350万円超の高級ネイキッド、MVアグスタ・ブルターレ1000RS|208馬力エンジンは意外と街でも穏やかに走ってくれた!

ブルターレはMVアグスタを代表するネイキッドスポーツブランドです。800㏄の3気筒モデルと1000㏄4気筒モデルがラインナップされていますが、今回試乗したのは1000RSというモデル。上位モデルの1000RRの高い機能を継承しつつ、公道モデルとしてより扱いやすくしてあるのが特徴です。というわけで、市街地を中心に走ってみました。

REPORT●栗栖国安(KURISU Kuniyasu)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

MV AGUSTA・BRUTALE 1000 RS……3,575,000円(消費税込み)

好戦的なフォルムながら常用域で優しい乗り味を実現

「これがネイキッド?」と思わず尻込みしそうになるほどブルターレ1000RSのスタイリングはアグレッシブです。カウルを装備していないのでたしかにネイキッドモデルには違いないのですが、凝縮感があってどこかロボット的なフォルムは近寄りがたい雰囲気があります。
 意を決して跨ってみると、シート高は845㎜とちょっと高めながら、サスペンションがふわりと沈み込み、両足を地面に着けてくれます。おそらく170㎝程度の身長があれば両足のつま先を着けることができると思います。タンクがせり上がったような形状をしているためハンドル位置が低く見えますが、実際にはこのパイプハンドルは極端な前傾姿勢を強いることはありませんでした。着座位置に対してハンドルが高い位置にセットされているためです。結果的にネイキッドスポーツとして標準的なポジションに収まります。ただし、ステップ位置は後方で高めにあるため下半身のポジションはスーパースポーツ的な感覚になります。
 見た目にちょっと重そうなブルターレ1000RSですが、車重は186㎏に抑えられています。このクラスのモデルとしてはかなり軽量な部類で、日本製モデルに比べて20~30㎏は軽くなっています。これはすごいことです。実際の押し歩きで取り立てて軽く感じるわけじゃありませんし、3,575,000円と高価なこともあって気を遣いますが、走りだした瞬間、軽さを実感します。
ステップ位置は後方にあるため下半身はスポーツライクなポジションになる。だが窮屈さはない
装備されているハンドルはセミアップタイプのパイプハンドル。位置的にも低すぎる感じはなく、結果として前傾ポジションとはならない
シート高は845㎜とやや高めの設定だが、実際に跨った状態では前後サスペンションが程よく沈み込むので、想像するより足つき性は悪くない。ちなみに178㎝の僕だと両足がしっかり路面をとらえる
 エンジンを始動すると後方に跳ね上げられた4本マフラーから、いかにも力が漲っているといったサウンドを轟かせます。好戦的なスタイリングに実によくマッチしていると感じました。基となるエンジンは、998㏄の水冷DOHC16バルブ直列4気筒で、最高出力はなんと208馬力を叩き出すハイスペックパワーユニットです。しかも発生回転は13000rpmという高回転型で、これはもうレーシングマシン並みです。さらにチタンコンロッドを採用するなど造りに妥協はなく、4モードのエンジンモード、8段階のトラクションコントロール、クイックシフターなど先進の電子制御システムを導入しています。
 これだけの高性能エンジンのパフォーマンスを体感するにはサーキットに持ち込むしかないと思いますが、性能をフルに引き出さなくても走りの良さを実感できるのがブルターレ1000RSの特徴のひとつなのです。
 市街地ではせいぜい3速までしか使えません。しかし意地悪く6速まで上げて制限速度で走行しても、ストールしそうになったりはしませんでした。4気筒ということもあるでしょうけど、低回転でもトルクがしっかり発生する特性になっているようです。ちなみに最大トルクの発生回転は11000rpmです。
 それこそ3000rpm以下の低速走行を強いたのですが、エンジンが駄々をこねることはなくスムーズかつ力強くレスポンスしてくれたのにはちょっと驚きました。アクセルを一気に開ければ怒涛の加速を見せるのはまちがいないのでしょうが、いわゆる市街地での常用域でも不満を漏らすことなく追従してくれるのです。だから想像していたよりはるかに、というより想定外の扱いやすさに驚きました。
 穏やかさを併せ持つエンジンを常用域で扱いやすくしてくれているもうひとつの要因が、ソフトな作動性を見せるサスペンションです。ブルターレ1000RSに装備されているサスペンションは、フロントがマルゾッキ製Φ50㎜倒立フォーク、リアが片持ちスイングアームにザックス製モノショックという組み合わせです。もちろん減衰調整機構付きで走る状況に応じて調整できます。サスペンションそのものは高性能なものが採用されていますが、基本的な設定はストリートで最適な吸収性を発揮するようになっています。軽量で素直なハンドリングに貢献してくれている鋼管製トレリスフレームとのマッチングは、ブルターレ1000RSの軽快な操縦性に現れていると感じました。
 ブレーキもブレンボ製のハイスペックなディスクブレーキを装備していますが、コントロール性がいいので低速での扱いも自然にできます。今回は試すことができませんでしたが、おそらくサーキット走行など高速時でのハードブレーキングにも要求通りの性能を発揮してくれるはずです。
 ストリートモデルとしては最高峰のハイスペックを持つハイパーネイキッドであることはまちがいありません。しかしそのスペックは単に数値上のものだけじゃなく、ライダーに優しい乗り味としても反映されているのが印象的でした。でもまあ、高速サーキットでアクセルを全開にしてみたかったというのも本音ですけどね。

