1000km走って感じた、ホンダCL500のイイところとワルイところ。 1000kmガチ試乗【2/3】

これが誉め言葉になるかどうかは微妙なところだが、CL500で2度目のロングランに出かけた筆者は、“色の白いは七難隠す”ということわざを思い出した。いろいろな難点を発見しても、CL500は非常に魅力的で楽しいバイクだったのである。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

ホンダCL500……863,500円

ダイヤモンドタイプのスチールフレームは開発ベースになったレブルと共通だが、後端をループ形状としたシートレールとアップマフラーの“逃げ”を考慮したスイングアームは専用設計。

抑揚に富んだパワーユニット

撮影を兼ねた試乗の数日後、僕はCL500を駆って旧知の友人6人と共に一泊二日で約600kmのツーリングに出かけた。そしてそのツーリングでは、いい面でも悪い面でも、CL500の意外な資質を感じることになった。

まずはいい面の話を記すと、パワーユニットがかなりの好感触だったのである。過去に同系の並列2気筒エンジンを搭載するレブル500やCBR400Rを体験した際の僕は、実直な特性ではあっても、いまひとつ面白味に欠ける……という印象を抱いたのだが、吸排気系の変更やレブル500よりリアスプロケットを1T大きくしたことの効果なのだろう、CL500のパワーユニットは抑揚に富んでいて、長距離を走ってもなかなか飽きが来ない。

なお並列2気筒のクランク位相角は、180度:高回転指向、360度:低回転域重視、270度:トラクションに優れる、というのが大昔からの定説で(1960年代のホンダは同系のパラレルツインで2種類の位相角、180度と360度を設定していた)、その分類には一理があると僕は感じている。ただしCL500のエンジンは、180度位相クランクならではの高回転域の伸びの良さが実感できる一方で、低回転域でも十分なトルクと粘り強さを発揮するし、トラクションもわかりやすい。以前から感じていたけれど、周辺技術が発達した現代では、やっぱりクランク位相角だけでエンジン特性は語れないのだ。

昔ながらの車体構成にかなりの好感触

パワーユニットに続いて感心したのは、穏やかで優しくて、それでいて攻め応えのあるハンドリング。誤解を恐れずに表現するなら、現代のミドルスポーツネイキッドと比較すると、CL500の車体構成は相当に古臭いのだけれど、僕は古臭いことが悪いとは微塵も思わなかった。それどころかCL500を走らせていると、現代のミドルスポーツネイキッドへの疑問が湧いて来なくもない。

ちなみに、同系エンジンを搭載するミドルスポーツネイキッド、海外市場で販売されているCB500Fの寸法が、タイヤ:前後17インチ、キャスター角:25.5度、ホイールベース:1410mmであるのに対して、CL500はF:19/R:17インチ、27度、1485mm。また、CB500Fの乗車姿勢を基準にすると、CL500のハンドルは高くて幅広く、シートも高く、ステップは前方に設置されている。そういった構成から推察すると、見通しがいい良路を速く走れるのはCB500Fのほうだが、今回のツーリングを通して僕は改めて、一寸先は闇の公道を楽しく快適に走れるのは、CL500のように昔ながらの車体構成を採用する車両ではないか……と感じたのである。

NX400・CL350との差異

400Xの後継として2024年から発売が始まったNX400は、日本車では唯一の400ccアドベンチャーツアラー。
2021年にデビューしたGB350は、2022/2023年の日本の251~400ccクラスで販売台数トップを記録。

ここからは悪い面の話で、実はその印象は友人が乗ってきたレンタルバイク、NX400とGB350のせい……と言えなくもない。もっとも僕は、CL500と同系の並列2気筒エンジンを搭載するアドベンチャーツアラーのNX400には興味津々だったし、ネオクラシックという同じジャンルに分類できるGB350との差異にも関心はあったのだけれど、他機種との比較でCL500のマイナス要素に遭遇してしまうのは予想外の展開だったのだ。

悪い面の話その1は、質感と価格である。と言っても僕と友人3人は悪い印象は持たなかったのだが、“30万円くらい安いのに、雰囲気はGB350のほうが高級車だよね”、“NX400は400ccにしては値段が高いと思ってたけど(89万1000円)、CL500と見比べるとむしろ安く感じる”、“装備に関してはCL250との差別化をするべきじゃない?”などと、他3人は厳しい意見を連発。

