【トライアンフ・新型スピードツイン1200/RS 海外試乗試乗】モダンクラシック最強マシンが2つの個性で大幅アップデート

最初のスピードツインが誕生したのは1937年。時速90マイル(約145km/h)を誇った当時
の最速級のスポーツバイクだった。その伝説的な名車の名を冠したトライアンフの「スピードツイン1200」が最新モデルとして蘇った。スペイン・マヨルカ島で開催された国際メディア試乗会からケニー佐川がレポートする。

●REPORT:ケニー佐川
トライアンフ・新型スピードツイン1200/RS

スタイルアップと5馬力向上で足まわりも進化

英国の伝統的なモーターサイクルブランドであるトライアンフから現代版の「新型スピードツイン」が登場したのは2019年のこと。同ブランドを代表する「ボンネビル」シリーズなど、並列2気筒を搭載するモダンクラシックと呼ばれるラインの中でも最も高性能な「スラクストンR」をベースに開発された。そこからマイナーチェンジを経て熟成を重ねてきたが、今回スタイリングと走りのパフォーマンスを高めた2025年最新モデルとして登場したのが「スピードツイン1200」である。

エンジンは従来からの水冷並列2気筒1200ccSOHC 8バルブをベースに軽量クランクやハイカム、ピストン高圧縮化などの大幅なアップデートを受けて最高出力は5馬力アップとなる105psを達成。エンジンケースも軽量化されている。足回りも前後マルゾッキ製サスペンションと新たにトライアンフ銘柄の4ピストンラジアルキャリパーをダブルディスクに備えたフロントブレーキを採用。コーナリング対応のABSとトラクションコントロールを標準装備し、フルLEDタイプのヘッドライトやTFTデジタルメーターを採用するなど大幅にアップデートされた。

さらに新型では上級版の「スピードツイン1200RS」がタイプ設定されたことも注目したい。RSはフロントにマルゾッキ製、リアにオーリンズ製の全調整式サスペンションが与えられ、ブレーキにはブレンボ製4Pラジアルキャリパーを装備するなど足回りを中心に大幅に強化。モダンクラシックシリーズ初となるクイックシフターを採用しハイグリップタイヤを履くなど、スポーツ性能をとことん追求した仕様になっているのが特徴だ。

ワイドトルクと軽快なフットワークで曲がるのが楽しい

トライアンフ・新型スピードツイン1200
トライアンフ・新型スピードツイン1200
トライアンフ・新型スピードツイン1200

見た目がぐんとカッコよくなった。軽快なスポーツスタイルとバーチカルツイン(垂直シリンダーを持つ並列2気筒)の伝統的モダンクラシックのDNAが見事に融合している。従来型はボンネビル系のやや古風で丸っこいイメージが残っていたが、一気に現代的に洗練された感じだ。

跨がるとサスペンションは初期の沈み込みが豊富でフレンドリーな感じ。タンクまわりも従来型よりスリムになりシートも絞り込まれているので足着きが良い。ハンドル位置はやや高めで少し遠くなったが、上体が起きているので見晴らしも良くリラックスできるライポジだ。

水冷並列2気筒270度クランクのエンジンが奏でる英国流バーチカルツインの重厚で弾けるようなサウンドは、ただ聞いているだけで胸を高鳴らせる。クラッチは軽く発進もスムーズで、シフトワークも節度感があってギアチェンジも滑らか。バイクの出来の良し悪しは操作系の第一印象で決まると言ってもいいが、こと新型スピードツインに関しては完全に現代のマシンである。慣れてきてスロットルを開けると1200ccの分厚いトルクがじんわりと立ち上がってくる。ワイドレンジで低中速トルクが豊富なため回転数をムリして上げなくても十分速いし、3000rpm程度をキープしておけば何速ギアからでもアクセルを開けるだけで豪快な加速を見せつけてくれる。加えて従来型よりピーク回転数が500rpm上乗せさ
れてワンギアで少し高回転まで引っ張れるため、ギアチェンジのタイミングにも余裕が生まれている。僅かな差かもしれないが、スポーティに走ろうとするほどメリットは大きくなるはずだ。

また、大柄な見た目に反して実は軽量コンパクト。スペックを見るとホイールベースは1413mm、車重216kgとミドルクラス並みの車格なのだ。加えてキャスター角やトレール量も運動性能を重視した設定になっている。160サイズとこのクラスとしては細めのリアタイヤと相まって、1200ccの大型バイクとは思えないほどフットワークも軽快だ。試乗コースは曲がりくねったワインディングが続いていたが、力強いトルクとバランスの良い車体でどんなコーナーでも満足のいく曲がり方ができるのが楽しい。新型のラジアルキャリパーが与えられたブレーキはしっかり止まれて繊細な速度コントロールもしやすく、いざとなればコーナリング中でも対応してくれるABSやトラコンもあるので心強かった。