ディテール解説

個性的な形状のヘッドライトがMVアグスタ・ブルターレらしさをアピール。ランプはLEDを採用している
ユニークなデザインのセパレートタイプシート。滑りにくい表皮素材を使用していて、クッション性もまずまず。タンデムには向かないが、良好な座り心地はツーリングにも適している
フロントブレーキは、ブレンボ製4ピストンラジアルマウントキャリパー装備のø320㎜フローティングダブルディスク
マルゾッキ製ø50㎜倒立フォークを装備
片持ち式のアルミスイングアームを採用
カウルレスのスッキリしたデザインが印象的なテール周り。テールランプの形状も独特だ
リアシート下にはとくに収納スペースはない。ETC車載器の設置場所にはちょっと悩みそうだ
リアブレーキには、ブレンボ製2ピストンキャリパー装備のø220㎜シングルディスクを採用
フロントフォークには減衰力調整機構が装備されていて、走行状況に合わせて細かなセッティングが可能だ
リアサスにはザックス製フルアジャスタブルのモノショックが装備
メーターは非常に見やすいデジタルディスプレイが装備。多彩な表示機能を有していて、エンジンモードやトラクションコントロールなどに切り替え表示もする
各スイッチの操作性は良好。配置も一般的なので使いやすい
各種モード切り替えなどの操作もすべて手元スイッチで行う

主要諸元

エンジン形式:4ストローク 4シリンダー 16バルブ “DOHC”
総排気量:998cc
圧縮比:13.4:1
ボア×ストローク:79.0mm×50.9mm
最高出力:153.0kW(208hp)/13,000rpm
最大トルク:116.5Nm(11.9kgm)/11,000rpm
エンジンマネージメント:MVICS2.1イグニッションシステム(MOTOR & VEHICLE INTEGRATED CONTROL SYSTEM)4モード(ノーマル・スポーツ・レイン・カスタム)、8段階調節トラクションコントロールシステム、EAS3.0(クイックシフター アップ・ダウン)
ギヤ:6速
クラッチ:湿式多板クラッチ
全長×全幅:2,080mm×805mm
ホイールベース:1,415mm
シート高:845mm
タンク容量:16L
車両重量(乾燥重量):186kg
フレーム:スチールパイプ トレリスフレーム
スイングアーム:アルミニウム シングルサイドスイングアーム
フロントサスペンション:MARZOCCHI ø50mm 倒立フォーク
リヤサスペンション:SACHS プログレッシブ シングルショック
フロントブレーキキャリパー:Brembo 4ピストン ラジアルマウントキャリパー
フロントブレーキディスク:ø320mm フローティング ダブルディスク
リヤブレーキキャリパー:Brembo 2ピストンキャリパー
リヤブレーキディスク:ø220mm シングルディスク
フロントホイール・タイヤ:アルミニウム鋳造ホイール 3.50″×17″ 120/70-ZR17 M/C (58W)
リヤホイール・タイヤ:アルミニウム鋳造ホイール 6.00″×17″ 200/55-ZR17 (78W)
グラフィック:アゴレッド/マットメタリックダークグレイ、マグナムシルバー/マットメタリックダークグレイ

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著者プロフィール

栗栖国安 近影

栗栖国安

TV局や新聞社のプレスライダー、メーカー広告のモデルライダー経験を持つバイクジャーナリスト。およそ40…