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最高出力や最大トルクとは?
近年、スペック表上で、最高出力は「kw[PS]/rpm」、最大トルクは「N・m[kgf・m]/rpm」といった単位で表記されている。
たとえば、ホンダのレブル250では、
最高出力19kW[26PS]/9,500rpm
最大トルク22N・m[2.2kgf-m]/6,500rpm
という表記だ。
近年、世界的に、最高出力はkW、最大トルクはN・mといったいずれも国際規格で表されるようになった。だが、ちょっと前まで、日本では、最高出力はPS、最大トルクはkgf-mで表記していた。筆者のような昔からのバイク乗りなどには、そちらの方が慣れていて、イメージもしやすい。そのため、日本メーカーでは、現在、両方の数値をスペック表上に表記していることが一般的だ。
なお、これらは以下のように換算できるので念のため。
出力:1PS=0.7355kW
トルク:1kgf・m=9.80665N・m
また、各数値の最後にあるrpmはエンジン回転数のことで、それぞれの数値が何回転で発生するのかを表している。
なぜ2つ表記するのか?
これらのうち、最高出力は、ざっくりいえば「そのエンジンは、最高でどのくらいの力が出せるか」を現したもの。いわば「馬力」のことだ。また、最大トルクとは、エンジンのクランクシャフトが生み出す「回す力=トルク」の最大値を意味する。
では、なぜ、これら2つの数値をスペック表に表示するのか。それは、出力とトルクが密接な関係にあるからだ。
出力とトルクの関係は、よく自転車にたとえられる。自転車の場合、ペダルを踏み込む力がトルクだ。踏み込む力、つまりトルクが大きいほど自転車はより加速する。それと同じで、バイクの場合も、トルクは加速性能と大きな関係がある。
一方、出力は、トルクにペダルの回転数をかけたもの。「出力=トルク×回転数」といった数式で表すことができる。そして、出力が大きいほどスピードを出しやすくなるため、速度と大きな関係を持つ指標が出力ということになる。
最高出力や最大トルクは常に出てる訳じゃない
こうした関係性から、ざっくりといえば、最高出力はバイクがスピードを出すための力(馬力)の最高値、最大トルクは車体を加速させる力の最大値といった感じの意味合いになるといえよう。
ただし、いずれも、そうした力が常に出ている訳ではなく、前述したrpm=発生回転数のときに最も大きな数値が出ることになる。しかも、たとえば、同じ排気量の同系エンジンを搭載していたとしても、バイクの特性などにより、あえて数値を変える場合もある。
たとえば、ホンダのアフリカツイン系1082cc・水冷4ストローク直列2気筒の場合。同系のエンジンを積みながらも、アドベンチャーモデルのCRF1100Lアフリカツインとクルーザー系のレブル1100/Tでは、出力やトルクは以下のように違う。
【CRF1100Lアフリカツイン】
最高出力75kW[102PS]/7,500rpm
最大トルク112N・m[11.4kgf-m]/5,500rpm
【レブル1100/T】
最高出力64kW[87PS]/7,000rpm
最大トルク98N・m[10.0kgf-m]/4,750rpm
最高出力、最大トルク共に、数値的にはCRF1100Lアフリカツインの方が大きい。だが、レブル1100/Tの方が、発生回転数はいずれも低い。そのため、より低速域で出力やトルクを発生し、発進時などでの加速がスムーズなことが予想できる。対して、CRF1100Lアフリカツインは、より高回転時のパワフルさを味わえる設定となっている感じだ。
このように、これらの数値を見ることで、同系エンジンでも、バイクの種類や特性に合わせて、セッティングを変えていることが分かる。これにより、各モデルの乗り味に、より個性を生み出す工夫を施しているのだ。
いずれにしろ、最高出力や最大トルクは、そのバイクがどんな走りやエンジンフィールを体感できるのかを知るための指標となる数値だ。例えば、愛車を新しく購入する際などには、ぜひ参考にしてみて欲しいスペックのひとつだといえよう。