カワサキW230、「W」の末弟は足つきがイイ。エンジンもシンプルでイイ!

かつてナナハンが世に出る前のこと、1965年に公開され翌年から製造販売されたカワサキ「650W-1」(ダブワン)が日本の重量級バイク(大排気量車)を代表していた。堂々たる風格を誇る立派な存在感。当時のバイク好きにとって、それはまさに憧れの的だったのである。

REPOR●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●川島秀俊(KAWASHIMA Hidetoshi)/ 山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●株式会社 カワサキモータースジャパン

カワサキ・W230…….643,500円(消費税10%含む)

パールアイボリー×エボニー

カラーバリエーション

メタリックオーシャンブルー×エボニー

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オーソドックスなスチールパイプ製のセミダブルクレードルフレーム。一段と下げられたシートレールの低さが印象深い。

カワサキを象徴するブランド名は何だろうか? 多くのユーザーはおそらく「Z」あるいは「Ninja」と回答することだろう。 もちろん世代によってそれは異なって当然。しかしZが登場するより前の話をすると、バイクフリーク達から羨望の眼差しを集めていたのは間違いなく「W」だった。
ちなみに世界中の度肝を抜いたホンダ・CB750FOURがデビューしたのは1969年のこと。つまり1960年代後半の国内市場で、当時最大排気量のバイクとして君臨したのが650W-1だったのである。
古い話で恐縮だが、そんなWのルーツはメグロ「スタミナK」にある。白バイにも起用されていたKは英国のBSAを手本に開発されたモデルで直立500ccOHVの2気筒エンジンを搭載していた。カワサキメグロ製作所が1964年9月に川崎航空機工業に吸収された頃にリリースされていた「メグロK2」の後継モデルとしてWが開発された。
K2のボア・ストロークは66×72.6mm。ロングストロークタイプの497ccだったが、Wはボアを8mmアップし74×72.6mmのショートストロークタイプに変更。排気量は624ccにスケールアップされたのだ。余談ながらカワサキがアメリカ市場進出を目論む切り札的商品でもあったのだ。
その後のWは、ツインキャブのW-1S、長いリンケージを介して左チェンジ方式を採用した同W1SA。そして650RSとネーミングされた通称W3(ダブサン)まで進化したものの、時代背景はマルチエンジン全盛。やがてWの名はライナップから消滅した。
しかし二十数年のブランクを経た1998年、「W」のブランドネームは全てが新開発された“レトロスポーツ”モデル、W650の投入で見事復活。現在は刷新されたW800がリリースされている。2006年にはW400の投入も。さらに2020年にはメグロK3が新規投入されたのである。
そんな中、2024年11月20日に兄弟モデルとして、W230の追加投入に至ったのである。メグロS1の既報記事にある通り、車体やエンジンなど基本的な部分のほとんどが共通する同時開発双子モデルだ。
前述の通りメグロの血統を受け継ぐWが約60年に及ぶ歳月の流れの中で再びメグロとWの両ブランドへ分派し豊かなバリエーション展開に貢献しているのである。

前置きが長くなってしまったが、車体やエンジンの解説はメグロS1の記事と共通と理解して良い。違いは見ての通りカラーリングとシート、タンク両サイドのニーグリップラバーの有無ぐらいだ。
些細な点だが、装備された前後一体式ダブルシートのデザインは異なる。結果的に主要諸元データのシート高はメグロS1より5mm高い745mmになっている。
またWのカラーバリエーションは白と青の2タイプが用意されている。さらに決定的な違いは車両価格がかなり廉価。S1は税込みで720,500円に対してW230は643,500円。なんと価格差は8万円にせまるほどなのだ。
  
