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SYM NH T 125……363,000円
ワイドレシオゆえのネガはあるが、エンジンの基本性能は十分以上
世界80か国以上に二輪車を輸出している台湾のSYM。コストパフォーマンスに優れたスクーターが世界中で人気を集めているが、同社では有段ミッション車もラインナップしており、今年からモータリスト合同会社を通じて日本へも輸入されている。今回試乗したNHシリーズは、アドベンチャーモデルの「T」とネイキッドの「X」があり、それぞれに124.1cc空冷シングル5速の「125」と、183cc水冷シングル6速の「200」を用意する。
NH T 125/200は、フロント19インチ&リヤ17インチのワイヤースポークホイールにCST製のセミブロックパターンタイヤを履いているのが特徴で、ヤマハ・セロー250よりホイールベースが45mmも長い。ゆえに、今回試乗したNH T 125ですら原付二種とは思えないほどボディは大柄だ。なお、車重は150±6kgを公称しており、これはCT125・ハンターカブを30kgほど上回ることから、取り回しはそれなりに重いことをお伝えしておきたい。
まずはエンジンから。搭載されているのは124.1ccの空冷SOHC2バルブ単気筒で、最高出力は10.9psを公称する。極低回転域でのトルクが薄いのか、はたまた個体差による燃調不良かは分からないが、発進時はややていねいにクラッチをつながないとエンストしやすいものの、その後の加速感は10psオーバーを実感させるほどの力強いものだ。トップ5速、60km/hでの回転数は約5,000rpmで、郊外を流していると心地良い鼓動感が楽しめる。一方、急勾配の続くつづら折りではワイドレシオゆえのネガが露呈。15%を超えるような上り坂では、1速で40km/h(約10,000rpm)近くまで引っ張っても2速に入れた途端に失速してしまう。
とはいえ、それ以外のシチュエーションでは特に不満はなく、微振動やメカノイズも不快に感じない程度には抑えられている。タンデムやフル積載でのツーリングがメインなら上位モデルの200を選ぶという手段もあるわけで、原付二種としては十分以上のエンジン性能と言えるだろう。
クラスを超えた大らかなハンドリング、オフの走破性も期待以上だ
ハンドリングは、微速域から安定性が高く、ゆったりとした舵角の付き方はフロント21インチ&リヤ18インチのセロー250よりも穏やかなものだ。これはホイール径だけでなくホイール自体の重量にも起因しているようで、原付二種ならではのクイックさは希薄なものの、身を預けられるという安心感はこのクラスで群を抜いている。
サスペンションはフロントに正立式テレスコピックフォーク、リヤにリンクレスのモノショックを採用する。車両価格なりの安っぽい動きかと思いきや、初期の作動性は意外と悪くはなく、よって巡航時の乗り心地は良好だ。スクリーンがコンパクトなので上半身の防風効果はそれなりだが、下半身は張り出したシュラウドによって適度に走行風が減じられている。
ほんの少しだが林道も走ってみた。標準装着タイヤのブロックが低いので未舗装路でのグリップ力は決して高くはないが、低回転域でのトルクがあまり厚くないエンジン特性もあってリヤタイヤが空転しづらく、気が付けば林道走行を楽しんでいた。前後のディスクブレーキは強力ではないもののコントロールしやすく、ABSの作動も特に不満はない。
燃料タンクが11Lと大容量で、しかも実用的なリヤキャリアを標準装備していることから、ツアラーとしての資質が非常に高いNH T 125。さらに灯火類はオールLEDで、メーターにはギヤポジションインジケーターや時計まで備えていることを考えると、コストパフォーマンスは圧倒的に高いと言えよう。