ヤマハ シグナスXでガス欠するまで走ってみたら、謎の筋肉痛を発症した。|東海道ガス欠チャレンジ [Part02]

ヤマハシグナスXでガス欠するまで走ってみた。2日目、まだ大磯!|東海道ガス欠チャレンジ第2弾![2日目]

ラッシュアワーの快速キング、ヤマハ シグナス。ヘタレAFO RIDERタカハシが、このマシンで東京・日本橋から京都を目指し、満タンきっちり使い切りの東海道ワンウェイ・アタックに臨む。神奈川・平塚で早くもタンク半分のガスを失ったシグナスX……行き着く先はどの街だ?

REPORT●AFO RIDER タカハシ(AFO RIDER Takahashi)
PHOTO●高橋克也(KATSUYA Takahashi)
ILLUSTRATION●高橋克也(KATSUYA Takahashi)

シグナスX、大磯をゆく

東海道/ヤマハ/シグナスX/ガス欠/大磯/虎が雨
安藤広重が描いた『東海道五拾参次之内 大磯 虎ケ雨』。「虎が雨」とは、悲恋物語のヒロイン、虎御前(とらごぜん)の涙雨になぞらえた梅雨の別の名だ。

平塚のホテルで目をさましたとたん、思わず叫びをあげた。全身めっちゃ筋肉痛になっている。シグナスXのガチガチのサスのせいか、前のめりポジションのせいか、あるいはタカハシ自身のせいなのか、科学的には説明できないのが残念だ。

東海道/ヤマハ/シグナスX/ガス欠/イラスト/AFOライダー/タカハシ
シグナスXは典型的な短距離ランナー。長距離走行はちょっとキツめ?

平塚を出発してすぐ大磯の化粧坂(けわいざか)に立ち寄った。安藤広重が描いたことで知られる東海道の名所だが、今では観光用の看板がいくつか立っているだけのわびしい松並木にすぎない。景観保全を担ってきたNPOが2年ばかり前に解散してからは手入れもままならず、やや荒んで感じられる。

東海道/ヤマハ/シグナスX/ガス欠/大磯宿
大磯・化粧坂の松並木。地名は「けしょうざか」ではなく「けわいざか」と読む。風変わりな名だが、由来は諸説あってはっきりしない。
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化粧坂にはSNS向きの絶景ポイントはない。その代わり味わい深いイラスト付き看板があるからぜひチェックを。とくに真ん中あたりにしれっと描き込まれた「猫塚」は、誰もが気になるスポットだ(けど、わざわざ見にいくかどうかはあなた次第)。

化粧坂から海沿いに西に進めば大磯港に行き当たる。釣り人に人気の港だが、釣りに興味がないどころか、生きた魚を素手で触りまくるレジャーなんて頭がどうかしてるとしか思えないタカハシには何の用もない。ちらっと見物しようと港に乗り入れたところで、フューエルメーターの目盛りは残り2つに。トリップメーターは80.2kmをさしていた。

東海道/ヤマハ/シグナスX/ガス欠/大磯港/AFOライダー/タカハシ
魚介の磯くささにまじり、ニューヨークのダウンタウンを思わせるスパイシーな香り漂う大磯港共同漁具倉庫。(←とかいうテキトーな説明は真に受けないように)

東海道の難所、それは箱根

大磯あたりの国道1号は、だいたいいつも渋滞がひどい。やたらストップ&ゴーを繰り返すはめになるが、クラッチもシフトペダルもないスクーターなら楽ちんだ。おかげでたいした苦労もなく小田原を抜け、箱根の上り坂に取りついた。上り始めてしばらくすると、トリップ113.9km地点でフューエルメーターの目盛りは最後の1個になった。

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トルクフルなエンジンを利して箱根の山坂道をガンガン走るシグナスX。
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ワインディングは芦ノ湖畔へと続く。
東海道/ヤマハ/シグナスX/ガス欠
箱根の上りでフューエルメーターはラスイチに。

長いくねくね坂を上りきれば、そこは芦ノ湖、箱根の心臓部だ。箱根神社の鳥居が青空に映え、観光客のクルマが詰めかけている。好天に誘われ、バイク乗りも集まっていた。

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映えスポットなのか、パワースポットなのか、その両方なのか、湖畔の鳥居には参詣客が列をなしていた。
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芦ノ湖畔を彩る箱根神社の第二鳥居。碧空と朱のコントラストが美しい。
東海道/ヤマハ/シグナスX/ガス欠/芦ノ湖
芦ノ湖は晴天微風、摂氏20度。願ってもないツーリング日和だ。

芦ノ湖の駐車場にシグナスXをとめて小休止。隣の大型バイクからシブめの熟年ライダーが降りてきてシグナスXのナンバーに目をとめ、「あんた、わざわざこんなモンで東京から来たのか?」と驚いていた。

東海道/ヤマハ/シグナスX/ガス欠/芦ノ湖/遊覧船
芦ノ湖名物の遊覧船。ピカピカ晴れた日には幽霊船っぽさが薄れてあまり怖くない。

箱根を発つころには正午をだいぶ回っていた。日没前にとっととガソリンを減らしきろうと、先を急いで昼メシ抜きで走ってるもんだから、けっこう腹もすいている。
それでも箱根から三島市へのダウンヒルは爽快そのもの、スカッとヌケのいい絶景ワインディングだ。

東海道/ヤマハ/シグナスX/ガス欠/箱根
対向車線に現れたドイツ製高級乗用車が飛ばす国道1号。痛快そのもののワインディングが続く。

調子よくぶんぶん走っていたところ、だいたい三島スカイウォークあたり、トリップ137.0km地点でフューエルメーターの最後の一目盛りの点滅を確認。いよいよガス欠ウォーニングが始まった。

