英国のカスタムビルダー❝マットモーターサイクルズ❞製のシンプルなカスタムモデルFSR250の特色を探ってみました

【試乗記】カスタム感満点、足つき良好、シートは硬め。|マットモーターサイクルズ・FSR250

英国バーミンガムに拠点を置くマットモーターサイクルズは、価格、車格のどれをとってもより身近に感じられるカスタムバイクを創出しています。クールで取り回しがラクでレトロな街乗りバイク。そんなマットモーターサイクルズのモデルたちは、どれも個性的です。それらの中から今回は、シンプルなストリートモデルFSR250に試乗してみました。

写真:徳永茂
協力:MUTTモーターサイクルズ https://www.muttmotorcycles.jp/
   MUTT東京セントラル http://mytec-realize.com/mutt/

コンパクトにまとめられたネオレトロスタイルが特徴

英国発祥のカスタムビルダーだけに、生産されるバイクのデザインにはトラディショナルな要素が取り入れられています。60~70年代のロードスポーツモデルを彷彿とさせ、随所にカスタムらしさを散りばめたFSR250のフォルムは、どの年代のライダーにも似合うと感じます。
それだけじゃありません。ショートフェンダーにショートマフラー、そして前後17インチアルミキャストホイールの採用によって軽快感も表現していて、実際に130㎏という軽量ボディに仕上げているのですから、いっそう親近感を抱きます。結果として、FSR250は長く付き合っていけるモデルになっていると感じます。

マットモーターサイクルズFSR250……739,200円

FSR250のボディはコンパクトでスリムです。しかもシート高は790㎜と低いので、乗り降りしやすく足つきの不安もありません。さらに、サイドスタンドを払うために車体を起こす際にも重さはあまり感じません。オフロードバイクより軽い130㎏の車重は、さまざまな場面で効果を発揮してくれます。
ハンドルはセミアップのパイプハンドルが装備されています。手前にやや絞り込まれた形状なので上体を直立させたままグリップを握ることができます。ステップ位置にも違和感がなく、ハンドル、シート、ステップの位置関係は日本人の体格にもマッチしていると思います。いずれにしても自然なライディングフォームを取ることができます。
スリムでコンパクトなボディは一見すると窮屈そうなポジションのようだが、実際には自然な上体を生んでくれ、下半身にもゆとりがある
ご覧のように足つき性は良好。小柄な女性でも片足をしっかりと着けられるレベルだ
両足を下ろしたときにステップに当たることがなかったのが利点
シート高は790㎜と低く抑えられているため、両足がラクに着けられるほど足つき性がいい。ステップとの干渉も気にならなかった

パワフルさはないが実用上問題ないエンジン性能

セル一発で目覚めたエンジンは、クランクケース下に取り回されたショートメガホンマフラーからタタタタッとシングルらしい歯切れのあるサウンドを放ちます。カスタムバイクらしく(?)音量はやや大きめなので、早朝の住宅地での始動には気を遣いそうです。
ミッションは5速リターン式なので操作に迷うことはありません。ちょっと遠いクラッチレバーを握り1速へシフト。シフト操作には若干硬さがありました。まあこのあたりは乗り込むうちにこなれてくるかもしれません。
アクセルをグイっと開けてスタートします。レスポンスがあまりにも穏やかなので上体が前に出そうになりました。強烈な加速とかパワーという言葉はFSR250には無縁です。エキゾーストノートの迫力のわりに車体は前に出ません。とはいっても、市街地の幹線道路を走行していて出足で車に負けるとか、追い越しに苦労するなんていうほど非力じゃありません。それこそ安全運転を心掛けて走るには打ってつけのエンジン性能といった印象です。ただし、アクセルオフでパンパンとアフターファイアーするのがちょっと気になるところではありますが、これもカスタムバイクの定番なのかも。
話が前後してしまいましたが、FSR250に搭載されるエンジンは、249㏄空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒です。一昔前のエンジンといった感じですが、吸入にはフューエルインジェクションを採用していてユーロ5に適合させています。最高出力13kW(17.2hp)、最大トルク18Nmというスペックです。この数値を見てもわかるとおり、スピードやパワーではなく実用的要素が強いエンジンなのです。今回は高速走行しなかったのですが、100km/h巡航は可能でしょうが、アクセル全開状態で走ることになるので疲れるかもしれません。メーカーであるマットモーターサイクルズでも、FSR250はあくまでもローダウンストリートスポーツだと定義しています。なので、ロングツーリングやワインディングを攻めたいライダーには向いていません。
249cc空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒はFI装備でユーロ5に適合。最高出力、最大トルクともに低い数値だが、街乗り用として考えれば不足のないレベル

