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薄暮時間になぜ事故が多い?
秋は、ツーリングをはじめ、通勤・通学でもバイクに乗るのが快適。だが、この季節では、例えば、ツーリングなどの帰り道で、まだ夜というほどの遅い時間でもないのに、少し周囲が見えづらくなった経験をした人も多いだろう。
そして、そう感じることがあったら、特に運転に注意したい。なぜなら、その時間帯は、交通事故が多発する「薄暮時間」である可能性が大だからだ。
薄暮時間とは、日の入り時刻の前後1時間のこと。薄暗くて周囲が見えづらくなる時間帯を意味し、例年、交通死亡事故が多く発生することで知られている。
薄暮時間に事故が多い要因は、秋は昼間が短く、日の入りの時間も早くなる傾向となることが挙げられる。より具体的には、日の入りの時間が、17時台〜19時台といった帰宅する人やクルマが多い時間帯と重なることで、事故も多くなるといえる。
その裏付けのひとつとして、警察庁では、「薄暮時間帯における死亡事故」の分析データを公表している。下2つの表がそれで、令和元年(2019年)〜令和5年(2023年)における時間帯別・月別の死亡事故件数を表している。
左図の時間帯別の死亡事故件数を見ると、死亡事故は17時台が最多で、2位が18時台、3位19時台と、夕方に死亡事故が多いことが分かる。また、右図は、薄暮時間帯における月別の死亡事故件数を現しているが、10月・11月・12月は特に多い。つまり、薄暮時間の死亡事故は、ちょうど秋といえる時期に比較的集中するといえるのだ。
これらのデータからも、秋は事故が増えやすくなる季節であることがよく分かる。
薄暮時間に事故を避ける対処法
では、こうした秋の薄暮時間に事故を避けるにはどうすればいいだろう。
最も簡単なのは、できるだけ明るいうちに帰宅すること。日が沈む前に自宅に到着していれば、当然だが、薄暮時間のリスクを回避することができる。そのため、ツーリングなどでは、できるだけ余裕あるスケジュールを立てることが大切だ。
ただし、昼間の短い秋では、なかなか日没前の明るいうちに帰るというのも難しいだろう。思いのほか、周囲が暗くなってしまい、帰宅時間が薄暮時間と重なるケースは十分にありえる。
では、そうした場合はどうするべきか。まずは、これも当然ながら、できるだけ速度を落として走ることだ。特に、市街地を走行する場合は、歩行者や自転車が道路を横断したり、交差点で他の車両が急に目前に飛び出してくることなども十分に考えられる。
そうした場合、周囲が見えづらい薄暮時間だと発見が遅れる=回避行動の遅れとなり、事故につながりやすい。そのため、くれぐれも速度を落とし、周りに気を配りながら走ることが重要なのだ。
また、もし可能なら、どこかで休憩するなどで時間をつぶし、薄暮時間をあえて避ける手もある。より遅い時間帯、十分に夜になり、他のクルマや歩行者などの交通量が少なくなってから帰るのも、ある意味で対処法のひとつだといえる。
もちろん、暗い夜道も慎重な運転は大切。また、夜はもちろん、薄暮時間でも、自分が周囲のクルマや歩行者から発見されやすいように、反射板付きのウエアを着ておくというのも自衛策となるはずだ。
ほかにも、秋は、朝晩と昼間の寒暖差が大きいことで霧が出やすいなど、環境の急な変化により、事故につながりやすい状況も意外とある。薄暮時間はもちろん、事故の要因となりそうな気候の変化などにも十分に気をつけながら、くれぐれも安心・安全な走りを心掛けたいものだ。