ヤマハの新型3気筒スポーツ「MT-09/SP ABS 」、その大胆な進化を堪能してみた。

MT-09 ABS/MT-09 SP ABS
2021年7月28日に上級仕様のMT-09 SP ABSが先行して新発売。来たる8月26日に標準モデルのMT-09 ABSが追加投入される。発売に先駆けた6月28日、貸し切られた袖ヶ浦フォレストレースウェイで我々報道関係者を対象に発表試乗会が開催された。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●ヤマハ発動機株式会社

ディテール解説

MT-09 SP ABS/ブラックメタリックX(ブラック)

LEDプロジェクターヘッドランプの採用で、大胆な変貌を遂げたフロントマスク。ステアリングまわりは回転慣性マスの軽減化設計が追求されている。

SPは専用KYB製スペシャルフォークを採用。フルアジャスタブルの上、圧側の減衰調節は、ピストンスピードの高速・低速を個別に調節できる他、摺動性に優れるコーティング処理も施されている。ダブルディスクブレーキにはモノブロック構造の対向4ピストン式油圧ブレーキキャリパーを装備。
MT-09 SP ABS/ブラックメタリックX(ブラック)
新設計されたダイヤモンドタイプのアルミ軽量フレーム。アルミ製リヤアームを加えて従来モデル比2.3kgの軽量化を実現。吊るされるようにリジッドマウントされたエンジンの排気量は888ccに拡大、主要パーツのほとんどが一新され300gの軽量化も成されている。
MT-09 SP ABS/ブラックメタリックX(ブラック)
地面に目掛け左右対称に排気する車体中央マウントのアンダーマフラー。軽量化設計も徹底、1,5段膨張サイレンサーが採用されている。化粧をしないデザイン処理も新鮮。吸気音のチューニングに加え、心地よく官能的な排気音が追求されている。
リンク方式を一新したリヤサスペンション。写真のSPにはオーリンズ製フルアジャスタブルショックが採用されている。
標準仕様のモノショック。プリロード調節と、伸び側の減衰力調節機構が標準装備されている。
MT-09 SP ABS/ブラックメタリックX(ブラック)
ボックス構造のアルミ製スイングアーム。アルミ地肌色(バフ&クリア塗装)と青いホイールはSPの証。スタンダード仕様はブラックアウトされ、ホイールカラーは赤と黒の2タイプ。独自工法により新開発されたアルミ鋳造ホイールは、従来モデル比で前後約700gの軽量化。特にリヤの慣性モーメントは11%低減された。
MT-09 SP ABS/ブラックメタリックX(ブラック)
少しアップされたパイプバーハンドルは、テーパードタイプ。SPはレバーやハンドルバーがブラックアウトされている。ライディングポジションはなかなかスポーティーだ。
MT-09 SP ABS/ブラックメタリックX(ブラック)
SPにはクルーズコントロールが装備されている。4速以上、約50〜180km/hの速度で設定できる。左側は至って標準的なレイアウトで扱いやすい。右上のシーソーと人差し指操作はMORDスイッチ。
MT-09 SP ABS/ブラックメタリックX(ブラック)
上の赤いスイッチはエンジン停止と始動用スターターとの兼用スイッチ。下の黒いホイールスイッチは、メニュー選択用。オプションのグリップウォーマーもこれで操作できる。
MT-09 SP ABS/ブラックメタリックX(ブラック)
軽量コンパクト。シンプルにデザインされた3.5インチサイズのデジタル液晶表示式メーター。ETC搭載に対応する同インジケーター表示機能も装備されている。ただしETCはオプション。
MT-09 SP ABS/ブラックメタリックX(ブラック)
ワイドなライダーシートに対して、ご覧の通り後席はクッションスペースもタイトな印象。SPはシート表皮も上質。
MT-09 SP ABS/ブラックメタリックX(ブラック)
左サイトのキー操作でロック解除すると一体式シートは簡単に脱着できる。
シュッと引き締まったスマートフォルムを魅せるテールビュー。ナンバープレートステーも細身のデザインだ。

■主要諸元■

MT-09 (MT-09SP)

認定型式:8BL-RN69J
原動機打刻型式:N718E
全長×全幅×全高(mm):2,090×795×1,190
シート高(mm):825
軸間距離(mm):1,430
最低地上高(mm):140
車両重量(kg):189(190)
燃料消費率(km/L):30.4(60km/h) 2名乗車時
WMTCモード値(km/L):20.4 1名乗車時
最小回転半径(m):3.4

原動機種類:水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ
気筒数配列:直列,3気筒
総排気量(㎤):888
内径×行程(mm):78.0×62.0
圧縮比:11.5 : 1
最高出力(kW/rpm):88(120PS)/10,000
最大トルク(N/m/rpm):93(9.5kgf・m)/7,000
始動方式:セルフ式
潤滑方式:ウェットサンプ
エンジンオイル容量(L):3.5
燃料タンク容量(L):14(無鉛プレミアムガソリン指定)
燃料供給方式:フューエルインジェクション
点火方式:TCI(トランジスタ式)
バッテリー容量/型式:12V 8.6Ah(10HR)/ YTZ10S

クラッチ形式:湿式多板
変速装置:常時噛合式6速
変速方式:リターン式
1次減速比/2次減速比:1.680/2.812 (79/47 X 45/16)
変速比:
  1速:2.571 (36/14)
  2速:1.947 (37/19)
  3速:1.619 (34/21)
  4速:1.380 (29/21)
  5速:1.190 (25/21)
  6速:1.037 (28/27)

フレーム形式:ダイヤモンド
キャスター(度):25
トレール(mm):108
タイヤサイズ(前/後):120/70ZR-17M/C (58W)(チューブレス)/180/55ZR-17M/C (73W)(チューブレス)
制動装置形式(前/後):油圧式ダブルディスクブレーキ/油圧式シングルディスクブレーキ
懸架方式(前/後):テレスコピック/スイングアーム(リンク式)
ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプ:LED/LED
乗車定員:2名

試乗後の一言!

思わず気持ちが若返える。サーキットで思い切りスポーツできる。その素性の良い仕上がりと完成度が素晴らしい。

キーワードで検索する

著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…