何が変わった、新型リード125。デザイン小変更&トランクライト追加で 王者PCXに勝てる要素はこんなにある!

107ccのリード・EXの後継モデルとして、2013年7月に発売されたのが「リード125」だ。12年目を迎えた今年は、外装の一部と車名ロゴを小変更し、ラゲッジボックス内にトランクライトを追加した。原付二種スクーター界の王者と言えば同じくホンダのPCXだが、それでもなおコンスタントに売れ続けているベーシックスクーターの魅力に迫ろう。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

ホンダ リード125……34万1000円~(2025年1月16日発売)

2025年モデル
2023年モデル

2025年型はフロントカバーおよびハンドルカバーの構成部品が変更されたが、基本的なデザインを踏襲しているので見分けが付きにくい。諸元上では全幅が680mmから700mmに増えたほか、定地燃費値が52.5km/Lから53.0km/Lへ、WMTCモード値が49.0km/Lから49.3km/Lへと微増している。

車体色は全4種類。ナイトタイドブルーメタリック、パールスノーフレークホワイト、ポセイドンブラックメタリックが34万1000円、マットディムグレーメタリックが5500円高の34万6500円だ。2025年モデルの車両価格は1万6500円アップ。

ライテクの優劣を問わずジェントルに対応するeSP+エンジン

2010年の発売以来、原付二種スクーター界のトップに君臨し続けているのがホンダのPCXだ。その3年後、2013年に登場したリード125は、オーソドックスなスタイルのスクーターであり、PCXとの年間販売計画台数は倍以上の開きがあるものの、それでも根強い人気があり、コンスタントに売れ続けているのは間違いない。

何を隠そう、筆者が高校生の時に初めて入手したエンジン付きの乗り物が「リード50DX」だったので、この車名には少なからず思い入れがある。当時、ホンダは原付スクーターだけで4機種11タイプもラインナップしており、中でもリードはプロテニスプレーヤーのビヨン・ボルグを広告に起用するなど、本格志向のスクーターとして売り出していた。そうした基本的なコンセプトは、令和になった今も変わらないように思う。

まずはエンジンから。最高出力11psを発生するeSP+エンジンは、ACGスターターを採用しているので「キュルルルッ」というモーター音やギヤ鳴りがなく、セルボタンを押せばごく静かにアイドリングを始める。メカノイズ、排気音とも空冷エンジンとは比べものにならないほど音量が小さく、体に伝わる微振動もかなり抑えられている。

2022年モデルから採用された124cc水冷4ストローク単気筒SOHC4バルブの“eSP+”エンジン。基本設計はPCXと共通だが、最高出力は同車の12.5ps/8750rpmに対してリード125は11ps/8750rpmとわずかに低い。特にアナウンスはないが、2025年モデルは諸元上の燃費が微増していることから、ECUに変更があった可能性もあろう。

スロットルを徐々に開けると、低回転域ですぐに遠心クラッチがつながり、ごく自然に発進する。このクラッチミートが優しいからこそ、ノロノロと進む渋滞路でも速度を調整しやすく、ライダーを慌てさせることがない。あまりにも“普通”なので見逃してしまいがちだが、こういうナチュラルな駆動系のセッティングにホンダらしさが光っている。

右手を大きく動かせば速度はすぐに60km/hへ達し、その勢いのまま80km/hを超えてしまいそうだ。流れの速いバイパスで不足を感じないパワーを有しながら、スロットルレスポンスはあくまでも穏やか。そして、60km/h付近でも振動やノイズの少なさは相変わらずだ。上質さを感じさせるという点においては、同系のeSP+エンジンを搭載するPCXと同等レベルであり、自分がもし原付二種スクーターを買うなら水冷車から選ぶであろう最大の理由がここにある。

ステップスルーによる乗り降りのしやすさこそ最大の美点

続いてはハンドリングについて。ホイール径はフロント12インチ、リヤ10インチと小さめであり、ホイールベースはPCXより40mm短い。入力に対するキビキビとした反応は小径スクーターらしさを感じさせるもので、剛性を確保しにくいアンダーボーンフレームでありながら芯が一本通ったような安心感がある。荒れているアスファルトでは、ホイールの小ささゆえにハンドルが弾かれることもあるが、前後サスペンションの動きが良いのでその後の収束は早い。

Uターンのような小回りから高速コーナーまで、どんなシーンでも車体はしっとりと安定しており、ここにもエンジンと同様に“上質”という表現を用いることができる。内燃機関を搭載した乗り物としての主義主張は薄いものの、裏を返せば徹底的にノイズと感じる要素を排除した努力の結果であり、通勤スクーターとしてはほめられるべきだろう。

ブレーキは、フロントがディスク、リヤはドラムだ。制動力や安全性では前後ディスクかつABS付きのPCXに軍配が上がるが、リード125は左レバーで前後が連動するコンビブレーキを採用しており、左手は減速に集中できるというメリットがある。付け加えると、左レバーをロックできるのもリード125の特権であり、傾斜地で駐輪する際などに活躍するはずだ。

ホイール径はフロント12インチ、リヤ10インチで、標準装着タイヤはチェンシン製。ブレーキはフロントがディスク、リヤはドラムで、左レバーで前後が連動するコンビブレーキを採用。なお、生産国のベトナムではABS仕様がタイプ設定されている。

リード125を試乗してあらためて長所だと感じたのは、街乗りであれば何度も繰り返すであろう乗り降りのしやすさだ。PCXはフロアトンネルがあるため、ここをまたごうか、それとも後方へ足を振り上げようかと悩んだ末に前者を選び、何度もシューズでトンネル部分の外装に傷を付けてしまっている。それと引き換えに得られるPCXのメリットは、フレームの圧倒的な剛性の高さと、燃料タンク容量の大きさ(リード125:6.0L、PCX:8.1L)であり、この辺りも選択する際の重要なポイントとなるだろう。

PCXの30Lに対し、37Lもの容量を誇るリード125のラゲッジボックス。ヘルメットについては、ジェットタイプであってもサイズや形状によっては入らないこともあるので、事前に確認することをお勧めする。2025年モデルではパーティションボードが追加された。

なお、車両価格はリード125の方が3万8500円安い(車体色が青、白、黒の場合)のだが、その程度の差ならリセールバリューも良さそうなPCXを選ぶ人は多いだろう。ただ、ツーリングなどのホビーに使わず、一般道の短距離移動用として割り切るのであれば、筆者は車重が17kgも軽くて乗降車のしやすいリード125を推したい。

ライディングポジション&足着き性(175cm/68kg)

ステップスルーデザインによる乗り降りのしやすさがPCXに対する大きなアドバンテージだ。足下に容量6.0Lの燃料タンクを配置しているためフロアボードは高めだが、座面の広いシートによる着座位置の自由度の高さが美点。
シート高は760mmを公称し、足着き性はご覧の通り優秀。ちなみにPCXのシート高は4mm高いが、足着き性は同等レベルだ。付け加えると軸距はPCXの方が40mm長いのに、最小回転半径は0.1m小さいという逆転現象が起きている。

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著者プロフィール

大屋雄一 近影

大屋雄一

短大卒業と同時に二輪雑誌業界へ飛び込んで早30年以上。1996年にフリーランス宣言をしたモーターサイクル…