ハイグレードな装備とスパルタンな走りが真骨頂のRS

トライアンフ・新型スピードツイン1200RS
トライアンフ・新型スピードツイン1200RS

続いて試乗したRSは、予想していた以上の乗り味の違いに最初はやや戸惑った。ハンドル位置は低くステップは後退していてライポジからして攻めのスタイルだ。前後フルアジャスタブルのサスペンションは硬派なスポーツ仕様で、中途半端に乗っているとイイ味が出てこない。しっかり荷重をかけてサスペンションに仕事させると途端に豊富なフィードバックを返してくる。そのためにも加速・減速・倒し込みなどメリハリのある走りが求められる。さらにブレンボ製の高性能ラジアルブレーキやメッツラーのレーステックRRなどスーパースポーツ顔負けの豪華装備も含め、だいぶ次元の高いところを狙っているのは一目瞭然だ。つまり、それなりに経験のあるライダーが積極的に乗りこなすことを想定した仕立てになっている。

とはいえ、ギンギンに回さないと消化不良になるスーパースポーツとは異なり、フラットな中回転域を使って粒感のある鼓動を味わいつつ街を流すだけでも、モダンクラシックならではのテイスティな走りの魅力は十分に楽しめる。ライポジも標準仕様よりは前傾しているが、フルカウルモデルに比べれば全くラクだ。

まとめると、標準仕様は街乗りやツーリングを楽しくこなせる万能なネオクラシック。一方、RSは週末のワインディングやサーキット走行を視野に入れた走りを追求したスポーツモデル、というのが一日乗り倒しての印象だ。あとは目的や好みに応じて選択すれば良いと思う。見た目の小細工ではなく、走りのテイストで明確にキャラ分けしてきたところが見事。そこがまたトライアンフらしいと思う。

スタイリング

トライアンフ・新型スピードツイン1200
トライアンフ・新型スピードツイン1200
トライアンフ・新型スピードツイン1200RS
トライアンフ・新型スピードツイン1200RS
トライアンフ・新型スピードツイン1200RS

ディテール解説

DRL(デイタイムランニングライト)付きのフルLEDタイプへとデザインを一新したヘッドライト。ブラシ加工のアルミ製ベゼルとステーなど高級感が漂う。
φ43mmのマルゾッキ製倒立フォークを採用。ホイールトラベル量120㎜でしなやかなストローク感が持ち味。セッティングはストリート走行用に最適化されている。
リアサスペンションもマルゾッキ製の新型で、プリロード調整&リザーバータンク付きツインショックにアップグレードされた。ホイールトラベル量116㎜。
トライアンフのロゴ入りの新型4ピストンラジアルキャリパー+φ320㎜ダブルディスクを採用。オールラウンド性能の「メッツラー・スポーテックM9RR」タイヤが標準装備される。
従来型スピードツインの水冷並列2気筒SOHC4バルブ排気量1197ccエンジンをベースに高回転高出力型へとモディファイ。最高出力は5psアップの105ps/7750rpmへとアップ。最大トルク112Nm/4250rpmはリッターSSに匹敵する。
エンジンケース自体も軽量化されスリムで角張ったデザインへと変更。サイドパネルもつや消しアルミ仕上げのスロットルボディカバーと一体感のあるデザインへと洗練された。
フューエルタンクは従来の丸みのあるデザインからサイド面が絞られエッジの効いたデザインへとリファイン。タンク前方のえぐりが十分なハンドル切れ角も確保。新たにフリップアップ式のフィラーキャップを装備。
クラシカルなベンチシートはフロントが絞られた新デザインへと見直され足着き性を向上。従来よりもやや薄型で乗り心地もスポーティだ。
スイッチボックスも操作性に優れる十字キータイプを新たに採用。ホーンボタン横がライディングモード切り替えスイッチ。オプションのグリップヒーターを装備。
メーター左横にはスマホ等の充電に便利なUSB-Cソケットを装備する。
メガホンタイプのアップサイレンサーはよりコンパクトな形状になった。左右2本出しマフラーはエンジン下のサブチャンバーで一度集合してから2本に分かれる2-1-2構造とすることで消音と出力特性を向上。
従来のアナログ2蓮メーターに代えてTFTディスプレイ内蔵のLCDシングルメーターを採用。RSには「レイン」「ロード」に加えて「スポーツ」モードを標準搭載する。スマホ接続によるターンバイターン式ナビにも対応。
RSにはφ43㎜のマルゾッキ製フルアジャスタブル倒立フォークを採用。ホイールトラベル量120㎜で伸び側・圧側ダンパーおよびプリロード調整が可能だ。
RSにはオーリンズ製リザーバータンク付きツインショックを採用。ホイールトラベル量123㎜のフルアジャスタブルタイプで長い分、車体姿勢もやや前傾している。
RSはブレンボ製「Stylema M4.30」4ピストンラジアルキャリパー+φ320㎜ダブルディスクを装備。リアブレーキはスタンダードと共通。サーキット走行も可能なハイグリップタイヤ「メッツラー・レーステックRR K3」を標準装着。
RSにはモダンクラシック系で初となるアップ&ダウン対応のクイックシフターを標準装備。標準仕様も含めアシスト&スリッパークラッチやコーナリング対応のABS&トラクションコントロールなど装備は現代的だ。
RS用シートは座面に滑りにくい素材を使用。また、フロントとリアにつや消しアルミ製のマッドガードを採用するなどエクステリアも高級感がある。

