楽しいバイクを見つけました。しかも電動、原付二種。トレールバイク、GOWOW・ORIの悪路走破性に驚嘆‼

誤解を恐れずに言うなら、試乗前はちょっとした味見気分だった。とはいえ、ゴーワオのオーリを未舗装路で存分に走らせた筆者は、電動トレールバイクならではの魅力に圧倒されることとなった。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
協力●モータリスト合同会社 https://motorists.jp/

ゴーワオ・オーリ……1,210,000円

ゴーワオの最高出力は、第1弾のオーリが9kwで、第2弾のアルファは8kw。いずれも日本の車両区分では、原付二種扱いになる。

全日本トライアル選手権での強さに納得?

2024年の全日本トライアル選手権では、電動バイクが目覚ましい活躍を見せている。2023年からTY-Eで国際A級スーパークラスにフル参戦を開始したヤマハは、第3戦で初優勝&表彰台独占という偉業を成し遂げ、第4戦では1-2フィニッシュを達成。第6戦の同クラスでは、ホンダRTLエレクトリックが初参戦初優勝を実現し、第7戦も連覇。そして国際A級クラスでは、フランス生まれのEM:エレクトリックモーションが3勝を挙げ、第6戦が終了した時点でシリーズチャンピオンが決定した。

悪路走破性を重視するオーリは、ブロックパターンのタイヤを採用。

そんな状況をどう感じるかは人それぞれだが、中国のMODE社が独自に開発した電動バイク、ゴーワオのオーリでオフロードを体験した僕は、その戦績に合点がいく……ような気がしている。と言っても、オーリはトライアルに特化したレーサーではなく、一般道も走れるトレールバイクで(保安部品を装備しないファンモデルも存在。価格は110万円)、全日本トライアル選手権に参戦するトッププロと僕のライディングテクニックには天と地ほどの開きがある。とはいえ、オーリを駆ってヌタヌタ路面やガレ場を含めた未舗装路を走った僕は、既存のレシプロエンジンとは次元が異なる、電動バイクならではの戦闘力と扱いやすさに驚くことになったのだ。

シャシーの基本設計はオーリと共通だが、アルファのタイヤはオンロード重視。

もっとも、今回の試乗で未舗装路に入った直後の僕は、ジャジャ馬的な特性に困惑していた。何と言ってもオーリは、往年の50ccトレールバイクより軽くて細くて小さな車体に、42Nmの最大トルク(近年の400ccスポーツは37~39Nm近辺)の最大トルクを発揮するモーターを搭載しているのだから、それはまあ当然だろう。ところが、パラメーターの設定を変更してみると……。

パラメーターの変更で乗り味が激変

そこから先の話をする前に、オーリのパラメーター、モードとレスポンスの説明をしておこう(兄弟車のアルファも共通)。まずモードには、A:パブリックロード/B:フォレストロード/C:デザート/D:マディロードの4種が存在し、レスポンスはSheep/Hound/Cheetahの3種から選択できる。そして当初の僕は舗装路で好感触を得た最もパワフルにしてアグレッシブなA+Cheetahで走ってみたのだが、この設定ではフロントまわりがポンポン浮くわリアタイヤがいとも簡単に空転するわで、僕の腕ではいかんともしがたかった。

ところが路面状況に応じて、B/Dモード+Sheep/Houndを使えば(今回はCモードの出番はなかった)、このバイクはオォ~ッという感嘆の声が漏れるほど、従順で扱いやすくなるのだ。いや、それだけでは言葉足らずか。パラメーターを変更したオーリは、単にキャラクターが穏やかになるだけではなく、ヌタタヌ路面やガレ場でもリアタイヤが空転せず、トラクションがしっかり確保されているので、スロットルを開けてさえいれば車体が前に進む。だから、レシプロエンジンを搭載する既存のトレールバイクでは躊躇したような場面に遭遇しても、“何とかなるさ”という気持ちで突入できるし、そんな気持ちにオーリは見事に応えてくれたのである。

ちなみに、僕の場合は未舗装路でCheetahを常用するのは難しかったけれど(ただし、ガレ場で最もフロントアップが容易だったのはB+Cheetah)、オフロードが得意なライダーやトライアル経験者なら、B+Cheetahがしっくり来るのではないかと思う。そして僕がそうだったように、おそらくどんな技量のライダーでも、“電動ってここまで行けるのか‼”と驚くに違いない。

