴譲りのウイングレットも装備。ただ、第一印象から凄みのある鋭さを覚えるCBR600RRと比較すると、どこか落ちつきのある佇まいにRR(ダブルアール)とRに込められたコンセプトの違いが感じ取れる。
早速シートに跨がると意外なほど上体が起き前方視界に優れるライディングポジションが丁度良い。記憶が正しければ初代モデルよりは前傾しており、スーパースポーツモデルとして適度な感覚に好印象を覚えた。
両足は膝に余裕をもって、楽に地面を捉えることができ、バイクを支えたり引き起しの扱いも楽。ステアリングが、もう少し深く切れるなら、取り回しやUターンがさらに扱いやすくなるだろうと感じられたものの、基本的にミドルサイズのスポーツバイクとして、191kgの車重やスマートな車体の扱いは楽。直感として4気筒モデルより軽快で親しみやすい点がうれしい。
山成りに膨らみがあるガソリンタンクの容量は17Lあり、モード燃費率(諸元値)を乗算すれば、約480kmもの航続距離を誇る。実用値は走り方によって増減があることを考慮しても、ツーリング用途に侮れない魅力を備えていることも見逃せないのである。

エンジンを始動すると、ツインらしい小気味よさと、煩くない排気音が好印象。エンジンの回転フィーリングも心地の良い軽快感が伴う。極めて軽いアシスト&スリッパークラッチを操作しスタートすると、スムーズかつ柔軟な出力特性ならでは扱いやすさにホッとさせられる。なるほど、CBRブランドとは言えサーキットでの高性能を求めているわけではないエンジンキャラクターが、多くの一般ユーザーにとって、気軽な乗り味をもたらす価値ある魅力となるだろう。
特に気負うことなくスッと走り出せ、必要とあればダイナミックで逞しい加速力を発揮することも可能。街乗りから峠道、高速走行からスポーツランまでを無難にカバーし、それぞれの走りのスタイルに応じて楽しませてくれる柔軟な乗り味が快適なのである。3,000rpmを下回る領域からでも着実にレスポンスし、5,000rpmからは盛り盛りと元気。さらに8,000rpmオーバーでもへこたれない吹き上がり感はなかなか爽快。中低速をメインに実用域でのトルク特性が熟成されてきただけあって、抜群に扱いやすい。それでいてレッドゾーンの10,000rpmまで苦もなく伸びるエンジンフィーリングはCBRらしさが巧みに表現されていると思えた。
標準装備されたHSTCはハンドル左側のコントロールスイッチでON/OFFが可能。走行中に切り替えはできないが、基本的にメインスイッチを入れると自動的にONになる仕組み。駆動力の掛け過ぎによるスリップダウンの危険性を低減してくれるので、滑りやすい山岳路や冬季に走る時の安心感は高い。

SHOWA製SFF-BP(セパレート・ファンクション・ビッグピストン)の倒立式フォークはダンパー機能を圧側と伸び側で左右それぞれに独立させた方式。リヤはボトムリンク式のモノショック(プロリンク)で、いずれも良くストロークしているのが印象的。
ただ、ピッチングの挙動が大きく感じられることがあり、慣れぬうちは制動時に前へつんのめる(フロントフォークが沈む)動きが少し大げさな急ブレーキに感じられやすい。
また大きなギャップの通過ではバネ下がバタつく感じも見られたが、一般的な舗装路を駆け抜ける上では特に気になる程ではなく、乗り心地も良い。何より至って素直な操縦性が光り、どんな場面でも気持ちよく走れたのが印象的だった。
ツインエンジン独特のリズミカルな回転フィーリングと絶妙な軽(重)さのクランクマスに巧みにな出力特性とがマッチした乗り味は日本のストリートスポーツとして不足無いパフォーマンスと快適な乗り味を楽しませてくれる。
スタートした瞬間から誰でも楽々と慣れ親しむことができ、安心感と共に走れる。良い意味でどこか長閑な感覚が味わえるところも魅力的であった。

足つき性チェック(ライダー身長168cm/体重52kg)

両足はべったりと地面を捉え、両膝にも余裕がある。シート高は785mm、車体も2気筒エンジンなりの細身な仕上げで、バイクを支えるのが容易である。

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…