スーパースポーツ好きがクルーザーに乗りたくなったときのモトグッツィV9ローマーという選択肢【試乗:MOTO GUZZI V9 ROAMER】

ハーレーダビッドソンに代表され、アメリカンとも呼ばれることの多い「クルーザー」というカテゴリー。屹立したハンドルと低いシート、そして足を前へ投げ出すようなライディングポジションが生み出すワイルドな佇まいには、バイク乗りなら誰もが憧れを抱いたことがあるに違いない。だが乗ってみると、いわゆるスポーツバイクとのあまりの違いに戸惑いを覚える人も多いわけで……。

REPORT/PHOTO●小泉建治(KOIZUMI Kenji)

※2019年12月11日に掲載した記事を再編集したものです。
価格や諸元、カラーバリエーションが現在とは異なる場合があります。
モトグッツィV9ローマー

カリカリのスポーツバイク派にこそ味わっていただきたい

 ともあれV9ローマーの白眉は、モトグッツィ伝統の縦置きVツインであることは間違いない。

 走り出しは腹に響くような鼓動を伴う。そして3速もしくは4速で40〜80km/hで流しているときのビート感が心地好く、それ以上飛ばそうという気にならない。一定の速度で走り続けてもまったく飽きない。

 だが、試しにそこからさらにアクセルを開けたり、ギヤを一段落としてみると、さらなる魅力に気づく。パンチの効いた鼓動が回転の上昇とともに見事に収束し、みずみずしく高回転まで吹け上がるのだ。

モトグッツィV9ローマー
低回転域では鼓動感が強く、それでいて高回転域まで伸びやかに回るのは90度Vツインならでは。
モトグッツィV9ローマー
エキゾーストは左右の各バンクから一本ずつ伸び、途中で集合されることなく左右2本出しとなる。ビートの効いたサウンドが楽しめる。

 たとえばV角45度のハーレーダビッドソンの場合、ダダッ、ダダッ、という鼓動感が強く、低い回転域を保って早めのシフトアップをしたくなるが、一次振動を抑えられるV角90度のモトグッツィはドコドコドコドコと鼓動のテンポが速く、上まで回してもストレスがない。そして排気量の近いハーレーダビッドソンのスポーツスター883系よりも中間加速が力強く感じられたのは意外だった。

 もちろん水冷DOHCの90度Vツインのように天井知らずに回るはずもない。なにしろモトグッツィは昔ながらの空冷OHVを守り続けているのだ。だからライダーを急き立てることもない。

 豊かな鼓動感が味わえるのに気持ちよく上まで回すことも許容し、かといって回せ回せと急かされるわけでもないモトグッツイ製Vツインに「ちょうど良さ」を感じる人は少なくないはずだ。

モトグッツィV9ローマー
フロントブレーキにはブレンボ製キャリパーが奢られる。ディスク径はフロントが320mm、リヤが260mm。

 前述のライディングポジションも相まって、カリカリのスポーツモデルを所有するライダーでも違和感やストレスを覚えることなく存分にクルーザーらしさを味わうことができる。V9ローマーはそんなバイクだ。

 だからスーパースポーツやストリートファイターに乗り慣れたライダーがクルーザーの世界に飛び込むとき、このバイクは有力な選択肢になり得るだろう。

 ワイルドながら、どこか繊細さも持ち合わせている。そんなマカロニウエスタンの魅力を、スポーツ派のライダーにこそ味わっていただきたい。

モトグッツィV9ローマー

主要諸元

モトグッツィV9ローマー
全長×全幅×全高:2240×865×1165mm
ホイールベース:1465mm
シート高:785mm
車両重量:199kg
エンジン形式:空冷4ストロークV型2気筒OHV 2バルブ
総排気量:853cc
内径×行程:84.0mm × 77.0mm
最高出力:55hp/6250rpm
最大トルク:62Nm/3000rpm
燃料タンク容量:15L
クラッチ形式:乾式単板
トランスミッション:常時噛合式6段リターン
フレーム形式:ダブルクレードル
タイヤサイズ:Ⓕ100/90R19Ⓡ150/80R16
車両価格:127万1111円

ライター紹介

モトグッツィV9ローマー
小泉 健治

小泉 健治

小学2年生の頃から自動車専門誌を読み始め、4年生からは近所の書店にカー アンド ドライバーを毎号取り置きしてもらうようになる。高校と大学ではアメリカンフットボールに打ち込むも、高校3年時の秋の大会終了から大学入学までの4ヵ月ほどの間に猛烈アルバイト→二輪と四輪の免許取得→ヤマハSR400購入を果たす(大学入試のことはよく覚えていない)。
 大学入学後はアメフトの練習と夜勤アルバイトを見事に両立させて早々にシトロエンAXを購入(授業のことはよく覚えていない)。
 以来、フィアット124スパイダー、ロータス エスプリ、ランチア テーマ、キャデラック エルドラドなど、振れ幅の大きいカーライフを満喫してきた。
 また長距離ドライブも大好きで、大学時代のアメリカ一周ドライブを皮切りに、西欧、東欧、旧ソ連諸国、アフリカ、中央アジア、東南アジア、中国、オセアニアなど、これまでに約50ヵ国と47都道府県を走破。古い街並みと酷道険道をこよなく愛する。
 現在の愛車はルノー カングー、カワサキZX-6R、ホンダCB1100RS、スズキ カタナ、スズキSV650X。現ニューモデル速報インポート編集長。

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著者プロフィール

小泉 建治 近影

小泉 建治

 小学2年生の頃から自動車専門誌を読み始め、4年生からは近所の書店にカー アンド ドライバーを毎号取り…