SBK譲りの200馬力、998ccエンジン。「ビモータ・KB998 rimini」がお披露目!【大阪モーターサイクルショー2025】

伝統と革新が融合した“レーシング・ジュエル

ビモータが送り出す新型「KB998」は、2025年のスーパーバイク世界選手権(WorldSBK)参戦を見据えて開発されたホモロゲーションモデルであり、ストリートリーガルでありながらも完全にレーシング志向に振り切ったマシンだ。1970年代から続くレーシングの血統を色濃く受け継ぎ、徹底的な軽量化と機能美を追求した設計が特徴。2025年中に250台、2026年にはFIM規定に基づく500台の限定生産が予定されており、その希少性もまたこのバイクの価値を高めている。

200馬力を誇る998ccエンジンが生む圧倒的な加速

KB998の心臓部には、排気量998ccの水冷4ストロークDOHC直列4気筒エンジンを搭載。このエンジンは最高出力147.1kW(200馬力)を13,600rpmで、最大トルク111Nmを11,700rpmで発揮する。極限まで高められた圧縮比13:1の設計は、優れた燃焼効率とレスポンスを実現し、スロットルをひねるたびに鋭い加速が得られる。燃料供給には高性能なDFI(デジタル・フューエル・インジェクション)システムを採用し、緻密な制御によって街乗りからサーキットまであらゆる状況に対応する。

ビモータならではの先進フレーム構造が際立つ車体設計

フレームはビモータの代名詞とも言える独自構造を採用。アルミ削り出しのプレートに楕円断面のトラスチューブを組み合わせた構造で、高剛性と軽量性を両立させている。リアにはアルミ削り出しのスイングアームを装備し、ダイレクトな路面追従性とトラクション性能を確保。前後サスペンションにはSHOWA製の高性能ユニットを搭載。フロントは43mm径の倒立式バランスフリー・フォークで130mmのストロークを持ち、リアは125mmのストロークを持つモノショックを備え、緻密なダンピング調整によってコーナリング中の安定感と接地感を高めている。

レーシングスペックのブレーキとタイヤで支える圧倒的制動力

ブレーキにはフロントに330mm径のダブルディスク、リアには220mm径のシングルディスクを採用し、強烈な加速に見合う制動性能を確保している。タイヤサイズは前が120/70ZR17、後ろが200/55ZR17というワイドな設定で、極限のリーンアングルでも安定したグリップを発揮。ホイールサイズは前がMT3.50、後がMT6.00とし、ワイドタイヤの性能を最大限に引き出す設計となっている。

レーシングマシンでありながら公道対応のパッケージ

KB998はストリートでも使用可能なホモロゲーションモデルでありながら、その性格は限りなくレーサーに近い。乾燥重量はわずか195kgと極めて軽量で、エンジンやフレームだけでなく各コンポーネントに至るまで軽量素材を採用している。6速トランスミッションはレース志向のクロスレシオ設計が施され、変速ごとのパワーの落ち込みを最小限に抑える。クラッチはオイルバス式の多板クラッチで、高トルク下でも滑らかな操作性を発揮する。タンク容量は17リットルとされ、ある程度のロングランにも対応できる。

世界規模の公道適合と今後の展望

2025年モデルのKB998はすでにオーストラリア、中東、フィリピン、中国、アメリカ(カリフォルニア含む)などでの公道走行認可を取得しており、2026年にはユーロ5+への適合も予定されている。つまり、純粋なレース志向でありながら、世界中のライダーがそのポテンシャルを合法的に楽しめる仕様となっている点が大きな魅力だ。

ビモータKB998が提示する“速さの哲学”

KB998は単なるスーパーバイクの枠に収まらない。レーシング由来の機能性、ビモータらしいクラフトマンシップ、徹底的に突き詰めたパフォーマンス。それらが1台のマシンに凝縮されている。量産車の制約から解き放たれた設計思想は、どのディテールを見ても明らかだ。美しさと速さを同時に成立させるという、ビモータの哲学が体現された1台。それがKB998である。

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