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次世代車に本気のカワサキ
カワサキの勢いが止まらない。2023年10月に開催された「ジャパンモビリティショー」の会場で、EV(電気自動車)のモーターサイクルと、ストロングハイブリッドのモーターサイクルを発表したかと思えば、2024年初頭から中盤にかけて、発表した全ての車種を発売した。
EVバイクは「NINJA e-1」「Z e-1」、ハイブリッドバイクは「NINJA 7 HYBRID」「Z7 HYBRID」。次世代のパワートレインを積んだこの4台が、カタログモデルとしてラインアップされており、誰でも購入することができる。
特に「NINJA/Z 7 HYBRID」は、世界唯一のストロングハイブリッド(EV走行も可能な高出力モーターと大容量バッテリーを搭載)という画期的なモデルである。
しかし2024年はこれだけにとどまらなかった。鈴鹿8耐の会場で「水素モーターサイクル(水素エンジン研究車)」が発表され、実際にコースを走ったのだ。
内燃エンジンにこだわる漢気
「水素」というと「燃料電池」を想像する人もいるかもしれないが、今回のバイクは水素を燃料に内燃エンジンを回して動くもの。燃料以外は、加速感も音も一般的なエンジン式のバイクと変わらないのだ。
水素エンジン研究者についての情報は一部解禁されている。ベースとなっているのは「NINJA H2 SX」で、それを水素燃料に対応させた。
水素タンクは車体後方の左右に配置されている。ツアラーのサイドケースが燃料タンクになったと考えれば良い。タンクは700MPaの圧力に対応できるもので、片側25Lの容量を持つ。水素の充填量は2kgだ。
タンクがこの大きさとなっているのは、水素ステーション側の規格によるもの。2kg以下のタンクはステーションで充填できないという。そのため、現状はこのような形となっている。逆に言えば、このバイクは街の水素ステーションを利用することが可能だ。
作る・運ぶ・使うを自社で完結
輸入に依存せず国内製造が可能で、燃焼後に排出するのが水という水素を、純粋なエンジン車で利用できるのは夢が広がる。
「内燃エンジンならではの胸すく加速感や鼓動、官能的な音を感じられながら、ライダーひとりひとりが知らないうちにカーボンニュートラルに貢献しているという世界を目指している」
カワサキの担当者はそう話す。
「もっと元気に走らせることも可能だが、今回(鈴鹿8耐)はお披露目なのでパレードランという形にした。これで完成ではなく、研究開発は始まったばかり。2030年代初頭には皆様にお届けできるよう、開発を続けていく」(担当者)
カワサキと水素との関係は実は深い。「作る・運ぶ・使う」を自社で全て行っているのだ。
「運ぶ」の麺については、すでに自動車業界で活用されている。トヨタ自動車がワークスとして参戦しているレース「スーパー耐久」で、同社の水素エンジンカローラに使用する水素を輸送した。パートナー企業として、トヨタのマシンにカワサキのロゴマークが大きく貼られていたことも感慨深い。
そして今回は、「自社で使う」ことを、自社製のバイクで実現した。研究開発は今後も続くということで、進展を引き続き追っていきたい。