なんか古臭い=トラディショナルな良きバイク。HILTS125はお気軽系ビンテージスクランブラー|マットモーターサイクル試乗記

長年に渡ってビンテージカスタムバイクを生産してきたマットモーターサイクルズは、もっと身近に感じられるバイクを造りたいという思いから現在、250㏄モデルだけじゃなく手頃な価格で取り回しがしやすい125㏄モデルも豊富にラインナップしています。それらの中から今回は、ビンテージスクランブラーのHILTS125を選択し、市街地の道を走行してみました。

写真:徳永茂
協力:MUTTモーターサイクルズ https://www.muttmotorcycles.jp/
   MUTT東京セントラル http://mytec-realize.com/mutt/

メーカー希望小売価格(消費税込み):578,600円

都会に似合うビンテージスタイル

マットモーターサイクルズ・HILTS125……578,600円

ありきたりですが、古き良き時代の……なんていう表現がしっくりくる50年代の英国車を思わせるビンテージスタイルは、バイクらしい存在感にあふれていると思います。柔らかな曲面で構成されたタンクやタックロールの入ったシート、それにブーツカバー装着のフロントフォークに2本ショック式リアサスの組み合わせは、普遍的ともいえるバイクのデザインです。「なんか古臭いな~」と感じる人ももちろんいると思います。しかし昔のバイクを知る熟年ライダーには懐かしく、そして若いライダーにとってはむしろ新鮮に映るんじゃないでしょうか。
特徴的なところはほかにもあります。HILTS125はスタイリングだけ見ればトラディショナルなロードモデルです。しかし前後18インチのワイヤースポークホイールには極太のブロックタイヤが装着してあり、さらにヘッドライトにはガードまで装着しています。結果、スクランブラー的なバイクに仕上がっているのです。いずれにしても、見飽きることはないデザインなので、長く乗り続けられるモデルになっていると思います。

125ながらゆとりあるポジションを実現

前後18インチタイヤを履いたフルサイズのボディは125とは思えない大きさで、実際に乗車してみると250㏄クラスと大差ないように感じます。実際、兄貴分であるHILTS250と比較してもほんのわずかコンパクトなだけです。フルサイズといってもそこは原付二種のバイク、シート高は790㎜なので乗降性は悪くありません。車重も117㎏に収められているので取り回しもラクでした。ちなみに117㎏の車重はCT125ハンターカブよりも軽いのです。
乗車するとハイライズのブレースドハンドルがアップライトな上体を実現してくれます。職人によって手縫いされたビンテージブラウンシートは自由度が広く、体格に関係なく適切な着座位置が確保できます。シート自体のクッション性はやや硬めですが、窮屈に感じないポジションをとることができます。これなら街乗り用として身近な存在になってくれるだけじゃなく、足を延ばしたツーリングにも対応してくれると思いました。

足つきチェック(ライダー身長180cm)

自由度が広くアップライトなポジションは、体格に関係なくゆとりあるライディングを実現してくれる
シート高は790㎜で足つき性はいい。ただしサスペンションの沈み込みがあまりないので、想像するより高く感じる

ストリートユースには不足のないエンジン性能

エンジンはシンプルな空冷シングル。スズキGN125をベースにしたもので5速ミッションを採用しています。最高出力は11ps程度なのでパワフルな印象はありません。しかしスムーズにレスポンスする特性でだれにでも扱いやすく、ストリートでの発進加速に不足はありません。パワー、トルクともに適度なものなので、日常的にアクセル全開にできる爽快感が味わえるのがひとつの利点です。市街地走行から郊外のツーリングといった使い方にはちょうどいいと思いました。ただし、上りが続く峠道などでは加速が要求どおりにいかず若干ストレスがたまるかもしれません。まあ125㏄なのでそんなものかと理解して走る必要があります。
心臓部に据えられたエンジンは、フューエルインジェクションを装備した空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒。124㏄の排気量から約11psの最高出力を発生する。スペック的にもまた実走でも突出したトルクやパワーは発揮しないが、全域にスムーズにレスポンスしてくれ、発進加速も決して悪いわけじゃないので、日常的に街中の移動で使ったり、郊外へのツーリングに乗って行ってとくに不満はない。ただし勾配が続く山道の上りでは低めのギアで引っ張らないとうまく加速しないかもしれない。ミッションのタッチや入りには問題はないし、ギア比についても適切

