BMWのアドベンチャーバイク、S 1000 XRインプレ|いろいろ柔らかくて優しい。でも激速だ!

大人気スーパースポーツモデル、S1000RRの派生モデルとして、ネイキッドバージョンのS1000RとアドベンチャーモデルのS1000XRが展開されていた。その生い立ちゆえアドベンとしては激しかったXRだったが、新型ではグッと接しやすくなっている。

TEXT●ノア セレン
PHOTO●山田俊輔

※2020年7月26日に掲載した記事を再編集したものです。
価格やカラーバリエーションが現在とは異なる場合があります。

ディテール解説

マルゾッキ製の倒立フォークにラジアルマウントのブレーキキャリパー。サスは当初、このバイクのパワーを考えると柔らかすぎるようにも感じたが、各モードに連動してセッティングが変わるため使用状況やライダーの体格によって細かく変更できる。
いまや超高出力の2気筒モデルも存在するため165馬力という数値は驚くほどではないものの、直4の二次曲線的ノビ感はライバルアドベンチャーモデルとは明確に違う感覚で、スポーツバイクらしい速さを提供してくれる。また先代は全体的にギア比が低い感覚があり、巡航時にも回転数が高く常にもっと加速したがる性格だったのに対し、新型は4速から上をハイギアード化したことで巡航時はだいぶリラックスできるようになったと感じる。
こういった上級モデルにはもう当然の装備として備わっているクイックシフターは、シフトアップ、ダウン双方で使えるもの。クイックシフターの節度、ミッションの節度共にさすが上級モデル!と納得させられるスムーズさで、まるでオートマ感覚である。
ルックス上は最初に気付きそうなマフラーの変更は、同じく新型になったS1000RRと共通のスリムな形状に。先代ではタンデムステップ位置がとても低くタンデムライダーの快適性を重視しているイメージだったが、新型ではタンデムステップ位置が上がったように見えるものの、実際にタンデムシートに座ると窮屈さは感じられなかった。
フレーム、エンジン共に基本的にはS1000RRのアップデートを踏襲、スイングアームも新作で軽量なものを採用。ホイールもさらに軽量化され、全体での10kgもの軽量化に貢献している。これだけ軽量化に力を入れているのに、センタースタンドを省かなかったことは賞賛されるべきだろう。
電子制御サス「ダイナミックESA」を装備することで、各モードに合わせたセッティングが自動的に設定されるほか、自分の好みにも細かく設定可能。それは全て画面上、ボタン操作で可能でなり、サスセッティングに工具を必要とする時代はもう過去のものだ。
ハンドル幅は狭くなっているはずだが、乗ればやはり堂々としたイメージ。ハンドル位置とシート位置、ステップ位置など、いわゆるエルゴノミクスがとても良く、快適であり同時にこのバイクの運動性を引き出すにも、とにかく全てにおいてしっくりくる。ハンドルがラバーマウント化されたことで硬質な微振動が伝わってきにくくなったのもプラスポイントだ。スクリーンは手動でとても簡単に2段階に上下できる。シンプルで機能的、とても印象が良い。
左グリップ根本のダイヤルと各種スイッチで画面表示や細かなセッティングの類をこなせる。ダイヤルの幅があるためウインカースイッチが遠く感じることもありそうだが、慣れの範疇だろう。
右側はセル/キルスイッチの他、モード切替ボタンとグリップヒーターボタンのみというシンプルさ。様々なセッティングは可能ではあるものの、実際に日々使うのはモードとグリップヒーターぐらいだと考えると、大変合理的で使いやすい。
タンクキャップの前には(もう一つ何に使ったら良いのかは想像しにくいが)ちょっとした小物入れも。メインキーは電子式で、タンクキャップもキーが効いている範囲にあれば開閉自由だ。
シリーズ共通の6.5インチカラーディスプレイは好みの表示を楽しめるほか、様々な細かな設定も可能。もはやスマホと同じで、「できること」が膨大で実際に「使う機能」はライダー側が好みに合わせて使えばよい、というスタンスだろう。
メーターと2階建て的な位置に置かれたナビも大変に見やすく好印象。
以前はS1000RRのように左右非対称のフロントマスクだったが、この型では兄弟車種のF900XRと同様、左右対称のアイライン入りLEDヘッドライトを採用。バンク角に応じてコーナー内側を照らしてくれるアダプティブコーナリングライトも採用。
純正アクセサリー類も豊富にラインナップ。
すっきりしたテールは通常センター部にあるテール/ストップランプがないため。テール/ストップランプはウインカーと一体化されておりとてもスマートなリアビューを作り出している。アクセサリーのケース類装着のためのステー類も充実。
シート座面は平らになっている面積が確保されておりちょっと後ろに座れば大変快適。しかし前方に座るとタンクのホールド感がとても高く、いかにもスポーツバイクと一体になって楽しんでいる感があってアドベンチャーモデルであることを忘れるほど。たまに我に返って腰をひいてペースを落とす、ということがあった。タンデムシートも面積が広く快適。グリップ類が充実しているのもこのカテゴリーの特徴だ。
シート下も比較的広々としており、ETC2.0が(他のBMW車両と同様に)標準装備されている。

