足つきは? 実走燃費は? 取り回しは??? 使い倒して気づいたアレコレ。 ホンダCL5001000kmガチ試乗【3/3】

旅好き目線で考えると、物足りないところはある。とはいえ、CL500で約1100kmを走って運動性能に感心した筆者は、シートやリアショック、積載性能などに手を加えて、自分好みの仕様を作ってみたいと感じているのだった。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

ホンダCL500……863,500円

フロント2.50×19/リヤ4.50×17のアルミキャストホイールは、NX400/500の前任となる400/500Xからの転用のようだ。ちなみにNX400/500のホイールは、スポークの本数を14→10本に減らすことで軽快な雰囲気を獲得している。

ライディングポジション ★★★★☆

第2回目で記したように、CL500のライディングポジションは旧車的で、現代のスポーツネイキッドを基準にすると、ハンドルは高くて幅広く、シートも高く、ステップは前方に設置されている。ただし、ネオクラシックという同じ分野のGB350と比較すると、ハンドル幅は4cmほど広く、ステップはやや後方。個人的にこういう乗車姿勢は大好きだが、座面が790→820mmになる純正アクセサリーのフラットシートを装着すると、さらに好感触が得られるので(乗り心地が上質に、ハンドリングが軽快になる)、ノーマルの評価はあえて★×4とした。

身長150cm台のライダーでも不安を感じないほど、シートが低くて足つき性が良好だったレブルとは異なり、CLで安心感を得るためには、最低でも165cm前後の身長が必要だと思う(筆者は182cm)。もっともそういった敷居を下げるため、アフターマーケット市場では複数のメーカー/ディーラーがローダウンキットを販売している。

タンデムライディング ★★★☆☆

タンデムラインディングで印象的だったのは、後部座席に座った身長172cm・体重52kgの富樫カメラマンから、発進してすぐに「もうちょっと前に座れる?」と聞かれたこと。改めて振り返ると、過去のガチ1000kmのタンデムライディングでそういう質問をされた記憶はない。後にその理由を尋ねてみると、「意外に座面が小さいんだよ。ついでに言うならシートとフレームの固定が甘いのか、常にユラユラ揺れている感覚があってどうにも落ち着かなかった。ステップ位置とタンデムベルトの握り心地が良好なだけに、惜しい気がするね」との答えが返ってきた。ただし運転手の印象は、可もなく不可もなくで、ちょっと前に座ることにも違和感はほとんど無し。

取り回し ★★★☆☆

車重192kg、軸間距離1485mmという数値は、開発ベースのレブル500(191kg、1490mm)と大差がないものの、スクランブラーとしての資質を獲得するため、CLはレブル+3度となる38度のハンドル切れ角を確保し、最小回転半径をレブル-0.2mの2.6mに設定。そのおかげで取り回しはレブルより容易だが、近年のミドルネイキッドの基準で考えると、特筆するほど良好なわけではない。参考として他社のネオクラッシク系ミドルツインの車重/軸間距離/ハンドル切れ角/最小回転半径を記すと、ヤマハXSR700は188kg/1405mm/35度/2.7mで、カワサキZ650RSは189kg/1410mm/35度/2.6m。

ハンドル/メーターまわり ★★★★☆

幅広で絞りが少ないハンドルや小ぶりなガソリンタンク、単眼のメーターは、スクランブラーの流儀に従ったパーツ。なおレブル250/500が堂々としたルックスと扱いやすさを両立するため、フロントフォークの傾斜角とフレームのキャスター角が異なるスランテッドアングル(30/28度)を採用するのに対して、CL250/500はいずれも27度のオーソドックスな構成。ネガ表示のLCDメーターはレブルからの流用だが、パイプを用いたクラシックテイストのステーは専用設計だ。

左右スイッチ/レバー ★★★☆☆

左右スイッチボックスはホンダの定番品。もっとも電子制御式スロットルや電子デバイスの普及が進んだ昨今では、このパーツを目にする機会は徐々に少なくなっている。なおレブルのスイッチボックスは完全な別物。

グリップラバーは細身のオフロードタイプ。バーエンドウェイトは備わらないものの、高回転域でグリップ周辺に発生する振動はまったく気にならないレベルだった。ブレーキ/クラッチレバーの位置調整機構はナシ。

燃料タンク/シート/ステップまわり ★★★☆☆

ガソリンタンクのホールド感はライダーの体格で異なる模様。ニーグリップラバーとその下に備わる細身のラバー(500のみの装備)を“絶妙”と感じる人がいれば、それらの形状と配置がいまひとつしっくり来ない人もいて、僕の印象は後者。レブルとはまったく異なるデザインのシートは、快適性と運動性の向上に大いに寄与。ただし前述したフラットシートのフィーリングを知ってしまうと、メイン部の肉厚がもっと欲しくなる。

