目次

ベスパ・プリマベーラ 150…….544,500円(消費税10%含む)






カラーバリエーション
プリマベーラ 150
プリマベーラ S 150…….566,500円(消費税10%含む)

プリマベーラ Color Vibe 150…….605,000円(消費税10%含む)
ベスパと言えばスクーターの代名詞と言えるほど有名なイタリアのブランド。そのルーツは1946年に登場したV98に始まっている。プリマベーラというネーミングは1968年登場の125から。それまであった125Nuovaの後継モデルとしてデビュー。
車体サイズが拡大され左後方パネルにキーロック付き収納スペースを装備したのが特徴だった。そんな伝統を現在に受け継いだ最新バージョンが、冒頭に記した通り2023年のEICMAで公開されたこのプリマベーラである。
同社の本格派スクーターとしては、ラージサイズのGTSが知られているが、プリマベーラはスモールサイズ・カテゴリーを継承した親しみやすい存在。日本市場にはEVモデルこそ未導入ながら、カラー違いや125も含めると9機種もの豊富なバリエーションが揃えられている。
同社ブランドを象徴する証として、スチール製モノコックフレームや前後ホイールを片支持する足回りを採用。モノコックフレームとは、外板ボディその物に剛性をもたせる構造で、一般的に多いアンダーボーン等の鋼管フレームを持たない方式。ある種合理的な設計手法のひとつとして知られている。
そしてなにより写真からもわかる通り、ステップからヒップにかけてストレートにハネ上げられたストレートラインを基調に、優美な曲線をあしらうボディデザインが構築されている。
細部にクロームメッキされたモールがあしらわれ、試乗車のGreen Amabileカラーは、さりげない明るさと質感の高さを物語るに相応しいセンスの良い仕上げが印象的なのである。
エンジンはi-getと呼ばれる強制空冷式のSOHC単気筒。ベスパ 946 SnakeやSPRINTにも採用されている3バルブタイプを搭載。もちろんバルブは吸気側に2本、排気側が1本だ。
スクエアに近いボア・ストロークは58×58.6mmと言う僅かにロングストロークタイプの155cc。圧縮比は10.5対1。電子制御式燃料噴射システムが採用され、12.3HP/7,250rpmの最高出力と、12.7Nm/5,750rpmの最大トルクを発揮する。
前後輪にはベトナム製の12インチMAXXISチューブレスタイヤを履き、フロントはリンクアームと油圧ショックを持つ片支持。リアはユニットスイング式の片支持でモノショックには4段階のスプリング調整機能付きを装備。
ブレーキはフロントにABS付きの油圧シングルディスク。リアは機械式のドラムタイプが採用されている。
前ヒンジで開くシートの下はメットイン構造となっているが、容量が小さめなので収納可能なヘルメットのタイプは限られる。普段使いの実用性を考えるとオプション設定されているトップボックスの装備は欠かせないだろう。
また、国内の公式ホームページで燃料消費率のデータは公表されていなかったが、イタリア本国仕様のデータは37km/L。あくまで参考値として記しておきたい。
なお余談ながら、現在ベスパの新車購入者に純正ヘルメットがプレゼントされるキャンペーンが実施されている。期日は2025年4月30日(水)までだ。
乗り心地はとても快適。