まあでも、質感と価格に対する印象は人それぞれだし、レブル500(83万6000円)や他機種とのバランスを考えると、現状以下の価格でCL500を販売するのは難しいと思う。ただし例えば派生機種として、現状では黒塗装になっているパーツのいくつかをメッキ仕上げに変更し、テーパーハンドルやリザーブタンク付きリアショックなどを装備するスポーツバージョンが+5万円前後で登場したら、厳しい意見は激減しそうな気はする。

続いて悪い面その2を述べると、ツーリング初日に宿に到着した後に、1人で3台を立て続けに乗った(乗せてもらった)僕は、前後サスペンションの設定に違和感を覚えた。開発ベースのレブル500と比べれば格段に快適になっていても、同条件でNX400・GB350と比較してみると、CL500の衝撃吸収性は良好とは言い難く、路面の大きな凹凸を通過すると車体が露骨に跳ねるし、衝撃を受けた後は車体に残った余韻がなかなか収まらない(モノは試しという感覚でリアショックのプリロードとタイヤの空気圧を調整してみたが、事態は好転しなかった)。

この件に関しては現代的な足まわり、SFF-BP:セパレート・ファンクション・フロントフォーク・ビッグピストン+リンク式リアショックを採用するNX400に及ばないことは当然だとしても、まさか前後サスペンションが同じような構成のGB350にも及ばないとは……。もしかするとCL250と同時開発するうえで、何らかの制約があったのかもしれないが、CL500の潜在能力を考えると、現状の足まわりは物足りないのである。

スクランブラーならではの魅力

さて、文章を書き進めているうちに微妙な展開になってしまったけれど、2つの悪い面に遭遇しようとも、僕はこのバイクが嫌いにはならなかった。そもそも質感と価格に個人的には違和感を持たなかったし、前後サスペンションの問題はアフターマーケットパーツを用いた自分なりのカスタムで解消できそうな気がするので。

もちろん、快適性を何よりも重視する人にはNX400が向いているだろうし、クラシックテイストにこだわる人はGB350を選んだほうが満足度は高いと思う。でもCL500には独自の魅力としてスクランブラーならではの資質、前言と矛盾するようだが、動的な軽さや程よいヤンチャさが備わっているので、僕のように下道メインのツーリング&スポーツライディングが大好きなライダーなら、その資質にグッと来るに違いない。と言っても3人の友人が述べた厳しい意見を考えると、パッと見では魅力が伝わりづらいのかもしれないが、今現在の僕はこのバイクにかなりの好感を抱いているのだ。

※近日中に掲載予定の第3回目では、筆者独自の視点で行う各部の解説に加えて、約1100kmを走っての実測燃費を紹介します。

キャラクターを考えるとコストが安く抑えられるバイアスでいいような気がするけれど、CL250/500の純正タイヤはラジアル。標準装備品はNX400/500と同じ、ダンロップ・トレールマックスMIXTOURだ。

主要諸元

車名:CL500
型式:8BL-PC68
全長×全幅×全高:2175mm×830mm×1135mm
軸間距離:1485mm
最低地上高:155mm
シート高:790mm
キャスター/トレール:27°/108mm
エンジン形式:水冷4ストローク並列2気筒
弁形式:DOHC4バルブ
総排気量:471cc
内径×行程:67.0mm×66,8mm
圧縮比:10.7
最高出力:34kW(46ps)/8500rpm
最大トルク:43N・m(4.4kgf・m)/6250rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
ギヤ・レシオ
 1速:3.285
 2速:2.105
 3速:1.600
 4速:1.300
 5速:1.150
 6速:1.043
1・2次減速比:2.029・2.733
フレーム形式:ダイヤモンド
懸架方式前:テレスコピック正立式φ41mm
懸架方式後:ツインショック
タイヤサイズ前:110/80R19
タイヤサイズ後:150/70R17
ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:192kg
使用燃料:レギュラーガソリン
燃料タンク容量:12L
乗車定員:2名
燃料消費率国交省届出値:43.0km/L(2名乗車時)
燃料消費率WMTCモード値・クラス3-2:27.9km/L(1名乗車時)

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著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…