右側ステップの内側にはリアブレーキのマスターシリンダーが設置されている。とはいえ、左右非対称の違和感は抱かなかったし、峠道でのバンク角にも不足は感じなかった。バーからラバーを取り外すと、オフロードでのグリップ力を意識したギザギザタイプとなる。

積載性 ★★★☆☆

シートレールの側面にはリアキャリアやグラブバーの装着を意識したネジ×4が備わるものの、荷かけフックは存在しないので、ノーマル状態での積載性は優秀とは言い難い。ただし、シートにベルトを通すタイプのバッグを装着したみたところ(写真はタナックスのダブルデッキシートバッグ)、安定感はなかなか良好だった。なおホンダは積載性を高める純正アクセサリーとして、数多くのバッグをラインアップ。シート下にはETCユニットの搭載を前提としたスペースが存在。

ブレーキ ★★★★☆

フロント片押し式2ピストン/リヤ片押し式1ピストンのブレーキキャリパーはレブルと共通だが、フロントφ310mm/φ240mmのディスクはレブルとは別物で、フロントはフローティング式を選択。世の中にはフロントのダブルディスク化を希望するライダーがいるようだけれど、個人的には現状の制動力とコントロール性に不満は感じなかった。ちなみに、過去にガチ1000kmで取り上げたレブル500のABSに抱いた違和感を、CL500はきっちり解消。

サスペンション ★★★☆☆

フロントフォークはφ41mm正立式、リアサスペンションはオーソドックスなツインショックで、調整機構はリアのプリロードのみ。開発ベースになったレブルに対して、ホイールトラベルをフロント140→150mm/リヤ95→145mmに延長したことは高く評価したいものの、悪路での衝撃吸収性は意外に悪く、リアにはダンパー不足を感じた。

車載工具 ★★☆☆☆

車載工具袋に収まる工具・道具は、差し替え式ドライバー、リアショックのプリロード調整用フックレンチ、10/14mmのスパナ、ヒューズプーラー、ヘルメットホルダーとして使用するワイヤーの5点。今どきのミドルでは平均的な点数でも、レブル500はスパナが1本多かったことを考えると、ちょっと残念な気がしないでもない。

実測燃費 ★★★★★

1回目の給油では予想以上の好燃費が記録できたものの、以後は30km/ℓ以上に到達できず……。とはいえ、近年のミドルツインの燃費は20km/ℓ台中盤が定番だから(過去にガチ1000kmで取り上げた車両の実測燃費は、カワサキZ650RS:23km/ℓ、スズキGSX-8R:24.5km/ℓ)、トータルで28.6km/ℓは十分に立派な数字。なお今回の試乗では早めの給油をしてしまったが(残量が2.2ℓになった時点で始まる警告灯の点滅は1度も見ていない)、燃料タンク容量は12ℓなので、航続可能距離は28.6×12=343.2km。

CL500にはガチンコのライバルが存在しない。あえて言うなら、ハーレー・ダビッドソンX500(日本市場での価格は83万9800円)や、トライアンフ・スクランブラー400X(78万9000円)などが、競合車になるのだろうか。

主要諸元

車名:CL500
型式:8BL-PC68
全長×全幅×全高:2175mm×830mm×1135mm
軸間距離:1485mm
最低地上高:155mm
シート高:790mm
キャスター/トレール:27°/108mm
エンジン形式:水冷4ストローク並列2気筒
弁形式:DOHC4バルブ
総排気量:471cc
内径×行程:67.0mm×66,8mm
圧縮比:10.7
最高出力:34kW(46ps)/8500rpm
最大トルク:43N・m(4.4kgf・m)/6250rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
ギヤ・レシオ
 1速:3.285
 2速:2.105
 3速:1.600
 4速:1.300
 5速:1.150
 6速:1.043
1・2次減速比:2.029・2.733
フレーム形式:ダイヤモンド
懸架方式前:テレスコピック正立式φ41mm
懸架方式後:ツインショック
タイヤサイズ前:110/80R19
タイヤサイズ後:150/70R17
ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:192kg
使用燃料:レギュラーガソリン
燃料タンク容量:12L
乗車定員:2名
燃料消費率国交省届出値:43/0km/L(2名乗車時)
燃料消費率WMTCモード値・クラス3-2:27.9km/L(1名乗車時)

キーワードで検索する

著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…