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フューエルメーターのラストワンが点滅を始めたのは、富士を見晴らす道端だった。
東海道/ヤマハ/シグナスX/ガス欠
トリップメーターは137.0km、シグナスXのガス欠チャレンジは、ついに最終章へ

国道1号は、箱根を下りて沼津市内へ。シグナスXはフューエルメーターの目盛りをピコピコさせながら落日を追って西へと力走、富士市内に突入した。

東海道/ヤマハ/シグナスX/ガス欠/黄瀬川
国道1号は黄瀬川を渡って三島市から沼津市へ。
東海道/ヤマハ/シグナスX/ガス欠/県道380号
沼津バイパスを嫌い、千本街道こと静岡県道380号線で海岸沿いを西へ急ぐ。

千本松原の名で親しまれる広大な防風林を横目に海岸沿いを走るうち、さらりと眺望が開け、田子の浦港が近づいてきた。田子の浦橋を渡り、夕暮れ迫る港内へと進んだそのときだった。

東海道/ヤマハ/シグナスX/ガス欠/田子の浦
日没をむかえた田子の浦港へ走り込む。

ゴアッ、ゴアッとこすれるような音をたててエンジンが息継ぎをはじめた。その直後、距離にしてほんの200mほどで、シグナスXはあっけなくガス欠停止。ガタガタ振動するような反応をみせることもなく、すとんときれいに止まるジェントルなガス欠ぶりだった。

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シグナスXのガス欠旅はここであっけなく終了。せっかくなので和歌を一首。「田子の浦ゆ うち出でてみれば真白にそ 富士の高嶺に雪は降りける」(←もちろん盗作)
東海道/ヤマハ/シグナスX/ガス欠
ガス欠地点は日本橋から187.5km。全行程の燃費率は28.8km/lだった。
東海道/ヤマハ/シグナスX/ガス欠/田子の浦
田子の浦港に夜が迫る。

ガス欠時刻は17時半、田子の浦港は刻一刻と暮色に包まれてゆく。近くの店はもうほとんど閉まっている。編集者・モジャ山田ヒゲ男くんの「ガス欠地点の名物なら食べていい」というせっかくの許可が無駄になるのはどうにも悔しい。

でもまあ、うまいものなんて明日食えばいいだろう。

近場のガソリンスタンドで燃料をつぎ足し、手近な安宿に転がり込むと、空っぽの胃にコンビニ飯を詰め込み、泥のように眠り込んだ。

田子の浦に美食を探す

東海道/ヤマハ/シグナスX/ガス欠
ガス欠翌日、給油をすませたシグナスX。名物をむさぼるため再び田子の浦へ。

翌朝はわずかに小雨がパラついたが、すでにガス欠の義務を果たしているから多少の雨は気にならない。さっさと田子の浦港で名物を食い散らかして東京に帰ることにしよう。

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小さなしらすを獲るための漁船はやはり小さい。しらすがどこに群れているかは知らないが、漁船なら漁港に群れている。
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農林水産大臣お墨付きのオフィシャル名物、田子の浦しらすのGIマークを高々と掲げた漁協の建屋。

田子の浦漁協にシグナスXをとめ、食い物を物色。この漁協食堂には、絶品のほまれ高い魚類の丼がいくつかあるらしい。だがあまりの大人気で、すでにズラズラ客が並んでいて待つのが面倒くさくなり、すぐ買えるコロッケで手っ取り早く済ませることにした。

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しらす激推しの漁協には、漁船と観光客がギチギチに詰めかけていた。

田子の浦のコロッケは、普通のコロッケとは一味ちがう。このあたりの2つのご当地ブランド、田子の浦しらすと三島馬鈴薯が合体した驚異のダブルご当地コロッケだ。その名は「たみこちゃん」。田子の浦しらすの「た」、三島馬鈴薯の「み」、コロッケの「こ」から命名されている。

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これが農林水産省GI認定コラボのダブルご当地コロッケ「たみこちゃん」だ!

タカハシは、さっそくたみこちゃんを2つ買ってむさぼり食った。

うまい! めちゃくちゃうまい!

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十数回におよぶリトライにより、いかにもおいしそうな顔を作り込んでたみこちゃんにかぶりついた渾身のセルフタイマー・ショット。
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ふわふわ食感と、てろんてろんの揚げ油、くりくり可愛いシラスの目玉が、なんだかいろいろ印象的な一品だ。

だが、たみこちゃんをひとつ食べ切ったところで、揚げ油がけっこう胃にクルことに気づいた。でも、チョーシこいてすでに2個買っちゃってるから、どうにか食べきるほかはない。

もしあなたが気分よくたみこちゃんを楽しみたいなら、けっして欲をかいてはいけない。
脳まで筋肉でできている22歳以下の体育会系学生なら3つ、40歳以下の働き盛りなら2つ、12歳以下の児童や後期高齢者、虚弱体質のAFOライダーなら1つを限度として、安全・安心なたみこちゃん摂取を心がけ、心ゆくまで田子の浦の美味を楽しんでもらいたい。

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たみこちゃん試食現場となった、ふじのくに田子の浦みなと公園。芝生の広場に遊具、展望台、石碑のほか、帆船型の謎の展示物もある。
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富士が青くかすむ好天の田子の浦。「富士山ドラゴンタワー」の名で親しまれるねじ式展望台もすばらしい。ナントカと煙は高いところが好きだというし、ナントカな読者諸氏にはオススメだ。

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著者プロフィール

AFO RIDER タカハシ 近影

AFO RIDER タカハシ

イラストレーター、カメラマン、ライター、ムービークリエイターなど、世間をあざむく幾つもの顔をもつが…