試乗車のあちこちに触れつつ、周囲からしばし眺めてみる。スクーターの標準形を基本としたオーソドックスな仕上がりながら、よそ行きのコスチュームをさりげなくまとった様な雰囲気に、なんとも親しみの湧く愛らしさを覚えた。
しかも見るからに“さわやか”なカラーリングは日本のセンスとは異なる如何にも明るくオシャレでなオーラが漂っているのである。車体サイズは前後に12インチホイールを履くスクーターとして標準的。例えば後輪に10インチを履くホンダ・リード125やスズキ・アヴェニス125よりは少し大きめ、それでいてより大きな前後ホイールを履くホンダ・PCXやヤマハ・NMAXよりは明確にコンパクト。
ただ、シートに跨がってみると、車体は決して小さ過ぎない。むしろ筆者にはちょうど良い感じ。車体全体のボリューム感が大き過ぎないスマートさも兼ね備えており、車庫や駐輪場で取りまわす時の重量感も含め、気楽な扱いやすさに好感触を覚えた。
シート高は785mmで、先に列記した国産4機種のどれよりも高い。しかし次項の写真で示す通り、足つき性は問題なく両足も踵までべったりと地面を捉えることができる。
ただ当然のことながら腰骨を後方に落とした(ややだらしない)姿勢で座る時と、背筋をきちんと伸ばした時では足つき性に大きな変化(差)があるので要注意。もちろんシートのワイドな部位に座っていると足つき性はさらに悪化するので注意が必要だ。
車体もそれなりにワイドなため、足の着地位置が車体脇の少々離れた所になる。体重をシートに預けていると足への荷重が軽くなりがちになるので、意識的に着地点のグリップを高めるべくしっかりと踏ん張るよう心がけたい。平坦な場所でも浮き砂など、足元を救われやすい場面での扱いには特に要注意と言うわけだ。
こんな当たり前のことにあえて言及するのはライダーの心構えがバイクとスクーターとでは微妙に異なり、その安楽な乗り味に触れるとついつい気の弛みを招きやすいだけに、大切なポイントは見逃さないよう、必要に応じて気持ちを引き締めておきたいと感じられたからである。
エンジンを始動すると、排気音の太さも含めて全体的に優しい雰囲気。それは大人しく感じられたが、決してひ弱な感覚ではない。実際右手のスロットルをひねると十分に太いトルクフィールで発進する様には適度な逞しさが感じられるほどであった。
車重は132kg。特に軽いわけではないが、そのパフォーマンスに不足はない。しかもイージーに発揮される加速力は、最初に外観から覚えた印象とマッチする“穏やかさ”が絶妙な心地良さを生んでいる。
市街地でのスロットルレスポンスしかり、高速道路でも本線車道へ合流する加速車線で必要となる瞬発力に不満を感じることもない。もともとスポーティなハイポテンシャルを期待していないこともあるが、なかなか元気の良い走りっぷりが満足できるレベルにあることは間違いないのである。
無段自動変速制御も自然でスムーズ。渋滞路から高速クルージングまで扱いやすくかつ快適。100km/h制限の道路なら自然な流れに乗るプラスαの領域でも無理無く走れ、そんなシーンでもエンジンは感覚的に余裕を感じさせてくれる出力特性が秀逸なのだ。
もともとこの排気量のスクーターで、高速道路を好んで走ろうとは思わないが、いざそこを使う時でも不満のない快適なパフォーマンスを享受できるのは嬉しい。
また快適なのはエンジンの特性に止まらず、直進安定性に優れる落ち着いた乗り味も見逃せない。前後ホイールサイズは12インチだが、1340mmのロングホイールベースが奏功して安心感を覚える。
さらにシートの座り心地がとても良い。スクーターはバイクと違ってチョコンとシートに腰を落とし両足を揃えて乗るわけだが、シートデザインが巧妙で座りが良い。厚みのあるクッションは前方両肩部分が大きく面取りされており、尻と股裏から内腿のサポート(密着)具合に優れ安心感がある。
身体とシートが触れ合う、サポートされる面積が広いのだ。そのため着座時の落ち着きが良い。さらにシートにかかる体重が巧妙に分散される感じで尻が痛くなりにくい点が、快適な乗り心地に大きく貢献している。
ついでにいうとステップフロアーには左右それぞれに3本線のラバーモールが設置されていて、足元のグリップをしっかりと確保しやすいのも良い。ステップ前方に立ち上がる斜面を踏ん張れば、急ブレーキ時の減速Gに耐えやすく、操縦性全般の基本的な扱いやすさに優れているのである。
片持ちの前後サスペンションも穏やかなフットワークを披露。特にフロントサスペンションの作動性は絶妙。例えばコンビニやガソリンスタンドへ進入する時など、歩道段差をゆっくりと乗り上げるようなシーンで、ふわりと衝撃を吸収してみせる仕上がりはとても心地良いものだった。
狭い市街地や峠のコーナリングでも、基本的に素直で扱いやすい操縦性も好感触だ。少し強引にに扱おうとラフに力みのある操舵をするとよりクイックな旋回を見せるが、僅かながら車体からの揺り戻しが感じられる。もっとも肩の力を抜いて自然な扱いを心得れば、ゆったりと軽快な走りを楽~にこなせてしまう優しい乗り味に終始する。全体に調和のとれた穏やかなフィーリングなのである。
そんな快適性に価値ある魅力が感じられた。
さらにオーナーなら意気揚々とした気分でお出かけが楽しくなるだろう。ふとオシャレしてみたい気分にもなる。気楽に走れ、いつもいっしょにワクワク気分を楽しめるところが印象的であった。