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トライアンフ・ロケット3R…….2,653,000円
ロケット3Rを語る上で絶対に見逃せないのは、搭載エンジンの排気量に他ならない。バイクなのに2.5Lである。4輪自動車でさえも、今やダウンサイジングが進み、そんな大きなエンジンは、ミドルクラス以上の高級車にしか積まれていない。
車両重量は約300kg。バイクとしては重めだが、クルマと比較すると5分の1程度の車重でしかない二輪車に、巨大なエンジンを搭載するというコンセプトその物に大きなインパクトがある。
製品リリースから引用すると「究極のマッスルロードスター」と記されている。ネイキッドスタイルの、如何にもマッチョなスタイリングはクルーザーにカテゴライズできそうだが、個性的でラグジュアリーな雰囲気を醸すプレミアムモデルという意味で、ヤマハ・VMAXやドゥカティ・ディアベルと競合するだろう。
いずれもド迫力なフォルムを誇るバイクだが排気量と、車体デザインの中に占めるエンジンの存在感では、ロケット3Rは他を寄せ付けない圧巻のデザインを誇っている。
3気筒の直列エンジンは縦置きされ、片支持されるリヤホイールのアクスル脇まではクランクの回転方向をそのままキープするシャフトドライブ方式を採用。
AVON製の極太タイヤをマッチし、ホイールベースはナント1677mm。これはホンダ・ゴールドウィングに迫る長さである。
Showa製の前後サスペンション、Brembo製のブレーキ、そして最新の電子制御デバイスやスマホと連携できるメーターディスプレイ等、厳選された上質装備が奢られ、プレミアムモデルに相応しい仕上がりを誇る。
フレームはアルミ製。シャフトドライブが中通しされたスイング(モノ)アームも鋳造アルミ製。前17、後16インチサイズのホイールもアルミキャスト製を採用。先代モデル比較で40kg以上もの軽量化を果たしている。
この他50アイテム数を超える純正アクセサリーが揃えられているのも特徴。自分好みのバイクにカスタマイズする楽しみもまた大きいのである。
洗練された操縦性の良さにもビックリ!
太くドッシリと逞しいフォルムの試乗車を目前にすると、自然と緊張感に包まれる。車重は約300kg 。未体験ゾーンのビッグトルクから生み出される走りは果たしてどれほどの物なのだろうか。期待と不安が入り混じるドキドキワクワクとした心境。
もし愛車として納車されたのなら、嬉しさもひとしおで、どれほど興奮させられるのだろうかと、ついつい頭の中でイメージを膨らませてしまった。
シートは低く足つき性は良いので、基本的に車体をささえる不安は少ないが、地面の浮き砂等で足が滑るような場面で失敗すると、果たして無事でいられるかどうか、自分の体力不足も含め、自然と扱いは慎重になる。
エンジンを始動するとアイドリングは1,000rpmで安定し、太く低いエキゾーストノートを響かせる。軽くブリッピングすると、スロットルを開けた瞬間、車体は左側に、逆にスロットルを戻すと車体は右側にグラッと傾こうとする独特の挙動が発生する。縦置きエンジン特有のトルクリアクションだが、それほど大きな揺動では無いので特に心配する必要はない。
操作の軽いクラッチを握り、そっとスタートすると意外なほど軽快かつ素直に走り出し、操縦性も驚くほど軽快。先代モデルではステアリングが切れ込む癖があり、少しばかりハンドルと格闘する雰囲気があったが、新型は至って扱いやすく、その洗練された進化の大きさに驚かされた。
交差点の直角ターンやUターン、峠のワインディングロードでも、車重を意識させないほど軽々と身を翻すことができる。もちろん動きがクイックなタイプではないが、一定のリーンアングルを与えると、思い通りのコーナリングラインをキープできる素直な操縦性が気持ち良いのである。
そして何といっても、スロットルをひと開けした時の怒濤の加速フィーリングが強烈である。試乗は都内市街地の雨中走行から始まったが、右手を少しラフに開けると4速ギヤでさえも直ぐに電子制御(慣性測定ユニットを駆使した高度なトラクションコントロール)が絶妙な介入を見せる。簡単にホイールスピンする駆動力は巧みにセーブされていた。
逆に言うと電子制御があるからこそ許される強大なトルクを発揮するのである。
もちろんドライ路面なら、その凶暴なまでのビッグトルクが楽しめる。極太のリヤタイヤは存分に頼れるグリップ力を発揮し、ライダーの操作に対して期待以上の怒濤の加速力を発揮。
実際そのポテンシャルは、量産車イチの発進加速性能をマークするという。0~60mph 、つまりゼロから96km/hまでの発進加速性能で僅か2.73秒。ごく簡単に理解すると、スタートして100km/hの速度に到達するのに、3秒もかからないという事である。
加速性の鋭いバイクは他にもあるが、ビッグトルクに物を言わせる圧倒的な力強さでは、ロケット3Rの右に出るバイクは無いと言えるだろう。ライダーの尻がシートストッパーにストンと当たる加速Gは強烈。
ここまで速いと、ライダーはそのポテンシャルを後ろ楯に、ゆったりと穏やかなクルージングを楽しむ様になってくるから不思議なものである。
回転計のレッドゾーンは6,500rpmから。全体のギヤリングはハイギヤードにセットされており、ローギヤでエンジンを5,000rpm回した時の速度は76km/h。6速トップギヤで100km/hクルージング時のエンジン回転数は僅かに2,250rpmだった。120km/hクルージングでも2,700rpm程度。
この落ち着きはらった堂々たる乗り味はとても気持ち良い。しかも決して直線番長だけでは無い洗練された操縦性と乗り心地の良さも大きな魅力なのである。