ゴツゴツした乗り心地は要改善

先述したとおり、HILTS125はフルサイズボディのため原付二種として大柄です。そのためポジションにゆとりがあってロングツーリングもラクそうに思えたのですが、実際に走り出してみると乗り心地がゴツゴツと硬くて、快適とはいいがたいものでした。タックロールがあしらわれたブラウンシートは見た目は良いのですがクッション性に乏しく、座り心地は良くありません。さらに前後サスペンションの動きも渋く、結果的にゴツゴツした乗り味になってしまっています。サスペンションがこなれてくれば多少は改善されるとは思いますが、モディファイするなり交換するなりしたほうが良いと感じます。
車重が軽いので基本的には軽快な走りを見せてくれます。しかしタイヤが太いことでハンドリングに重さを感じるときもあります。コーナーへ進入する際のバンク操作初期にとくに感じるので、十分な減速とムリのないバンキングが必要だと思います。
ブレーキは前後シングルディスクなのですが、制動力自体に大きな問題はありません。ただ繊細なフィーリングはありません。サスペンションの作動性が良くなればもう少し改善されるとは思います。

HILTS125のビンテージスクランブラースタイルは、いま見るとファッショナブルに感じられて、自然の中はもちろん都会の風景にも似合うと思いました。価格面では同クラスの日本車に比べてわずかに高めですが、流行に左右されず長く付き合っていけると思えばデメリットとはいえません。また、個性を主張したいライダーにも最適なモデルの1台だと思います。

ディテール解説

ハイライズのブレースハンドルがスクランブラーっぽさを見せる
アナログ式タコメーターとデジタルディスプレイを内蔵した丸型メーター。ニュートラルを含めてギヤポジションはディスプレイに表示
パッシング、ヘッドライト切り替え、ウインカー、ホーンの各スイッチが並ぶ左スイッチ
右側にはキルスイッチ、セルスタータースイッチが配置。ブレーキ、クラッチレバーにはアジャスターは装備されていない
丸型ヘッドライトはハロゲンランプを採用。前部にはプロテクトグリルが装備されていて、スクランブラーの雰囲気を盛り上げている
丸型テールランプはカスタムモデルらしく小型のものが装備される
美しい造形の燃料タンク。塗装が非常にきれいなのが印象的
ブラウンのタックロール表皮を採用したダブルシート。ビンテージスタイル構築に一役買っている。また高級感を演出しているのも特徴だ。ただしクッション性は良くない
ブレーキは前後シングルディスクを装備していて、コンビネーションブレーキシステムを採用している
リアサスペンションはもちろんツインショック式で、プリロード調整可能
ステップは固定式で、ラバータイプとなっている

主要諸元

排気量:124cc(0.124L)
トランスミッション:5速リターン式
最大出力:8.2 kW (10.8 hp)
最大トルク:10Nm
シート高:790mm
全長×全幅×全高:2020mm×800mm×1090mm
車両重量:117kg
フューエルタンク:13L
エンジン:4-ストローク シングルシリンダー
燃料供給方式:フューエルインジェクション
規格:ユーロ5
タイヤ・ホイール(前後):18インチ
ブレーキ:コンビブレーキシステム
エキゾースト:右出し

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著者プロフィール

栗栖国安 近影

栗栖国安

TV局や新聞社のプレスライダー、メーカー広告のモデルライダー経験を持つバイクジャーナリスト。およそ40…