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X350 、X500は、ハーレー・ダビッドソンから発売されているミドルクラスのネイキットバイクだ。普通二輪免許(中型免許)で乗れるハーレーということに加えて価格設定が同クラスの国産車に近いレベルだったから、登場したときはけっこうな話題になったものである。
今回、X350にニューカラーのコズミックブルーが採用されたタイミングで、あたらめて試乗させていただけることになった。テスターの後藤は1980年代から90年代にかけてアメリカに住んでいたことがあり、ロードレースやフラットトラックでハーレーの活躍を生で見てきたのだが、X350はあの当時の雰囲気がプンプンと漂ってきて嬉しくなる。思い切って走りに振ったマシン作りにも興味津々である。
ハーレーダビッドソン・X350……699,800円
X350は剛性の高そうなフレームに倒立フォーク、前後17インチのラジアルタイヤを装着している。生産はハーレー・ダビッドソンが戦略的パートナーとして提携しているQJモータース。一昔前は中国生産のバイクを蔑むような雰囲気もあったものだが、最近では恐ろしいほどの勢いで技術力をつけてきているのは御存知の通り。主要メーカーのバイクに関していえば、性能、品質、信頼性も日本製と肩を並べるまでになった。QJモータースに関しては2024からWSBKのSSPカテゴリーに参加する初の中国ブランドになったほど。日本に追いつけ追い越せというアニマルスピリットがあることは間違いない。
往年のレーシングマシンXR750のイメージが感じられるデザイン。後藤も含め、オヤジライダーにはかなり好評。ただし、このマシンの主要ターゲットになるであろう、日本の若いライダーたちは当時の伝説をほぼ知らないのが残念なところ。
エンジンは並列2気筒で360度クランク。このクラスには強力なライバルがひしめき合っているが、360度クランクのツインはX350のみ。ネオレトロなデザインと走りに振った車体の組み合わせもこのクラスでは唯一となる。
ハーレーダビッドソン・X500……839,800円
X500はエンジンだけでなく、フレームや外装なども含めてX350とは別のバイクである。X350から目を移すと大きなタンクのせいで、いくぶんボテッとした感じに見えてしまう。
X350とX500が根本的に違うのはQJモータースが生産しているベネリの車体やエンジンをベースにしているからだ。
スムースかつ快活なエンジン
最初に描いてしまうと、X350のエンジンは相当に面白かった。レスポンスが鋭く、360度クランク独特の排気音が響く。360度クランクは等間隔爆発だから低中速は非常に滑らか。超ショートストロークのわりにトルクは低回転からタップリとあり、ストリートでは極めて乗りやすい。
そのまま高回転まで回してみると回転に応じてパワーが増えてくる。突然パワーが盛り上がってくるとか、フィーリングが変わって元気なるという感じではないのでドラマチックさには若干欠けるけれど、この排気量でそこまで求めるのは酷というもの。その代わりに高回転で伸びていく感じが気持ちいい。タコメーターはないが、乗りやすい特性なので特に必要性は感じなかった。
エンジンで少し気になったのは振動が大きめなこと。もともと360度クランクは左右のピストンが同時に上下動するために一次振動が大きめに出るのである。X350の場合、ステップに出る振動が大きめ。回転が上がるとタンクもビリビリと振動してくる。特に酷いというわけではないが同クラスの他のバイクに比べると若干大きいと感じる。
足周りはハードめのセッティング。乗り心地が良いという感じではないが、スポーツネイキッドだと考えれば妥当なレベルだろう。小径ダブルディスクはよく効くし扱いやすい。ABSはパルスが大きめで繊細に制御しているという感じではないけれど、利き方は安定していてフルブレーキングを何度行っても車体の姿勢が崩れてしまうようなことはなかった。
ポジションの項で記載するけれど、ステップ位置が後ろすぎるのと踵が当たる部分が張り出し気味なのは気になった。ただ、ここに関してはカスタムパーツが出てきているようだから、購入して気になるようであれば好みのポジションにすればよいだろう。
ストリートが楽しくなる500