主要諸元

トライアンフ・スピードツイン1200

エンジンとトランスミッション
タイプ液冷並列2気筒、8バルブ、SOHC、2700点火順序
容量1200cc
ボア97.6ミリメートル
脳卒中80.0ミリメートル
圧縮12.1:1
最大出力105 PS / 103.5 bhp (77.2 kW) @ 7,750 rpm
最大トルク112 Nm @ 4,250 rpm
燃料システム電子スロットル制御によるマルチポイント燃料噴射。 2 つのライダー モード。
排気ブラシ仕上げのステンレススチール製 2-2 排気システムとツインブラシ仕上げのステンレススチール製サイレンサー
ファイナルドライブXリングチェーン
クラッチウェット、マルチプレート、スリップ&アシスト
ギアボックス6速
シャーシ
フレーム鋼管、鋼製クレードル付き
スイングアーム両面加工アルミニウム
前輪鋳造アルミニウム合金、7本スポーク、17 x 3.5インチ
後輪鋳造アルミニウム合金、7本スポーク、17 x 5.0インチ
フロントタイヤ120/70 17インチ
リアタイヤ160/60 17インチ
フロントサスペンションØ 43mm 倒立マルゾッキフォーク、ホイールトラベル 120 mm
リアサスペンション外部リザーバーと調整可能なプリロードを備えたツインMarzocchi RSU、116 mmホイールトラベル
フロントブレーキツイン Ø 320mm フローティングディスク、Triumph ブランドの 4 ピストンラジアルキャリパー、OCABS
リアブレーキシングル Ø 220mm 固定ディスク、ニッシン 2 ピストン フローティング キャリパー、OCABS
楽器カラーTFTスクリーンを内蔵したLCD多機能計器
寸法と重量
長さ2070mm
幅(ハンドルバー)792mm
ミラーなしの高さ1140mm
シート高805mm
ホイールベース1413mm
レーキ22.4 °
トレイル91mm
湿重量216kg
燃料タンク容量14.5L
サービス
サービス間隔10,000マイル(16,000km)/ 12か月
消費と排出(EU) 
燃費未定
排出量EURO 5+
CO2 排出量および燃料消費量のデータは、規制 168/2013/EC に従って測定されています。燃料消費量の数値は特定のテスト条件から導き出されたもので、比較目的のみに使用されます。実際の運転結果を反映していない可能性があります。

トライアンフ・スピードツイン1200 RS

エンジンとトランスミッション
タイプ液冷並列2気筒、8バルブ、SOHC、2700点火順序
容量1200cc
ボア97.6mm
脳卒中80.0mm
圧縮12.1:1
最大出力105 PS / 103.5 bhp (77.2 kW) @ 7,750 rpm
最大トルク112 Nm @ 4,250 rpm
燃料システム電子スロットル制御によるマルチポイント燃料噴射。3 つのライダー モード。
排気ブラシ仕上げのステンレススチール製 2-2 排気システムとツインブラシ仕上げのステンレススチール製サイレンサー
ファイナルドライブXリングチェーン
クラッチウェット、マルチプレート、スリップ&アシスト
ギアボックス6速
シャーシ
フレーム鋼管、鋼製クレードル付き
スイングアーム両面アルミニウム
前輪鋳造アルミニウム合金 17” x 3.5”
後輪鋳造アルミニウム合金 17” x 5.0”
フロントタイヤ120/70 17インチ
リアタイヤ160/60 17インチ
フロントサスペンション43mm 倒立マルゾッキフォーク、プリロード、コンプレッション、リバウンドダンピング調整可能。ホイールトラベル 120 mm
リアサスペンション外部リザーバーを備えたツイン オーリンズ RSU。プリロード、圧縮、リバウンド ダンピングを調整可能。ホイール トラベル 123 mm
フロントブレーキツイン Ø 320mm フローティングディスク、ブレンボ スタイルマ M4.30 ラジアルキャリパー、OCABS
リアブレーキシングル Ø 220mm 固定ディスク、ニッシン 2 ピストン フローティング キャリパー、OCABS
楽器カラーTFTスクリーンを内蔵したLCD多機能計器
寸法と重量
長さ2073mm
幅(ハンドルバー)792mm
ミラーなしの高さ1127mm
シート高810mm
ホイールベース1414mm
レーキ22.6°
トレイル92mm
湿重量216kg
燃料タンク容量14.5L
サービス
サービス間隔10,000マイル(16,000km)/ 12か月
消費と排出(EU)
燃費
排出量EURO 5+
CO2 排出量および燃料消費量のデータは、規制 168/2013/EC に従って測定されています。燃料消費量の数値は特定のテスト条件から導き出されたもので、比較目的のみに使用されます。実際の運転結果を反映していない可能性があります。

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