主要諸元

●エンジン
型式:水冷並列4気筒4ストロークエンジン、1気筒あたり4バルブ、DOHC
ボア x ストローク:80 mm x 49.7 mm
排気量:999 cc
最高出力:121 kW (165 hp) / 11,000 rpm
最大トルク:114 Nm / 9,250 rpm
圧縮比:12.5 : 1
点火 / 噴射制御:電子制御エンジンマネージメントシステム
エミッションコントロール:クローズドループ制御式三元触媒コンバーター

●性能・燃費
WMTCに基づく100km当たり燃料消費:6.2 L/100km
WMTCに基づくCO2排出量:144 g/km
燃料タイプ:無鉛プレミアムガソリン

●電装関係
オルタネーター:493 W
バッテリー:12 V / 9 Ah、 メンテナンスフリー

●パワートランスミッション
クラッチ:湿式多板、アンチホッピング
ギアボックス:6速
駆動方式:チェーン式

●車体・サスペンション
フレーム:アルミ合金製ブリッジフレーム
フロントサスペンション:倒立式テレスコピックフォーク(フォーク径45mm)、電子調整式リバウンド/圧縮ダンピング(ダイナミックESA)
リアサスペンション:アルミニウム製ダブルスイングアーム、センタースプリングストラット、電子調整式リバウンド/圧縮ダンピング(ダイナミックESA)
サスペンションストローク、フロント/リア:150 mm / 150 mm
軸間距離(空車時): 1,550 mm (1,535mm) 1)
キャスター:116 mm
ステアリングヘッド角度:65.1°
ホイール:アルミキャストホイール
リム、フロント:3.50" x 17"
リム、リア:6.00" x 17”
タイヤ、フロント:120/70 ZR 17
タイヤ、リア:190/55 ZR 17
ブレーキ、フロント:フローティングマウントダブルディスクブレーキ(ディスク径320mm)、ラジアルマウント4ピストンキャリパー
ブレーキ、リア:シングルディスクブレーキ(ディスク径265mm)、フローティングマウントシングルピストンキャリパー
ABS:BMW Motorrad ABS Pro、パーシャリーインテグラル
1) 軸距( )内はPremium Standard の値

●寸法・重量
シート高:840 mm(790mm)
インナーレッグ曲線:1,880 mm(1,809mm)
燃料タンク容量:20 L
リザーブ容量:約 4 L
全長:2,180 mm(2,165mm)
全高(スクリーン含む):1,470 mm (1,440 mm)
全幅(ハンドガード、ミラー含む):930 mm <860 mm>
車両重量:232 kg (234 kg) <228 kg> 1)
1) 空車重量、走行可能状態、燃料満タン時、国土交通省届出値
*(  )内はPremium Standardの値 / < >はBasicの値

キーワードで検索する

著者プロフィール

ノア セレン 近影

ノア セレン

実家のある北関東にUターンしたにもかかわらず、身軽に常磐道を行き来するバイクジャーナリスト。バイクな…