スポーツ感を前面に出したX350と違い、X500のポジションはスタンダードなネイキッドという感じ。街中やツーリングでも扱いやすそうなバイクである。エンジンは350ほど上で伸びない代わりに低中速のトルクがたっぷりしている。車体がコンパクトだからどの回転からでもスロットルを開けた瞬間軽快に加速していくのは気持ちいい。レスポンスは鋭いのだけれど、ビックツインほどトルクがあるわけではないので電子制御などのデバイスがなくても扱いやすいし、使い切れるパワーだからストレスがない。色々な点でちょうどいいと思わせられるエンジンである。
排気量が大きくなったことで振動がさらに大きくなっているのかと思いきや共振点の関係なのか350よりも振動は気にならなかった。スロットルを開けるとシートとタンクに少し振動する程度である。
ハンドリングは基本的に素直。ただ、350と500どちらにも言えることなのだが、ストリートであれば、もう少ししなやかな方向でセッティングしてやったらさらに乗りやすくなりそうな感じはする。車体は軽快に傾けられるのだけれど、バンク角が深くなったときのステアリングの動きが若干神経質で、ライダーが補正してやる必要がある。リアサスはよく動いているようのでフロントサスとのバランスか、あるいは太めのタイヤに起因しているのかもしれない。
もっともこれは思い切って攻めようとしたときに感じることであって、普通に走っているかぎりは非常に乗りやすい。また、サーキットやワインディングなどで、サスやタイヤを路面に押し付けられるようになったら印象はずいぶん変わってくるだろう。
X350とX500は性格が違うけれどどちらもとても面白いバイクだった。ベテランオヤジライダーでも軽くて楽しいバイクが欲しいという人は増えているから、そういう人たちにとってはかなり魅力的だろう。個人的にもX350やX500をベースにして、1980年代、90年代風のカスタムマシンを作ってみたいら面白そうだと思う。
この面白さがハーレーに憧れているという若いライダーに伝わっているのかと思って数名に話を聞いてみた。ところ反応は微妙・・・・欲しているのがスポーツスターやビッグツインのようなアメリカンスタイルのクルーザーだからである。結局彼らは普通二輪免許を取得すると、まずは中型クラスのアメリカンに乗り、大型を取得してからハーレーに乗り換えてるパターンが多い。
もっともハーレーにしてもそんなことはわかっているはず。それでもあえてスポーツネイキッド路線を開拓するのだという意気込みがこの2台のバイクを生み出しているのだと思う。
X350・ポジション&足つき(身長178cm 体重75kg)
X350はかなりスポーツを意識して作られているような感じ。シートが硬めでステップ位置がかなり後ろにある。たぶん多くのライダーはちょっと後ろすぎると感じるはず。踵が当たる部分がもう少し内側に追い込んであるとスポーツライディングのとき、つま先でステップワークしたり、くるぶしでバイクをホールドしやすくなるはず。
足つきは良好。両足をついた状態で膝がかなり曲がる。
X500・ポジション&足つき(身長178cm 体重75kg)
X500は350と違って、ステップが前にあり、ストリートでマシンをコントロールしやすい。
足つき性はX350と同等レベル。大型のバイクとしては車体もコンパクトだ。
ディテール
















X350主要諸元
ディメンション
シート高、非積載時:143 mm
ホイールベース:1,410 mm
タイヤ、タイプ:Maxxis Supermaxx ST
タイヤ:120/70-ZR17/58W・160/60-ZR17/69W
燃料容量:13.5 L
オイル容量(フィルターあり):3.2 L
車両重量:180 kg /195 kg
エンジン
パフォーマンス
ドライブトレイン
シャシー
X500主要諸元
ディメンション
シート高、非積載時:153 mm
ホイールベース:1,485 mm
タイヤ、タイプ:Maxxis Supermaxx ST
タイヤ:120/70-ZR17/58W・160/60-ZR17/69W
燃料容量:13.1 L
オイル容量(フィルターあり):3.2 L
車両重量:199 kg/208 kg
エンジン
パフォーマンス
ドライブトレイン