ニュートラルで素直なハンドリングだから気軽に走り出せる

クールでかっこいいFSR250で街を流す。そんな付き合い方が似合う。控えめなエンジン性能も街乗りには不足ないし、ハンドリングだってクセがなく素直です。運動性能が抜群に高いわけじゃないのですが、バイクとの一体感がつかみやすくて、旧知の仲のような感覚で乗ることができます。
しかしながら乗り心地の面では及第点は与えられません。見た目はかっこいいシートですが、座り心地は硬くて快適性には欠けます。まあ街乗りなら我慢できますが、もしツーリングにも乗っていきたいのであればシートは改良する必要があります。前後サスペンションも動きが硬く、ちょっとした段差にも跳ねまくります。場合によっては安全性にも影響するので、ユーザーになったあかつきには、オーバーホールもしくはモディファイしたほうがいいと思いました。あるいは、多少高価でも減衰特性に優れたサスペンションに交換することをお勧めします。
ABS装備の前後シングルディスクブレーキは、取り立てて高性能というものではありませんが、日常走行で大きな不満は感じません。ただし、より良いフィーリング、制動力を求めるなら、パッド交換してみるのもひとつの方法です。
このFSR250も含めてマットモーターサイクルズが量産するカスタムバイクの基本は、見た目のかっこよさにあります。しかもそれを実現するためにさまざまなパーツを組み合わせているのですが、決して高価な部品は使用していません。だからこそ身近なカスタムバイクとして提供できる製品に仕上げられているのです。そういう点においては唯一無二のバイクだといえるでしょう。

ディテール解説

アルミ製のパイプハンドルはセミアップタイプで良好なポジションを実現してくれる。左右のスイッチ類も日本製のものと同じで使いやすい
小さな丸型メーターが装備。アナログ式のタコメーターをメインにスピードやギアポジションを表示する液晶デジタルディスプレイを内蔵する。ニュートラルではNが表示されるが、ランプがないことには違和感を覚える
ガードを装備したヘッドライト。今では珍しいハロゲンライトを使用している
丸型の小さなテールランプ。ウインカーランプも小型のものを装着していて、すべてがコンパクトにまとめられている
MUTTモーターサイクルズのロゴがあしらわれた燃料タンクは14L容量。丸型のシンプルな形状だがニーグリップ性は良好
ステッチ仕上げが美しいダブルシート。しかし見た目の良さに反して座り心地は硬い
クランクケース下部に取り回されたマフラーは、ショートタイプのメガホン。低重心化、マスの集中化にも貢献している
ストリートモデルながらエンジンアンダーガードが装備されている
フロントフォークは正立タイプでフォークブーツが装着されている。動きはかなり硬い。ホイールは17インチのアルミキャスト。ABS装備のシングルディスクブレーキにはピンスライド式2ポットキャリパーが装備されている
リアサスペンションは2本ショック式で、サブタンク付きガスショックを採用。一見するとスポーティだが、やはり動きが硬い。リアブレーキにもディスク式が装備されていてABSも標準装備だ。ホイールは17インチのアルミキャスト
装着するタイヤはティムソンのTS822,823。オンロード志向のアドベンチャータイヤだ

主要諸元

排気量:249cc(0.249L)
トランスミッション:5速リターン式
最大出力:13 kW (17.2 hp)
最大トルク:18Nm
シート高:790mm
全長 X 全幅 X 全高:2060mm × 760mm × 1120mm
車両重量:130kg
フューエルタンク:14L
エンジン:4-ストローク シングルシリンダー
燃料供給方式:フューエルインジェクション
規格:ユーロ5
タイヤ・ホイール(前後):17インチ
ブレーキ:ABSブレーキシステム
エキゾースト:左出し

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著者プロフィール

栗栖国安 近影

栗栖国安

TV局や新聞社のプレスライダー、メーカー広告のモデルライダー経験を持つバイクジャーナリスト。およそ40…