S1の解説記事と重複するが、簡単にお復習いしておくと、上の写真で示す通り、スチールパイプ製のセミダブルクレードルフレームを採用。ごくオーソドックスな手法だが、シートレールが一段低くデザインされているのが印象深い。
搭載エンジンは18ps/7,000rpmを発揮する空冷SOHC2バルブの前傾単気筒。ボア・ストロークは67×66mmの232ccで、わずかにショートストロークだがスクエアに近い。冷却フィンやクランクケースカバーに膨らみのある曲線を採用した独自デザインが採用されているのもS1と共通である。
その他足回りも同じ。前後サスペンションやホイール、前後シングルのディスクブレーキも同一なので、ここでの詳細解説は割愛する。乗り味も基本的にS1と同じと予想されるが、果たしてどうだろうか。

W800との比較。右(手前)が230だが、堂々と立派に見える。
基本を共にするKLX230と比較したエンジン性能曲線図。W230は中低速域が増強されている。

親しみやすく、その機動力は侮れない。

白の試乗車を目の当たりにすると、先ずは全体的にふっくらと丸みのある外観デザインが印象的。タンクデザインを始め、車体両脇に出っ張りぎみのサイドカバーしかり、そして前傾単気筒の空冷エンジンもクランクケースサイドカバー等の造形は角の丸い膨らみのある仕上がりを披露している。
さらにグンと低いシート高と、前18インチ、後17インチサイズのスポークホイールが採用されており、全体的なバランスとして、大き過ぎない車格のわりにどこかドッシリとボリューム感のある落ち着いた雰囲気を覚え、250ccクラスながらWらしい風格が漂う。
それでいて足つき性は抜群に良い。低いシート高がとてもフレンドリー。足つき性チェックの写真を確認して欲しいが、膝に大きなゆとりを持って両足の踵はベッタリと地面を捉えることができる。足を出すとサイドカバーの膨らみが、内腿の後部内側に干渉するが、地面が近いので足の着地点に自由度があり、バイクを支えるのに不安感は皆無であった。
143kgある車重が特に軽いとは思わないが、取りまわしはしやすく扱う感覚は決して重過ぎない。そのフレンドリーな使い勝手が好印象である。小柄なライダーでもこの親しみやすさには大きな魅力が感じられるだろう。

ライディングポジションは背筋を伸ばして上体を直立させるごく自然体の姿勢で乗れる。シートの着座位置も前後にゆとりがあり、小柄なライダーから体格の良いライダーでも柔軟に対応できそうである。
それにしても安心感抜群の乗り味は、ハートに優しく、穏やかな心持ちでバイクをスタートできるところにホッとさせられる。
神経を研ぎ澄ませて操縦するタイプとはキャラクターが異なり、ゆったりと自由気ままなツーリングを楽しむのに相応しい。ともかく楽~に走れる感覚は、スタートした瞬間から心地良いのである。それゆえ前方から後方へと流れ去る景色をたっぷりと楽しめる爽快感があるのだ。

中低速トルクに優れるエンジンは、発進時から柔軟で扱いやすい。特に実用域で発揮されるスロットルレスポンスは常に元気良く、回転が吹き上がるスピードも侮れず、Wに相応し十分なハイパフォーマンスが備わっている。少なくともバイクのキャラクターに相応しい不足のないポテンシャルが発揮できるので、ストレスを感じないのである。
それは高速走行でも同様で、バランサーが利いた振動の少ない走りと高回転域まで伸びのある出力特性。そして適切な2次減速比等が上手くバランスしクルージング性能も快適なものだった。
素直で扱いやすい操縦性はブレーキも含めて全体的な走りっぷりと乗り味は基本的にメグロS1とほぼ共通である。機能的には全くの互角と言って良い。
ただ不思議なことに、車両から漂う風格は異なり、WはS1より断然カジュアル。どちらが好ましいかはまさに人それぞれ、個人の感性と趣向によるわけだ。
あえて筆者の個人的な意見を述べるなら、機能的に同じバイクが安く入手できるという意味で、Wの方が断然お買い得。コスパに優れたバイクだと思えたのが正直な感想である。

足付き性チェック(ライダー身長168cm/体重52kg)

シート高は745mm。ご覧の通り、両足は踵までべったりと地面を捉えることができる。膝にもゆとりがあり足つき性に不安を感じることはない。車体が少しワイドなため地面に足が付く位置はやや遠くなる。

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…