なお変幻自在で頼りがいがあるパワーユニットに加えて、オフロードを走るうえでは、クラッチ操作とギアチェンジが不要なのでスロットル操作やブレーキング、ライン取りなどに集中できること、車体が軽くて細くて小さいことも(車重は73kg)、電動バイク/オーリの美点である。いずれにしてもこのモデルには、既存のトレールバイクとは異なる魅力が備わっていて、レベルが大幅に異なっていようとも、全日本トライアル選手権に電動バイクで参戦するトッププロも、同じような印象を抱いているはず……と、僕は感じているのだ。

100kmの航続距離をどう感じるか?

そんなオーリの気になる点を挙げるとすれば、フル充電からの航続距離が100kmしかないことだろうか。とはいえ、バッテリー容量を大きくすれば、車体の軽さと細さと小ささという美点の何割かは失われるし、100km走れるなら日常の足として使えるので(加速力は抜群で、最高速は100km/hだから、市街地の機動力は十二分)、個人的には現状の構成と特性に不満を述べるつもりはない。もっともその背景には、僕が林道やコースに車両を運べるトランポを所有しているという事情があって、逆にトランポを所有していないライダーの目線で考えるなら、やっぱり航続距離はもっと欲しいだろう。

まあでも、そういうった事情はさておき、僕はオーリ(と兄弟車のアルファ)にかなりの魅力を感じている。電動ならではの魅力がここまでハッキリ体感できるトレール車は、おそらく、現時点では他に存在しないのだから。

ライディングポジション(身長182cm・体重74kg)

車体のコインパクトさが際立っているオーリだが、一般的なトレールバイクの基準で考えると、シート高はかなり高めの890mm。この数値は未舗装路を安心して走れる280mmの最低地上高を確保した結果だろう。
跨った感触はオフロードレーサーっぽいところがあるものの、車格が小さいおかげで緊張感はほとんど無し。1Gでの前後サスの沈み込みが多いこともあって、身長160cm以上のライダーなら不安は感じないと思う。

ディティール解説

アルミ製のハンドルバーは力強さを感じるテーパータイプ。コクピットの風景はシンプルに思えるものの、ゴーワオの電動バイクは随所に高品質で軽量なアルミ製パーツを採用している。左右スイッチボックスは専用設計。
液晶メーターは超コンパクト。画面左端はパワーモード×4とレスポンス×3の設定で、GEARという枠内の数字は任意で設定できる速度リミッター。ボディ右のダイヤルはオド/トリップ/時計の表示切り替え時に使用。
上面に取っ手と残量表示のインジケーターが備わるバッテリーは、一般的なバイクのガソリンタンク位置に収納。
バッテリー重量は約20kg。成人男子なら苦になるレベルの重さではないけれど、軽々脱着できるとは言い難い。
車体からバッテリーユニットを外したところ。なおツインスパータイプのフレームは、軽量&高剛性化に留意したアルミ鍛造製。
車両にはバッテリーチャージャーが付属。ゼロからフル充電に要する時間は3.5h(バッテリー容量が少ないアルファは2.6h)。
倒立式のフロントフォークはスプリット構造で、左にはプリロード、右には伸圧ダンパーのアジャスターが備わっている。
リアサスはリンク式。ピギーバックタイプのショックは、上部にプリロードと圧側、下部に伸び側ダンパーアジャスターを設置。
前輪はオフ車で定番の21インチではなく、19インチを選択。純正タイヤのRYMAX EVには、GOWOWのロゴが刻まれている。
ブレーキは前後ともφ203mmソリッドディスク+ラジアルマウント式4ピストンキャリパー。ホイールトラベルは前後210mm。

主要諸元

車名:ORI

全長×全幅×全高:1900mm×780mm×1100mm
軸間距離:1275mm
最低地上高:280mm
シート高:890mm

最高出力:9kw
最大トルク:42Nm
最大登坂角:55度
最高速度:100km/h
航続可能距離:100km(WLTC)

フレーム形式:ダイヤモンド
懸架方式前:テレスコピック倒立式
懸架方式後:リンク式モノショック
タイヤサイズ前:70/100-19
タイヤサイズ後:3.50-18
ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク

車両重量:73kg
バッテリー:73.8V 38.4Ah
充電時間:3.5h

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著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…